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2010.01.02

1/2 新政権の成長戦略

新政権の成長戦略が発表される。

この間の財務相主導、実働部隊行政刷新会議の予算編成に見られたようなケチケチ路線から、どういう社会にしたいというところに問題意識をおいた衆院選マニフェストに近いところに戻った内容になったと思う。そのことについては評価したい。

ただ一方でやはりという不明な点や問題点が指摘できる。また評価点もある。

【1.経済成長・環境・財政の三題噺】
自民党が言うように経済成長2%にそもそも裏付けがないという、最初から水をかける議論もあるし、そうした問いかけは大事だが、質の高い経済成長をするんだ、ということを優先度の高い目標として位置づけたことは評価したい。
経済成長、環境社会の実現、財政規律の矛盾する三題噺について、裏付けのある乗り越えが見えないところが課題となるだろう。
経済成長を追おうとすれば、目先の環境と財政に一定の犠牲が求められる。目先の環境改善にとらわれれば経済活動の規制と財政悪化が避けられない。財政規律を求めると経済の二番底と環境政策の推進に制約がかからざるを得ない。
経済成長と環境について、長期的な環境のための投資をするんだ、公共交通産業分野の成長を促すんだ、と整理しているのでまだ親和性がある。また環境規制が日本の自動車産業を育てた実績もあるので、何とか折り合いがつくかもわからないが、問題はさきの予算編成で見られたように、財政規律と経済成長のどちらをまずは優先するのか、ということと、経済が伸びたときに財政規律をどう取り戻すのか、ということを整理しなくてはならないのではないか。

【2.基礎的福祉サービスの整備の責任】
公共サービスについて新しい公共の育成なんだというネタが5~10年ぐらい古い。出番や居場所を作ろうというのは正解だが、それは福祉の基礎サービスではなく、基礎サービスの上に立つ質の高い社会のために必要なことである。現段階の福祉の問題は基礎的サービスすら満足にないということである。
基礎的な介護や保育に意欲的なNPOや株式会社が参入するのはおおいに結構だし、そういうことは利用者保護の観点を除き邪魔すべきではないと思うが、保育分野や施設系介護ではもはやそんな主体性論だけでは整備が追いつかないということを率直に認め、官が供給整備を行う責任を明確にすべきではないか。
小泉構造改革の少し前から使われ続けた「NPOや株式会社の福祉分野への積極的な参入」という言葉が、サービスを利用できない市民による、自治体に対しての異議申し立てに、自治体が言い逃れできる無責任体質を作っている。もう専業主婦たちや元気な退職者による福祉分野のサービス提供の起業は出尽くしているのではないか。永続的でも過渡的でも、官と呼ばれる分野が供給体制を整備せざるを得ない段階に来ているのではないか。
介護については、介護労働者の待遇改善を明確に打ち出していないところが不満だが、書いてある介護、医療の連携による整備を推進していけば、当然、医療と介護の従事者間の著しい賃金格差が問題にならざるを得ない。このなかで介護従事者の待遇の底上げを検討されるべきこととなろう。

【3.ハコモノではない大都市問題】
大都市の問題がインフラの問題しか語られていない。大都市が破局的なのは、福祉を中心とする社会サービスがあまりにもひどい状況だからだ。
地方に行くと、小額の投資である程度の福祉ニーズがカバーできるし、地代も賃金も安いから、介護をはじめとする今どきの福祉サービスの提供体制を作るのは、行政のやる気があればできてくる。住民互助型の先進福祉自治体が大都市部に少ないのも偶然ではない。
大都市は、対象人口の数も多く、地代も賃金も高く、人間関係が希薄なため、民間任せの福祉サービスがなかなか満たされない。国とは言わないが、政府による福祉サービス、貧困や失業問題への対応、階層的な教育サービスの格差など取り上げないといけないのではないかと思う。

