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2009.11.22

11/21 保育園:業界団体と労働組合を政治的悪者にしてちゃっかり政治的発言力を作っている師匠はどうなの

最近アクセス数が急増していたので、リンク元をたどる。大口は保育関係。週刊ダイヤモンドの記事をこてんぱんに批判したことが、保育関係者の溜飲を下しているようだ。保育のプロでもないのに、いきがかり上、保育所の政策と財務についてある程度の知識を得てしまった私には、そういう役回りをすることが最適なのだろうと思っている。
保育関係者はどうもどぎつい政策判断について意見を言わないきらいがあって、労働組合と共産党と経営者団体以外は、子どもの最善の利益とか、良い保育とか抽象言語で対立する意見の価値判断を避ける。

●民主党の周囲を跳梁跋扈し、週刊ダイヤモンドの記事ネタを提供したと見られる学習院の鈴木恒氏が自身のブログで悪あがきをしている。鈴木氏と週刊ダイヤモンドはどうしても話を

ダイヤモンドの記事は、こうした利権に関連して、保育業界内では有名であるが政治的に絶対的タブーとなっていた話題(認可保育所の高コストぶり、私立認可保育所の一族経営の状況、その旨味と利権、東京都23区の「正規」保育士の高給ぶり、保育3団体の異常な政治活動と労働組合活動、それに対する厚労省と自治体の弱腰ぶり等)にも踏み込んでおり、やや不正確な記述や、若干の勇み足があるものの、全体として非常に勇気ある内容となっている。ダイヤモンドの記者には大いに敬意を表したい。

待機児童問題を、保育所経営者団体や保育関係労働組合の責任になすりつけてスケープゴートにしようというやり方が見え見えで、下品極まりない。先に言っておくと、小泉構造改革系の連中は、かつて年金改革がデッドロックに乗り上げたときに、メディアを利用し社会保険庁の職員労組をスケープゴートにすることで、年金改革を誤魔化した。しかし結果は年金制度がなにがしか良くなったかね、ということを問いたいところだ。
で話を戻して、上記の引用に対して、
①認可保育所が高コストなのか、東京23区が高コストなのか、学者なんだから正確に決めて言うべきだ。ここでは認可保育所が高コストなどと書いていながら、その後のところでは東京都市部が高コストで他は妥当というようなことを書いている。全く矛盾しているか二重基準で印象操作をしながら議論をしている。東京都市部以外が妥当なら、認可保育所制度そのものをコスト論で攻撃する鈴木氏の態度は的外れと言わざるを得ない。
何度も私は指摘しているが、富裕自治体の東京23区にとって保育所の運営コストがネックなのではなくて、土地や施設の確保と、保育所建設費が各自治体年1ヵ所みたいな予算支出の制限、保育所需要と供給を制御できる土地計画法制がないことが待機児童解消のネックだ。
②私立認可保育園の一族が利権化しているということについて具体的な事実や事例を示すべきだろう。私は社会福祉法人が厳しい会計制度のため、世襲を通じて土地を実効支配しながら免税を受けられることぐらいしかないと思っている。学校法人に比べたらオーナーの自由度などないに等しい。そんなにうまみのある話なら、もっとたくさんの土地持ちが保育所経営を始めているだろう。
③「保育3団体の異常な政治活動と労働組合活動、それに対する厚労省と自治体の弱腰ぶり」というのは過大評価ではないか。保育3団体には日本医師会のような国会代表も送っていなければ、政治資金団体も持っているかどうかですらあやしい。自治体が利用者の入所を決定するため、保育所が利用者に対して集票能力はないだろう。「保育3団体の異常な政治活動ぶり」というのはどういうことなのか挙げてもらいたい。労働組合にしてもそうで、自治体労組の代表は国会にいても、それがそのまま保育所政策を左右するなどと言うことは聞いたことがない。

それより鈴木氏の師匠の八代氏が、オリックスの宮内義彦氏の庇護のもと、盛んに規制改革会議などの政治的審議会を経由して、当事者の利害を無視して福祉政策を変更させていったことは、政治活動ではないのだろうか。21世紀に入ってから、保育3団体や労働組合より、八代師匠の方が好き勝手にやってきた。ベネッセやポピンズコーポレーションなどの新参保育業者とタッグを組んで。
八代師匠がよくやった、業界団体と労働組合が世の中歪めている、みたいな陳腐な勧善懲悪ドラマで視聴率を稼げる時代は終わったんです。違うやり方で、鈴木先生の立派なバウチャー制を普及させる宣伝活動をされるようおすすめしたいところです。

●読み進むと、矛盾だらけです。保育士の賃金が高いから待機児童が発生するなどと言いながら、一方で、保育士の賃金が福祉職給料表の導入で下がっている、などと書いている。

福祉職給料表(の是非について議論があるが、それはさておき、それで保育士の賃金が「妥当な水準」に下がり、さらには非正規労働者の保育士が増えて、公立保育所の運営コストがここ数年で大幅に低下していることは間違いない。コストが高いから待機児童が解決しないという鈴木恒氏の言い方なら、賃金水準の低下で待機児童問題は自動的にその分解消されるはずなのに、むしろ待機児童は増加している。小泉構造改革系の保育談義の待機児童問題の解消策は矛盾したことになっている。

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