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2009.08.15

8/14 高速道路無料化or1000円の副作用

大政党が訴える高速道路無料化や均一1000円の施策によってフェリー会社が倒産しそうである。大政党の側は、フェリー会社に補助金で、というが、高速道路会社に出している何千億もの補助金がフェリー会社に投じられる見込みもなく、ポピュリズムによって産業や地域が潰されることになる。

物流コストが下がるとか政党は甘言を弄しているが、高速道路料金が物流コストに占める割合はそんなに大きいのだろうか、という疑問がある。物流コストを下げて、物価を下げることだけに意味を見いだすとすれば、それが小泉構造改革のデフレ政策と何が違うのか、という疑問がある。フェリー会社やバス会社、地方鉄道を疲弊させて、仕事の場をなくしてまで物価を下げる必要があるのだろうか。物価が下がっても失業給付や生活保護が増えるだけではないのだろうか。

やがて地球はエネルギー不足になる。
電気自動車とかいろいろやっても、結局は電気の大半も原子力か化石燃料で作ることになる。とくに自動車で使うような大きなエネルギーは、ソーラー発電やバイオ発電などの発電では追いつかない。何十年かあとに化石燃料が不足してくれば、マイカーは再び金持ちしか乗れないものになる。
そのときに、あわててフェリーだ、バスだとやっても、ここで高速道路無料化だの1000円だの甘言政策で潰してしまったものを再生するには、気の遠くなるような時間がかかるだろう。

マイカー厚遇策を肯定する論理として、「地方はマイカーがなければ暮らせない」、という決まり文句を言う人が言う。このときの地方とはどこのことなのだろうか。もちろん山間僻地はそうだろう。バスを通すには非効率すぎる地域もそうだろう。県庁所在地などはどうだろうか。マイカー漬けの生活に慣れきってしまっただけではないのだろうか。その結果、バスや地方鉄道が減便になって使えなくなってしまったのではないか。

すでに貧しい時代とは言えないほんの20年ぐらい前まで、地方都市の人たちに自動車の免許を持っていない人は少なくなく、バスを待って、クルマを相乗りして、生活をしていた。

●マイカーを作り売ることのGDPの寄与度が、公共交通を守ることで得られるGDPより大きいこと。補正予算によるマイカーの利用促進や買い換え促進を優遇を柱とする経済政策も、マイカーを大量に作り続ける方がGDPが上がりやすいという構造が背景にあるからだろう。
ところが自動車産業は全国どこでも展開できるものでもなく、全国に何十ものメーカーを散在させれば過当競争におちいり、特定の地域だけで作ることの方が効率的で、元からそこそこ雇用のある大都市部ばかり豊かになる構造にあることだ。
マイカー優遇策を続けると、バスやフェリーや地方鉄道が疲弊し廃止に追い込まれ、ますますマイカー依存が強まる。自動車産業を誘致できなかった地方は、公共交通に従事している人たちの雇用がただ無くなるだけ、一方でますますマイカーを使わなくてはならなくて、移動の自由のためのコストが大きくなり、地域経済の外に流出する。

●同じ自動車産業でも、マイカーを作っていない日野自動車などのメーカーがほんとうに苦しい。景気対策の外側におかれている。

割引制度に無料化公約…高速優遇にフェリー悲鳴
 高速道路の利用料を巡り、政府が景気対策の一環で割引制度を導入し、民主党も衆院選の政権公約(マニフェスト)に無料化を盛り込む中、フェリー業界が悲鳴を上げている。

 すでに現行の割引で高速道に客を奪われ経営に影響が出ているだけに、「無料化されたらもたない」「高速道ばかり優遇するのは不公平」などと不満の声も上がっている。

 神奈川県横須賀市と千葉県富津市を結ぶ東京湾フェリー(横須賀市)。今夏は書き入れ時のお盆でも満船になることがほとんどない。「例年だと、2、3時間待ちになるのに」と島崎敏行・総務部長はため息をつく。

 自動料金収受システム(ETC)を着けた普通車を対象に、地方の高速道料金を土日祝日は上限1000円にする割引が3月に始まって以降、同社のフェリーを利用する車の台数は休日は3割減った。東京湾アクアラインに客を取られたためで、今月からは千葉県などの財源負担で、アクアライン通行料は平日も普通車だと800円に下がった。

