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2009.11.03

11/3 今度は保育所のコストが高いんだ、と

国の事業仕分けでチームに入ったメンバーが、認可保育所の補助金単価がコスト高だとして真っ先にやり玉に挙げている。
分権による規制緩和にしても、民主党は認可保育所にとても敵意をお持ちのようだ。あるいは若手議員が事業仕分けから追い出された穴を、エコノミストや新自由主義の文化人たちが穴埋めしているらしいので、彼らの主観的な価値観によるものなのだろうか。しかし、それでも事業仕分けの最初の10大標的に選ばれ、無駄削減のかけ声の試金石にされたということで、ジャッジした民主党国会議員の責任は大きい。

保育所の経営分析、コスト分析というものをきちんとやってもらいたい。そういう努力を怠って、感覚的に高い安いを議論していることは、政治の危機としか思えない。掴み金方式の補助金でコストも低い学童保育がどんな状態にあるのか、実際に見てもらいたい。
それも、潤沢な自治体の財政投入で質をかさ上げしている東京都のものではなくて、富裕自治体に隣接しながらその恩恵にあずからない埼玉県や、奈良県などの施設を見に行くべきだろう。東京都のものばかり見ていると、コストが高いと思わされても仕方がないが、国がやっている保育政策は東京都では判断できない。
また、保育所をめぐる利害関係者の絡まり方も特殊で、全国水準(首都圏に限定したとしても)の改革をしていくのに参考にはならない。

保育所運営費は、1人年収400万円余の人件費で必要な保育士数などを積み上げて、定員数で割返して、児童1人当たりの補助金額を決定している。しかもこれは、8時間を超える保育時間について、サービス残業を前提した単価である。
この内容の補助額がコスト高というのなら、いったい保育士たちはいくらで働けということなのだろうか。月150万近くもらっている国会議員に言われたくないように思う。10年前に小泉純一郎や宮内義彦、八代尚宏らが認可保育所に浴びせかけた罵詈雑言と同じロジックを、生活再建などと主張して掌握した政権が言うべきことなのだろうか。

年収1500万を超える国会議員や、講演稼業でそれより年収のあるとりまき文化人たちが、朝から晩まで肉体労働をしている年収400万円の保育士の給料をもらいすぎで、もっと低賃金労働者を使えというなら、そういう国づくりをなさるんですね、という評価でしかない。小泉政権下のように著しくモラルが低下することだろう。介護の場合と言っていることが違いすぎて、民主党のジジ・ババの危機は理解できても、子どもたちがどうなるか、わからないのだろう。

民主党が政権を握ってから、保育所に対して、社会的規制は実質無くす、費用負担はけちられる、そんな仕打ちみたいな話ばかりである。
民主党政権の下で働きながら子どもを育てることはリスクが高すぎると思う。

保育所運営費の地方移管でことが落ちるところが、民主党政権的な落としどころだと思うが、少しは目を覚ましてもらたいたいところだ。

●無認可保育所と認可保育所を比べると、認可保育所が贅沢過ぎるという議論が背景にあるのだろうが、認可保育所の質が保障されているからこそ、無認可保育所はそこをめざして努力をしている。保育所にコスト競争なんかさせたら、人を削るか、人件費単価を削るか、子育てにかかる直接的な経費を削るか、どれかしかない。
人を妬ませて、足を引っ張り合うような醜い社会をめざすのではなく、上に向かって改革するようなことを考えてもらいたいものだ。少しは共働き家庭に、この社会にいてよかったと思わせてくれることしてくれよ。本当に。

●認可保育所を守れ、と言っている人たちの主張を、わざと「彼らは公立保育所を守れと言っている」と議論をすり替えてイメージを張り付ける人がいて困っている。私がこの間、言っているのは、公立・私立共通の保育所に対する規制や財源問題について、切り下げることについてどうなんですか、ということ。公立保育所に限定した問題は、別にある。

事業仕分け「不急」「類似に応用」重視 まず100選定2009年11月3日3時1分朝日

 来年度予算案の無駄を洗い出す行政刷新会議は2日、「事業仕分け」で取り上げる約100事業を固めた。見直し内容を類似事業に広く応用できる事業や、緊急性が乏しい事業を優先的に選定。独立行政法人の事業や政府の途上国援助(ODA)予算、保育所運営費などが対象となる。

