9/7 保育所の待機児童数、調査開始以来最高
保育所の入所申請をして、その資格を認められながら保育所に入れない待機児童数が、調査始まって以来の最高水準になったというニュース。
待機児童数が、以前は無認可保育所通所児童なども含めて計算されていたのに、最近は、無認可保育所に通所している児童は計算外になって緩和されたにもかかわらず、高水準になったということは深刻な事態である。
今回は、無認可保育所にも入れない、という事態のようだ。
●あんまり前原派の政治家をほめたくないが、この件でNHKニュースに民主党の福山哲郎参議院議員が出ていた。コメントの内容が、政治家として一流だと思った。残念だが、保育に関してはあと一歩。子ども手当の正当化に縛られ、子どもというと生活より教育が先行してしまうものの考え方にとらわれているところがあと一歩だった。
よかったところについては、どんな環境であれ、どんな親の子であれ、子どもが大切にされなくてはならないということを前提にコメントをしたこと。子どもの不幸は親の因果だと言って突き放すような親学とかそういう言葉に弱い議員が多い中、子どもの問題は親の問題ではなく子どもにとっての問題だと捉えた彼はすばらしい。
中央地方問わず民主党の若手議員と保育園の話をすると、保育園の定義の話で終始してしまうか、待機児童が「規制緩和すれば解決する」というような脳みそ筋肉的考え方を披露されてがっかりすることが多かった中で、非常に光ったコメントだと思うが、何せ待機児童解消の具体策がないのが残念である。
実は1996年京都で開かれたCOP3のNGO集会の幕間に、全国縦断自転車リレーの企画をしていた福山哲郎さんと泉健太さんの情熱的なオルグに出会った。若い人がポジティブに政治的な力をもって説得する場面を初めて見、2人が京都の民主党のこれからの星だということも聞いて、民主党に半信半疑だった私は、こういう活動家を大切にできる(旧)民主党ならと思い、当時住んでいた札幌から埼玉に戻った後は、地方組織の建設に協力することにした。
そんな思いで関わった地元の民主党も、私も、全然違ったものになって、今、こんなんですが。
●待機児童問題の解決には、いくつかのアプローチを複合させていくしかない。
生活保護ではないが、窓口規制で需要をなかったことにするようなやり方は愚の骨頂で、必要な人が行き詰まるたびに今回のように表にでてきてあわてふためく対応になる。まず、需要をきちんと表に出す方法が必要だ。子どもを養育する家庭が、片働き家庭から、共働き家庭や、離婚率の高まりからシングルマザー・ファザーが中心となる社会になってきている。保育所のニーズは福井や富山ぐらいの比率に高まることを想定する必要がある。
保育所を増やす方法だが、もう大都市部では、自治体独自保育制度や、無認可保育所が普及してしまい、認可保育所をその代替となって担うということだけでは、スピードが追いつかず、その現実を認めるところからしかスタートできない。
一方、規制緩和万々歳でも困ったもので、流動的な雇用が確保できて、職員と入れ物さえあればできる保育事業は、劣悪な事業者が参入しやすい構造にある。サービスの受益者は子どもで大人のように適切に施設の問題点を指摘できるわけでもない。
現実にある自治体独自保育制度や、無認可保育所を、認可保育所並みの保育が可能なように、施設基準、職員配置基準を引き上げ、最終的には認可保育所並みの施設、職員数、職員の質、保育内容の質を確保していくことが必要である。そして事後的には、第三者評価制度を活用して、第三者評価機関が保育施設に勧告をする仕組みを使って、質を上げていくことが必要である。もちろん労働組合は官・民、正規・非正規問わず保育労働者を組織化するか、保育士会のような業界団体が労働条件に目を光らせて、看護士のように業界の相場的な賃金を形成していく必要がある。
大都市部での需要コントロールが必要である。大都市部で保育ニーズが極端に高まるのは、建築基準法を楯にした不動産業者などの乱開発によるところが大きい。いくら保育所を作っても、マンションがボコボコ造られたのでは、自治体がいくら何しても焼け石に水である。自治体は待機児童対策に追われ、保育の質やあり方を見直すなんてことはやっていられない事態が続いている。日本全体で人口が増えない中で、既存の開発された地域が熟していくような開発のあり方が求められる。
今のままでは、せっかく自治体などが作った保育所も、ボコボコ建ったマンションが古くなるとともに、保育所も不要になって、今度は保育所の統廃合という問題が起きてくる。不動産屋が住宅を売ったら、後の地域社会は野となれ山となれ、という仕組みを変える必要がある。開発の事前規制に加え、私は、マンションや複数の住宅を開発する業者は、保育所や介護施設(営利の有料老人ホームを除く)など地域が必要とする公共施設を設置しなければ、保育税や介護施設税を支払わせる仕組みが必要ではないかと思っている。
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