11/2 東洋経済、既得権益特集号が面白い・保育所と城繁幸
東洋経済既得権益特集号が面白い。
通俗的な既得権益批判、規制緩和万々歳ではなくて、既得権益を批判して太っている業界(エコをネタに芸能人総動員して役所からお金を引っ張り出している広告代理店とか)まで批判していて面白い。
その中で、「なぜ増えない保育所待機児童対策は適切か」のできがよい。
これまで経済誌の保育所に関する論調は、待機児童問題が大変だ!→保育所はお金がかかりすぎ→それは規制に守られすぎているからだ→もっと競争原理が働けばコストダウンができる→そうすれば保育所は増やせる→だから規制緩和、と論じてきた。そして、そうしたエコノミストの提言が、政府中枢のさまざまな会議や審議会でまことしやかに論議され、社民党の福島みずほまで一部信じこまされ、規制緩和と民営化→資格職の低賃金化→自治体による買いたたき委託→新規参入のストップ→やっぱり保育所は増えずに待機児童問題がさらに悪化する、という悪循環を描いてきた。
保育所の経営分析やコスト分析もしたこともないようなエコノミストがしたり顔で新古典派経済学やミクロ経済学の理屈にこじつけて改革処方を書いてきたからだ。経済原理は採算ぐらいしか考えず保守的体質が強く専門家ばかりの福祉業界に、そうした論調は刺激的な存在で、まともに反論する能力すらないままにいた。政治力をちらつかせる新古典派経済学のエコノミストの改革処方に、業界関係者は面倒くさいから厚生労働省の官僚+保育園を考える親の会を使って反論させてきた、というのが業界の側の問題。厚生労働省も積極的にその役割を買って出ていた。
だから、官僚vs民(といっても経営者)という構図で政治的に攻撃されると、官僚の側がどんなに根拠を持ったことを言っても、かなり厳しい場面に追い込まれる。
話を戻して、今回の東洋経済では、保育所について、初めて規制緩和で本当に待機児童問題が解決できるのか疑問を呈し、やはり質を維持しながら待機児童問題を解決しようとすれば財源確保は避けられない、と結論づけている。
経済誌ではそうした論調は初めてで、スウェーデンなど北欧の例を引くことなく、規制緩和チチンプイ神話、新自由主義チチンプイ神話で保育所や介護の問題は解決しない可能性もあることを初めて認めたことで、高く評価したいと思っている。
欲を言えば、保育所の採算構造や経営分析もまじえた記事になればもっといいなぁと思ったりする。
●同じ雑誌の中で、城繁幸と湯浅誠が対談(というより闘論)をしており、非常に面白い。
城繁幸は労働ビックバンをもっと進めて、すべての労働者がプロ野球選手みたいな労働契約になるべきと言っている。それに対して、そんな不安定なものでいいんですかと湯浅誠は主張して、能力がうまく評価されない人は雇用が守られず福祉の世界に行ってしまいますがいいんですか、と反論。
城はゴリッとしたリアリストみたいな装いをしながら、言っていることは、非現実的なレッセフェールの青い鳥を追い求めているだけの話。昔のサヨク青年がマルクス主義の社会になれば、同性愛だった治ると暴言を吐いていたに近いようなノリ。
社会がどんなコストで成り立っているのかはもちろん、安定雇用して確保しておきたい労働者が一定数必要な企業事情すら考慮していない。あと、そうしたプロ野球選手式の労働契約を礼拝するのは、能力評価が公正に行われるという前提を信じているわけだけども、そんな会社は人事屋だらけで間接コストがかかりすぎて倒産してしまうってば。仕事する人に対して秘密警察員の割合が多いかつてあった国のように、社風も暗黒体質になるだろう。
生産性と賃金のアンバランスをどこかで割り切って、グチを言いながら納得して、お互い様と思わざるを得ないんじゃないの?会社で助け合ったりするもんでしょ、賃金労働者は。
企業が社会貢献するのは税金ではなくて雇用だけでいい、と言い切るのもえらい話しだと思った。城の生まれた時代、同い年の赤ん坊たちが苦しんだ公害問題とか全く関心ないんだろうなぁ。
●でこんなのを講師に、社会経験のほとんどない政治改革系の若者たちが勉強会を開いていたりするから、そのなれの果ての若手政治家たちがとんちんかんな改革を、薩長気取りでぶち上げるんだろうなぁ。それが政治主導ですか、はいはい。
江戸のしきたりを守らなかったり、昭南島のホテルのビデにウ●コしてしまった、元●摩武士たちを見ているみたいです。
●ウ●コで思い出したけど、社会人ってこんなこともあるよなという話。
最初の職場で、私が入る前年、ある中間管理職の方が社員旅行で酔っぱらって前後不覚になってしまって、ブランドのあるホテルのロビーでトイレと間違えてう●こをしてしまったわけです。
それを一年先輩が処理してホテルにお詫びして出入り禁止を撤回してもらったわけですが、こうした仕事の評価というのは、城先生にはどういう評価になるんでしょうかね。
プロ野球選手のような契約になったら、その功労を人事考課で言い立てるべきなのか、人事考課になじまないこととして現場でドライに上司をうち捨てておけばいいのか、悩むところです。
あっ、ひょっとすると、社員旅行というものが終身雇用制の弊害そのものでしたっけ。
●話を戻して、同じ記事の中に、財務省とべったりの民主党の問題が指摘されている。いつかウィークポイントになるんだろうなぁ。先日、菅直人が官僚はバカ発言して物議をかもしたが、さんざん面倒に見てきたのに財務官僚と結びついて自分を干し、マニフェストにもある国家戦略会議を空洞化させるのに手を貸しているOB議員たちへの反発が出たと見るのは穿ちすぎか。
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