 行政刷新会議は、国の約3千事業のうち200事業を対象に仕分け作業を行い、「廃止」「見直し」「地方移管」「存続」などと判定する。

 刷新会議議長を務める鳩山由紀夫首相は、判定を受けて「類似事業に関しては全省庁がすべての予算を見直す」ことなどを指示する予定。財務省は、首相指示を踏まえ来年度予算編成作業を進める。対象事業だけだと削減額は億円単位にとどまるが、類似事業にも見直しを広く応用することで、過去最大の95兆円に膨らんだ概算要求から3兆円以上を削りたい考えだ。

 2日、民主党議員と民間有識者による事業仕分けの三つのワーキンググループ(WG)が、各省庁のヒアリングを開始。仕分けで取り上げる予定の200事業のうち、ほぼ半数を固めた。対象事業を選ぶ基準としたのは、(1)各省間や自治体と重複する事業(2)試験的なモデル事業(3)広報・イベント類(4)IT調達関連(5)独立行政・公益法人の基金(6)特別会計の事業の6項目。

 文部科学省では、日本原子力研究開発機構、理化学研究所など科学技術関連の独立行政法人が行う大型プロジェクトが対象になった。農林水産省では「耕作放棄地再生利用緊急対策」や農村振興の補助金など、民主党が補助金行政の非効率さを批判する対象にしてきた事業も加えた。

 厚生労働省では、保育所運営費負担金が「保育単価が過剰で、引き下げる必要がある」、介護予防事業が「効果が明確でない」などとして対象に。経済産業省分では、発電所がある自治体に支給する「電源立地地域対策交付金」を選んだ。対象に石油石炭火力を含んでいることが「地球温暖化対策との整合性を欠く」とした。

 WGは今週末から現地調査を始め、11~17日の予定で、実際の仕分け作業を一般公開して実施する。17日までに第1弾の100事業の仕分け作業を終え、20日ごろの同会議の第2回会合で「廃止」や「見直し」などの結果を報告する。

     ◇

■「事業仕分け」の対象となる主な事業

・まちづくり交付金(国交省)

・健康増進対策費(厚労省)

・保育所運営費負担金(同)

・電源立地地域対策交付金(経産省)

・国家備蓄石油管理委託費(同)

・ODA予算無償資金協力援助(外務省)

・国際協力機構(JICA)の旅費・人件費(同)

・独立行政法人所管の科学技術関連の大型プロジェクト(文科省)

・自衛隊の広報、募集事業(防衛省)

・耕作放棄地再生利用緊急対策(農水省) 

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コメント

初めてコメントします。
規制緩和から事業仕分けまで一連の保育所関連のエントリーを読み、共感をしておりました。
ついに馬脚を現したか、という思いです。二宮厚美さんがおっしゃっていましたが、民主党の、子ども手当創設の部分を上半身に例えるならば、この一連の動きは下半身になるのでしょうね。早くも、それが正体を現したということなのでしょうか。
あまりに腹立たしいです。

投稿: いわし雲 | 2009.11.03 12:22

本当にその通りです!公立保育園に子どもを通わせる会社員の母です。子育て支援、少子化対策、は???それなのにこの政策ですか?!と民主党には本当にがっかりです。というか、分かっていたことですけど。

アメリカでの保育研究などでは、「質の良い保育こともっとも効率的な保育だ」として、保育士の待遇や保育所の基準等が見直されています。日本は、改悪の方向に行っているようにしか思えません。このまま政策が進められれば、生まれて直ぐに受ける福祉さえ、格差を呼ぶことになります。つまり、「お金があれば、よい環境での保育が受けられる、お金がないなら劣悪な環境での保育で仕方ないでしょう。子ども手当てを26000円上げますからそれでやってください」ってことですよね。子ども手当てより、保育所の拡充、小学校から大学までの無料化等の方が、よっぽど少子化に歯止めがかかると思います。定額給付金だって、「そんなこともあったな」という程度の効果です。本当に気をつけていないと、子どもが育つ環境がどんどん壊されていってしまいます。

投稿: とらまろ | 2009.11.05 11:15

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