8/19 非常勤職員だからと残業代を払わないことに是正勧告
久しぶりに労働に関する話題から。江戸川区立図書館で雇われている非常勤職員に時間外手当を支給していなかったことに労働基準署から是正勧告を受けていたという毎日新聞のニュース。
都道府県や政令指定都市などで、非常勤職員のうち特別職と分類される職員に、特別職かつ非常勤職員ということを理由に、時間外手当の支給をしていないケースが少なくない。ひどいところでは非常勤職員が結成した労働組合を否定し、交渉すら応じない「不当労働行為」を平気で行う自治体もある。
特別職の非常勤職員が特別職と位置づけられている根拠はさしてなく、雇われる側の合意も都合も顧みずに雇う側の都合で位置づけているにもかかわらず、労働者性のある特別職非常勤職員に権利を剥奪する議論が横行してきた。
これに対して、労働者側から特別職として位置づけていることに限界があるんだ、一般職の非常勤職員を模索すべきなんだ、という運動も展開されてきて、それはそれで一定の意味があった。しかし、普通の労働者として働かせておきながら時間外手当も払わず奴隷労働をさせている自治体は確信犯であり、定義付けを変えたぐらいですっきり労働者として保護されるのか、という疑問が離れなかった。
今年の4月、総務省が「労働者性のある非常勤職員」という整理を行い、一般職であれ、特別職であれ、実態が労働者性があれば地方自治法や地方公務員法の制約の中で労働基準法などが適用されるべきと指導する通知を出している。
こうして労働基準署が動き出したことは、自治体が非常勤職員に対して、定義づけ、位置づけだけで、実態にそぐわない労働者性の否定を行い、労働者として守られるべきことや権利を否定するようなことはまかりならない、という方向性に動く傾向が出てきているのではないか。
以前から、厚生労働省は、自治体の臨時職員や非常勤職員の課題について、問題意識を持っておりつつも、地方自治法や地方公務員法の問題として、総務省を刺激しないようにしてきた。また自らの省が管轄する福祉や医療などの自治体業務を中心に臨時職員や非常勤職員が激増していることへの跳ね返りを恐れている面もなきにしもあらずだった。
今回、こうして明らかに不法なことからでも手を出したことは評価したい。
●濱口桂一郎さん「新しい労働社会」を読む。何度か読む。全編にわたって自治体の臨時・非常勤職員の課題について考える補助線になる本だと感じた。詳細はまたどこかで書きたいと思う。
同書の冒頭は日本型雇用システムの課題を洗い出しているが、その中で、技能労働者(文中ではブルーカラーと言っている)については、世界的には労働時間の上限規制が厳しく守られていることを前提に、時間給で残業については時間外手当を支給する、ホワイトカラーについては月給制で時間外手当がつかない、と整理されているものだ、と書かれている。
公務員の世界はそうなりつつある。正規職員はホワイトカラーばかりなり、実態は昔よりさらに身分としての地位ができてきている。彼らは月給制であり、職ではなく身分としての長期人材育成のシステムを前提として、製造業などに近い、職能給の実態と同様の賃金制度を持っている。
一方で、ブルーカラー的な技能を求められている職員については、民間委託されなければその大半は臨時職員や非常勤職員になり、総務省の通知のもと厳密な職務給が要求されている。そのため、地位ではなく技能の対かとしての賃金と位置づけられ、長期間雇用を前提としないというタテマエから、定期昇給などが実施されずにいる。
話を戻し、世界的な標準はどうか、という理屈から言うと、自治体の非常勤職員がどんなにホワイトカラー的な雰囲気を確認してみても、非常勤職員の多くは身分ではなく技能を売りにして仕事をしている人たちで、時間外手当を払わないなどという理屈は明らかにおかしいということになる。
江戸川区立中央図書館:元非常勤職員に時間外報酬払わず 労基署から勧告 /東京
江戸川区立中央図書館が、元非常勤職員の女性に時間外勤務報酬を支払わなかったとして4月下旬に江戸川労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かった。図書館側は時間外勤務させていたことを認め、5月に約20万5000円を支払った。区は担当した職員の処分を検討している。
関係者によると、女性は05年から約2年半、中央図書館に勤務。点字図書の目録などを作る作業やカウンター対応、購入図書選定などをしていたが、担当する仕事量が多く、閉館時間に近い午後7時半までの時間外労働をせざるを得ない日が長期間続いたという。
女性は「賃金未払いの勤務は数年前から日常的に行われ、他にも未払いの非常勤職員がいるのに図書館は支払いや謝罪もしていない」と主張している。
中央図書館は「勧告を真摯(しんし)に受け止めて改善を図っている」としている。同館は児童の利用が多い図書館として05年に文部科学大臣から表彰された。【工藤哲】
| 固定リンク
コメント
私は政治家と秘書は同罪と考えます。
政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、
しばしば「あれは秘書のやったこと」と嘯いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。
政治家は基本的に金銭に関わる部分は秘書に任せており(そうでない政治家もいるようですが)、
秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです。
2003年7月 鳩山由紀夫
偽装献金「あくまで一秘書がやったこと」
2009年6月 鳩山由紀夫
同級生に『はあとめえる』という6年前のメールマガジンを紹介されました。
これは大問題ではないでしょうか……
ぜひともこのコメントに返信していただきたいです
投稿: 愛知県人 | 2009.08.20 18:47
記事違いではありませんか。
投稿: 管理人 | 2009.08.20 20:52