11/16 事業仕分け「延長保育事業」を聴く
1時間分の書類のチェックの仕事があったので、国の事業仕分けの「延長保育事業」を片耳で聴きながら仕事をする。
何で延長保育事業が仕分けの対象になったのかと思ったら、延長保育を実施する自治体への交付金の出所をどうするかというテーマ。延長保育そのものは否定されずによかった。最初このテーマを聴いたときに、妻が専業主婦ばかりの民主党議員が、共働き家庭を虐待する話かと思ったものだ。
一般会計から出すのがいいのか、児童手当の出所になっている年金特別会計児童手当勘定から出すのがいいのか、それが論点だった。要は、財務省として、一般会計から出すより、土曜日曜保育の補助金と同じように事業主負担のある児童手当勘定から出すのが筋、と言いたいのだろう。それに民主党議員などが「仕事のための延長保育なんだから事業者拠出金のある社会保険料から出すのがいいのだ」と上塗りしたということのよう。
どっちでもいいじゃんかそんなもの。人民裁判みたいな政治ショーまでやるテーマかと思う。
一般会計で出せば働くためでなくて、特別会計から出せば働くため、という区別もよくわからない。保育に欠ければ保育じゃないのか。6時以降が、特別会計から出すなどわけがかわらない。
それと、特別会計の整理を言う民主党が、保育事業の原資を特別会計にせよ、と言っているのが滑稽であった。
厚生労働省が、特別会計の残金をあてにして延長保育をやっていいんですか、としきりに抗戦していたが、正論。フローのための使途はフローの金で、民間の常識がこういうところでは通用しない。利益を食いつぶしてお客様第一主義を貫いたら民間だったら倒産してしまうでしょう。
この議論の中で、延長保育を実施しない自由が自治体にあるのか、というメンバーの質問があった。そんな基礎的なことがわかっていない。保育は自治事務だから国が事業を強制できない。保育政策を語る最初の一歩がわかっていない。朝霞市なんか通常保育の範囲の保育を延長保育なんて称して、仕事に追われて声も挙げられない市民を騙しているんだから。そういう分権を楯に保育をさぼっている自治体見てきたの?と聞きたいぐらい。
キャリアウーマン社長らしき人が「不況で仕事が減っているんだから延長保育って公的にやる必要あるんですか」という愚問もあった。じゃあ、デパートやスーパーで5時過ぎて働いている人って何だっての。
あとは本題と関係のない委員たちによる厚生労働省へのクイズ乱発合戦。厚生労働省が数字を即答できないような質問ばかりをぶつけて、答えに窮してつるつる言い訳はじめると「そんなこと聞いていない」と怒鳴り散らす。ちょっとでも大衆の期待に答えができないと自己批判を迫る人民裁判そのもの。参院議員の尾立がほんとうにひどかった。
それでも時間が余って、保育所の規制緩和論をぶつバカもいれば、論点が支離滅裂。
そんな状況をみて、さすがに仕分け人の中からも冷静なたしなめとも思える発言が。佐賀市長を経験した木下さんが意見をした。「延長保育事業をこのまま継続して、保護者に安心を与えてほしい。現場は安い補助金で、安い賃金で保育士が延長保育を担っている。厚生労働省にはいっそう努力してほしい」と仕分け人たちの先入観と偏見の固まりの議論を、さりげなくくさして混ぜっ返す発言があってナイス。多くの基礎自治体の首長経験者は、政策いじりやっていいことと、慎重に改革をしなければいけないところの区別がよくわかっている。
●うちの若い女の子たちは残業しないと発言したキャリアウーマンって、13日に能なし発言をしていたのか。天下り役員が非民主的な運営をしている21世紀職業財団で、組織を支えてきた非正規職員たちはたまらんだろうなぁ。しかしいろいろな人が暴言吐いて謝罪しているらしいが、その謝罪文が行政刷新会議のHPなどに掲載されているの?マスコミが騒がなければ、暴言吐いたっきりということなんでしょうね。
●事業仕分けの結果、研究者たちは二度と民主党なんかに入れない、と言い合っているという話を聞いた。後世、映画を作られたり、ジョーク集を出されたり、恥をかかない政権運営に注意した方がいいように思う。
まぁ、インテリを大事にしたソ連と、インテリを虐待した中国と、どちらが強い体制だったか考えると、今のやっていることは正しいのかも知れないが。
●大竹文雄阪大教授のブログでも国の事業仕分けのやり方に憂慮が示される。玄田有史も批判しているらしい(玄田氏は問題の焦点を正面切って議論せず、巧妙に避けて、ちゃっかり思想を押し込むところが良くない)。前にも書いたが、事業仕分けは必要というのは私も感じている。
しかし国で行われているやり方を見ていると、自治体でまじめにやっている事業仕分けのイメージがどんどん悪くなるように思う。国のやり方をまねする自治体も出てきて、法の精神も理解できないような、勝ち組のまま引退し、大企業の豊かな退職年金や引退した自分の会社の顧問料などで恵まれた老後を送っているヒマで行革好き市民が乗り込んできてヒステリーにやられたら、事業仕分けが歪んでしまう。そして社会的弱者は痛めつけられていくことだろう。憂慮することばかりだ。
「能なしでもできる」発言など仕分け人が謝罪
政府の行政刷新会議が16日に行った「事業仕分け」で、民間の仕分け人である「Office WaDa」の和田浩子代表が、21世紀職業財団の業務内容を「能なしでもできるかもしれない」とした13日の自らの発言について、「言葉のチョイスを間違った。不適切な言葉を使った。申し訳なかった」と陳謝した。
この日はほかにも、データの誤りなどについて、仕分け人からの訂正や謝罪が続いた。
一方、仕分け人の判定結果を取りまとめ役が覆すケースも出た。国の審議会が推薦する児童劇を全国の児童館などで公演・上映する「優良児童劇巡回等事業」について、仕分け人12人の判定は「廃止」1人、「自治体や民間に任せる」3人、「予算削減」6人、「要求通り」2人だったが、取りまとめ役の民主党の菊田真紀子衆院議員が「子供たちに直接夢や希望を与える事業は大切にすべきだ。私の政治判断として、要求通りとしたい」と結論づけた。
(2009年11月16日19時38分 読売新聞)
毎日フォーラム:民主政権の課題と自民再生への展望
「毎日フォーラム2009秋シンポジウム」で登壇し意見を述べる仙谷由人行政刷新担当相=東京都千代田区で2009年11月12日、内藤絵美撮影 毎日新聞の政策情報誌「毎日フォーラム-日本の選択」のシンポジウム「政治は変わったか~民主政権の課題と自民再生への展望」が12日、東京都内で開かれた。
仙谷由人行政刷新担当相は、来年度予算の圧縮を目指す「事業仕分け」について「これまで一切見えなかった予算編成プロセスのかなりの部分が見えることで、政治の文化大革命が始まった」と意義を強調。そのうえで「見直し、縮減との結論が出た項目でも、予算を付けなければならないことも出てくる」と述べ、最終的には仕分け結果の当否を政治判断する考えを示した。
これに対し、自民党の石破茂政調会長は「スピーディーだが、乱暴だ。いったん『無駄だ』といえばイメージが定着し、ひっくり返すのは難しい」と指摘し、拙速な議論にならないよう求めた。
シンポジウムには飯尾潤政策研究大学院大副学長らも加わり、約400人が参加した。【坂口裕彦】
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