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2010.01.30

1/30 子ども省構想に思うこと

新しい政治勢力となる側の子ども政策は、しばしば思いつきに動かされる。その1つが子ども省の創設である。

本当に機能すればそれはそれでよい省庁になるが、それを作るメリットとデメリットを考えると、本当にそうかと思うことが多い。子ども政策の縦割りの弊害が大きいという意味は私にはよく分からず、保育所や学童保育の整備が遅々として進まないことと、幼稚園と保育所の壁ぐらいの問題ではないかと思う。それは縦割り行政の弊害より、予算不足の問題でしかないように思う。

現在、子ども政策を実務で担当しているのが文部科学省と厚生労働省だが、やっぱり役割が違うし、実際に子どもにたいする当たり方もずいぶん違うと感じる。

文部科学省は、国家として子どもに求めるべき教育を担当している。したがって、供給する側の論理、現実無視の行政が行われがちである。困難な家庭によりそい支援するという発想はない。自己責任の論理である。現場でもそれは貫かれ、文部科学省の政策について議論のされ方も、左右ともに極めてイデオロギー的で、その立場は双方とも、文部科学省の政策を通じて子どもに何かを押しつける発想しかない。人権侵害などが平気で行われ、それに対してなんの疑問もない。異論を言えば「モンスターなにがし」と言われる。教育機関が子どもやその家庭を支配的に扱っても当たり前とされる。

厚生労働省は、社会政策としての子ども家庭支援を行っている。結果がともなっているかはともかく、その視点は、困難な家庭や、そこにある子どもの支援となる。したがってさまざまな社会問題と向き合い、現実的な解決策を模索してきた。

当然、子どもの人権というものに対するとらえ方が全然違う。

この2省が子ども政策の部分について統合されたときに、果たしてどちらのやり方が優勢に立つのだろうかか。うまい調和なんかありえるのだろうか。それを誘導するのは政治だが、政治の側に子どもに対する想像力が著しく欠落しているというのは、自民党政権、民主党を中心とした政権、どちらも迷走気味であったことからよくわかる。

子ども政策で文部科学省がメジャーで、厚生労働省がマイノリティーであったがために、厚生労働省に子どもの側に立って考えるバランスが働いているように思うが、子どもを管轄する省庁が一元化するということは、子どもに対する接し方は一元化され、多様な価値観でバランスを取っていくということが行われるのではないか。
少なくとも、子どもなんかに人権はいらない、子どもに人権を与えれば窓ガラスが割られたり大麻パーティーが開かれるだけだ、という感覚の強いこの国で、子ども省ができたときに、今の文部科学省のようなスタンスになるのか、今の厚生労働省のようなスタンスになるとは思いにくい。
ゆとり教育の推進のときの議論と撤退のときの議論の荒っぽさ、教育基本法改正のときの荒っぽい論立てを見てきたところから考えると、子ども省の創設は、子どもと権力の関係についてあまり楽観的に思っていない。

●保育関係者に話題になった週刊ダイヤモンドの記事に、それをヨイショする学習院大学の鈴木亘教授のブログと、批判している私のブログを比較して、私が社民党支持だからと鈴木亘氏に軍配を上げている人のブログを見つけた。
私は社民主義者だが、社民党支持ではない、ということを明言したい。社会政策に関心のある社民主義者にとって今の社民党は極めて不満足な存在である。ブースカ不満たらたら民主党を応援するというのが私のもっとも近い政治スタンスではないか。

そういう私の立場の弁明はもとより「社民党支持だから」というレッテルの貼り方がまたいただけない。保育については、どこの党の支持であっても、政策の具体的な実現性が何より大事である。

週刊ダイヤモンドや鈴木亘氏は、さしたる財源の裏付けもなく、保育所の整備に具体的な方策もないまま、保育切符制を導入すれば市場メカニズムが働いて保育のニーズは満たされると言っている。その論理の演出に、都内の保育士(7年前調査)の賃金は高すぎる、抵抗勢力がいると面白おかしく書いているに過ぎない。

私は、どんな保育の金の流れ方にしても、待機児童問題を解決する思い切った施設整備を公的にしていかない限り、問題は解決しない。供給不足のところに全面的な市場メカニズムを入れれば、当然市場原理から供給(保育事業者)側の都合による入所者の選別はひどくなる。施設整備と、保育労働者の確保、つまり予算が必要ということになる。そこを避けて通って鈴木教授の論を採用しても、待機児童がいないことにするような制度にしない限り数は変わらない。待機児童問題は今とは違う人にしわ寄せされるだけである。

そういうことを考えられずに軍配を上げるというのは利用者として乱暴な思考回路であるが、慶大の権丈先生が先日わが社でお話いただいたときの話のように、それが世論の限界ということかも知れない。

●政権与党が、25万人の保育所定員増を打ち上げ、歓迎したい。次は質の確保が課題。大都市部に限って、ある程度質について当面は目をつぶっても、徐々に今の質にまで引き上げていく仕組みが必要。あと予算確保。広く薄く集めるためには、増税が必要なのではないか。

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