12/5 議会改革は議会が市民参加で進めるべきこと~名古屋の新条例を通じて考える~
名古屋市長の河村たかしが提案した「市政改革ナゴヤ基本条例案」が修正されて可決される見込み。
修正に対して河村市長は反発しているらしく、リコール請求をする動きもあるようだが、おかどちがいも甚だしい。
この条例案は、市政の改革と、議会の改革がごった煮になっているものだが、定数や報酬の半減、連続3期を超えた在職の自粛、政務調査費廃止、議員の自由な意思に基づく議会活動の実現(党議拘束の禁止)などの議会の改革は、市長が提案すべきことではない。
とくに、党議拘束の禁止については、一方で有権者は政党名で投票している人も少なからずいる上、地域コミュニティーの希薄化、ビラ配布禁止や二大政党制の定着などで、今後も政党名によって投票する有権者が増えることから、党議拘束の否定は、有権者の投票判断と議会行動が全く異なることを容認する可能性がある(例えば埼玉県議会の民主党の半分ぐらいの議員たちのように、改革を絶叫して八ッ場ダム建設中止を求める世論の票を集めておきながら、議会内では政党の政策を無視して推進活動をしているようなケースは党議拘束が機能しないことの弊害だろう。もっとも彼らは「上田党」の党議拘束に盲従しているだけだが)。また政党活動の自由を否定するもので、憲法の結社の自由にも抵触しかなねない。圧倒的な行政権が権限を持っている中で党議拘束をやらなければ、政党の政策を掲げて審判を受けた選挙の結果を、行政が議員にちらつかせる政策的エサによっていとも簡単に態度変更されることが避けられないだろう。
その他定数などについても議会自身が有権者とともに進めるべきもの。報酬についても、安くすることよりも、議会開会日数を広げて、議会の市民参加を進めるなど、もっと働かせることを考えるべきではないか。
したがって、河村市長が提案したことが変わったからといって、安易にリコール請求を煽ったり、骨抜きだと批判すべきものではない。
とくに、河村たかし個人に入れ込んでいる名古屋大学の後房雄が見苦しい。彼はもともとマルキストではなかったのか。そして、イタリアのオリーブの木、旧左翼民主党の研究者として、もっと多様性のある民主主義を理想としていなかったか。
それが、思想も教養もない河村たかしの言うことに従うものはyes、そうでない者はリコールでも何でもしよう、という、ファシズムの一歩手前みたいなことをしているのが、何だか情けなくて、力の抜けた笑いしか出てこない。
●ただし河村たかしがこの条例を通じて疑義を呈した、首長公選制への疑問はきちんと受け止める必要がある。最終的には各自治体の判断にすべきと思うが、やはり、地方議会の無責任体質(自民党だけじゃなくて、民主党や共産党や市民派議員もそう。)は、地方議員の自分の選挙が首長の資質や責任と無関係に存在するから、議員選挙が市政をどうするということでなくて、町内会や市内の各種団体・市民運動グループ間のいすとりゲームに終始してしまう。その結果、つまらない口利きみたいな仕事しかしなくなっていく。
ヨーロッパは、市長は市議会議員から選ぶ国が多い。余談を言えば、市議会議員選挙でも比例代表制を採用している国も多い。議員が、市内全体に目配りした責任ある政策を訴えるようにするためには、本来はこうした制度が望ましい。
日本はいつもそれに逆行して、党議拘束が無くなれば、無所属がいい、という一般的な議論が出やすい。しかし、少数の多数派に対抗している無所属議員がいた方が議会にとってはいいが、それ以外の多数派のあるいは多数に流れやすい旧来型政治家が、無所属を掲げるのは詐欺に近いことだと思っている。きちんと旗色を鮮明に掲げ、政策に責任を持つ仕組みが必要だ。
●また議会改革は議会の責任といっても、議会が自分たちの都合だけで勝手にやるというものではなくて、市民に対する責任ある議会をどう作るのか、という観点がなければダメ。改革は市民参加のもとで行われ、選挙できちんと審判するに値する情報公開がされているかは最低限に検討されなくてはならない。また、行政が市民参加を進めているのと同程度に、議会への市民の直接参加の道を検討されなくて、ますます議会の権威はなくなっていくだろう。
河村市長提案の条例案、“骨抜き”可決へ
名古屋市議会の民主、自民、公明の3会派は4日、河村たかし市長が11月定例会に提案している「市政改革ナゴヤ基本条例案」の議会改革に関する部分を削除するなどして可決する方針を固めた。
議員定数の半減など、具体的な改革案についてはすべて削除する。事実上の“骨抜き”で、河村市長には再議という手段が残されているが、3会派で定数(75)の3分の2を占めるため、修正案が可決される公算が大きい。河村市長の反発は必至で、議会の解散請求(リコール)を求める支援者グループの動きも加速しそうだ。
同条例案は8条から成るが、3会派が削除、修正するのは、第2条と6条で、いずれも条文の中に「政治ボランティア化」という言葉が使われている。定数や報酬の半減、連続3期を超えた在職の自粛、政務調査費廃止、議員の自由な意思に基づく議会活動の実現(党議拘束の禁止)など、議会改革として掲げられた項目はすべて削除する。
当初、条例案を否決するという意見もあったが、民主のベテラン市議は「議会改革に取り組む姿勢をアピールするために、修正、可決するべきだと判断した」としている。条例案に盛り込まれた市民税減税と地域委員会創設に関する部分は原案通りとなる。
議会側の修正について、河村市長は「議会がお決めになることですから、最終日(9日)を淡々と待つだけ。議会が『王様』で、すべて決めていることが、市民に証明されることになる」と冷ややかに話した。
市長を支持し、議会解散の署名活動に向け準備を進める市民グループ「河村サポーターズ」世話人の後房雄・名古屋大教授は、「市長の改革の理念を否定し、完全に骨抜きにしようとしている。今後の行動は市長と相談して決める」と述べた。
(2009年12月5日09時25分 読売新聞)
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