【4.評価できる雇用政策】
雇用が内需拡大と成長を支えるという目標は評価する。意図した結果かどうか評価は分かれるにしても、労働者を痛めつけても企業が元気になりさえすれば経済は再生するというのが小泉構造改革の結果だったと思うが、企業が内部留保を大量に蓄えながら、政府も国民も瀕死の状態におかれている。
働けない人はどうするんだという例外問題はさておき、良質な生活は、良質な雇用が基本である。そのためには良質な雇用をどれだけ拡大できるかが内需拡大と成長のカギと問題意識を設定していることは正解である。
ただし、竹中平蔵の開き直りみたいに、生活できもしない賃金の雇用が増えたことを自慢されるようになっては困るなと読み進めたら、その後のところで「ディーセントワーク(人間らしい働きがいのある仕事)の実現」が言及されていて、、「「同一価値労働同一賃金」に向けた均等・均衡待遇の推進、給付付き税額控除の検討、最低賃金の引上げ、ワーク・ライフ・バランスの実現(年次有給休暇の取得促進、労働時間短縮、育児休業等の取得促進)に取り組む。」というメニューが並んでいることは(給付付き税額控除以外は)評価したい。

【5.その他政策分野の評価点・課題】
教育についてはシンプルで良い。本人がどれだけ力をつけられるか、その観点に絞られている。安倍政権のときのような変な思想、思想改造みたいな話が入っていないことは評価したい。供給者の思いが自己目的化し肥大化する道徳教育や生徒指導の強化はそろそろやめ。
地域定住圏、森林林業の再生、食の将来ビジョン、中古住宅の流通市場の整備なども良いだろう。
住宅投資の活性化は環境問題に逆行するんじゃないかと思ったりする。人口増に対して住宅を作りすぎなんじゃないか。観光立国という発想はどうか。旅行業界が儲かるのは結構だが、観光ばっかりしている国というのもどうかと思うし、由布院の成功を見ると、豊かな生活があって観光がついてくる、という考え方を徹底しているように思う(観光が儲かるとなると、その順番を逆に考える業者が進出してきて困っているという問題もあるようだが)。
アジアとの経済の一体化ということは慎重に考えるべきではないか。賃金格差をどうするのかという戦略(労働運動の輸出)や、日本と中国の経済の主導権争いが起きたときにどうするのか、ということを考えておかないと民族主義が台頭する危険を感じている。

【6.必要な増税・財政規律】
最後に財政規律の問題だろう。単に財政規律を守ればいいということではなく、不況のどん底の今はどういう運営をし、回復したらどういう運営をし、どういう財源に充当する分について(目的税ではなく)どのタイミングで増税をし、ということを明確にすべきではないか。
21世紀に入ってから、財政規律の御旗のもとに、取りうる政策がリストラできた政策の見合いぐらいしかできなかった。増税忌避論があるが、増税で得た収入を、社会サービスで国民に返せば、国民と政府の関係ではゼロであり、再配分の問題でしかない。リストラばっかりではないより積極的なことができる社会を作ろうとすれば、ある程度の増税は不可避だ。
増税を国民に返す政策を採れば、当然厚生労働省と文部科学省の予算が膨らまざるを得ないが、そのことに対するコンセンサスが必要だ。今回の民主党の予算も「肥大化する厚生労働省予算」などと批判している自称「社会保障分野に強い」経済学者もいて、情けなくなる。逆に考えたらわかりやすい。国土交通省、経済産業省、環境省はじめ他の官庁にバランスよくお金を配分したら、ハコモノ行政を増やせ、企業に補助金をバラまけと言っているに等しい。
また好況時の財政規律をどう守るか、というビジョンが必要。不況のときに財政規律ばかり言われて自殺者や失業者が激増するようなことをやって、好況になるとそこで作った借金を返す話をせずに、解き放たれた我慢が爆発するように予算が膨らみさらに景気を過熱させるようなことを繰り返すべきではない。好況期に官発の思いつき、「あったらいいな」アイディアのバラマキをやっているから、財政がどんどん悪化していく。

そんなことを読んで考えた。

●産業政策や、環境問題について専門的に勉強する機会も継続的にウォッチしてこなかったので、他の部分についての評価ができないことあしからずご容赦ください。

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