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2009.11.17

11/17 国の事業仕分け:保育所運営費補助金が安すぎる、保育士の待遇改善をせよという展開に

国の事業仕分けの「保育所運営費補助金」で何がやり玉にあがるのかと聴いた。

民主党の議員がタイトルを読み上げ、続く、財務省の役人が何かを言い出すのかと言えば、保育サービスの拡充の財源のために保護者は保育料をもっと負担せよ、とりわけ世帯年収932万以上の世帯の保育料基準の月8万円は少なすぎて、もっと負担せよ、というもの。

夫婦で年収932万と言えば、夫婦ともに年収480万円程度、あるいは夫が650万円と妻が300万円でこの水準に達する。そういう家庭が1人月8万円を超える保育料を払えば、2人、3人となればどういうことになるのか、財務官僚はわかっていないらしい。元々共働きの人たちがいなさそうな職種。わからないのだろう。

さすがにこれが暴論であると仕分け人たちも気づいたみたいで、前高島市長がまともな指摘をしたところから、財務省の問題提起や、そもそもの保育料負担額が高すぎるという話が出された。

財務省の役人が押しつけようとしたことは、子育て税そのもの。子育て共働き世帯を狙い撃ちにした増税策にほかならない。それを保育サービスをあまねく供給するためなどと美しい言葉を使っているに過ぎない。

厚生労働省が提出した「保育単価と費用徴収基準額」という資料に驚いた。これは国が自治体に、保育料をこれだけ取りなさい、という基準額で、保育単価がコスト算出に使われ、この徴収基準額が保護者負担額の算出に使われ、その差額を国が自治体に保育の補助金として支払われることになる。
この財務省の役人が少なすぎるという徴収基準額表で示された保育料を見ると、あまりにも金額が高すぎて、2歳児以下は世帯年収932万円以上、3~5歳児で世帯年収334万円以上から国の費用が使われていないという事実が示されている(保育単価限度という言葉で書かれる)。
保育はお金がかかる、お金がかかるのは規制業種だからだ、といういい加減な言説がまかり通ってきたが、国に関して言えば、保育費用を国が負担しているのは、2歳以下の子どもの中の中から下ぐらいの所得層の家庭の子と、3歳児からは貧困家庭の子のみ、ということのようだ。したがって全国で215万人の子どもが保育所を利用しているが、国の予算は3621億円しか使っていない。
これは私も気づかずうかつだったと思う。確か2000年頃の保育料基準額はもっともっと低くて、最高ランクですら国費が使われていたように思う。

さすがに財務省役人の暴論は斥けられ、子育てにお金を使うことをバカにしてきた財務省の姿勢が問題視された。おまけに所得税の捕捉というサラリーマン差別の話まで出てきて、やぶ蛇だったようである。

最後に、厚生労働省が示した保育単価の内訳の保育士人件費を見て、「金額が低すぎる」と口をつく仕分け人が多く、ようやく小泉構造改革系の有識者たちが保育コストに対する正しい認識ができたようである。「財団の何もしない幹部たちが1600万もらう一方で、保育士の人件費が月19万円だけですか?現場で汗して働いている人を大切にしてもらいたいものです!」という発言や保育士の待遇改善を求める意見まで出てきた。構造改革系の文化人に高コスト体質と叩かれ続ける保育所に同情し、何年もそういうデマはデマだとブログに書き続けた私としては、涙が出るほど嬉しい展開となった。

ずっと事業仕分けをこきおろしてきたが、今日は大きく見直した。今日仕分けされたのは財務省の役人であった。

●構造改革系の経済学者たちは、保育所が規制業種で子ども1人あたり月50万かかっているというようなデマを流し続けた。215万人もの子どもに月50万円を配っていたら、年間12兆円、話半分でも6兆円を超える保育予算になるはずだが、そんな話はない。たった3600億円、子ども一人あたり年30万円も使っていない。

●もちろん保育費用の国費負担をそれだけ低い水準においてあれば、しわ寄せは自治体に来るわけで、自治体が新たに保育所を作りたがらなくなるような構造ができている。朝霞市のようにマンション売りまくって固定資産税をガバガバ集めておきながら、保育所の整備を率先してすることもなく、基地跡地の自然破壊や地主たちが働かずに食べるために政治的圧力で土地を買うために税金を使おうというのがいちばんひどい例。
分権で保育所のことを何もかも自治体に権限持たせる危険はここにあると言ってよい。事実、公立保育所は、財源の地方移譲をしてから、臨時やパートの保育士ばかりになった、延長保育を新たにやるところがなくなった、などの弊害が出ている。

●厚生労働省の児童家庭局長、21世紀職業財団から今回まで見ていて、悪い人ではなさそうだが、不勉強なところが目立つ感じがしている。今の保育料体系についてうまく説明できなかった。1997年の児童福祉法の大改正による保護者負担の増加をもって形成されたもので、ここ数年保育政策に関わっている人には調べるまでもない話だと思う。まぁ、仕分け人みたいにだからダメ官僚みたいなレッテルを貼るつもりはない。

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