 同社では、対抗策として次回利用の運賃を2割引きにするサービス券を配布。社員のボーナスも削減したが、「経費削減にも限界がある」と訴え、「フェリーは海の道路。同じように支援してほしい」と話す。

 「会社の存続にかかわる」と語るのは、和歌山、徳島両県を結ぶ南海フェリー(和歌山市)の滝本純治常務。先月からは両県の支援で地元ナンバーなどの乗用車と乗客の運賃を大幅値下げで1000円にする対抗措置に踏み切ったが、今月末までの期間限定。「1000円高速が続いたら、手の打ちようがない。無料化になったら壊滅」と話す。

 兵庫県明石市と淡路島を結ぶ「明石淡路フェリー」では6、7月、先行き不安で、全乗組員の3分の1の16人が退職。大麻一秀社長は「高速道だけなんて、行き当たりばったりの政策。自民が勝っても民主が勝っても、苦しみは続く」。

 日本旅客船協会によると、高速道が値下げされた3月以降、全国で3社の3航路が廃止された。国は今年度補正予算で、フェリー業界にも省エネ対策費などを盛り込んだが、現時点で高速道に対抗できるほどの効果は出ていないようだ。民主党のマニフェストには「競合交通機関への配慮を講じる」とあるが、具体策は示されていない。

(2009年8月15日07時11分 読売新聞)

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コメント

もし高速道路を無料化するなら、鉄道のインフラ部分(鉄路や駅舎の建設、維持費など)にも公費を投じて、利用者は運行に直接要する費用(燃料、車両の減価償却等)だけ負担すればいいようにすべきだと思われます。
また、同じく公共交通を維持するために、バス事業者には燃料や車両に対する税の免除も必要だと思われます。
でも、今のところそういう発言をする人は少ないようです。

投稿: あおい君 | 2009.08.15 09:11

ここんとこのエントリを読んでいて、大槻義彦の『日本人よ、お金を使うな!―健全な日本社会を創る処方箋』を思い出すんですよね。
http://xurl.jp/yls

左翼系の出版社から専門書を出し「噂の真相」に連載していた前歴からは想像できない、主張がネオリベそのまんまなんですよ。確かに公共交通やホテルのサービスの悪さは批判しているけど、そこからの方向性が余りにおかしくて大企業賛美・公共サービス解体を主張しちゃってる。何より三菱自動車のGDIエンジンを評価(!)しているんだから。

ここ最近の大槻氏の言動を見ていると、ネオリベというのかネオコンのそれとクリソツって気がするのは僻目なんでしょうかね?矢鱈「文明」とか使い、天下りや官僚主導を口にするとこ左翼のなり損ねがネオコンになって言っていることと同じって気が・・・・・

投稿: 杉山真大 | 2009.08.15 09:43

通りすがりで失礼します。

民主党は、2020年までにCO2排出量を1990年比25%削減するとしています。
マニフェストには高速道路無料化、暫定税率廃止のほか、地球温暖化対策税の導入についても書かれています。
目標を達成するためには、自動車利用者にとって、高速道路無料化、暫定税率廃止と引き換えに、地球温暖化対策税による今まで以上の負担が必要となります。
仮に増税になっても、マニフェストに記載されていますから言い訳ができますね。
また、首都高速、阪神高速などの渋滞路線は有料のまま存置するとしています。

一方、高速道路一律1000円は、何の前準備もなく導入されました。土日限定としたのも交通実態を考慮したものではなく、単なる大衆受けにすぎません。そのせいで、各地で渋滞が多発し、CO2排出量の増大といった弊害が出ています。その対策は何も打ち出していません。
民主党は、自民党のこの施策を反面教師にすべきですね。

投稿: 通りすがり | 2009.08.15 15:51

トラック輸送の輸送コストの高速道路が占める割合は4%程度です。人件費がおよそ40%,燃料代が10%強、修繕費8% 減価償却費5% 保険2.7%程度です。
 ですから、高速道路を無料開放したところで輸送コストはほとんど安くなりません。無料開放された分荷主に割引を強いられることになるでしょう。
 因みに日本の輸送コストはアメリカ、カナダよりやすく8.3%程度です。アメリカ、カナダは8.7%程度です。
 JR四国のゴールデンウィーク期間のは収益減は16%
減だったそうです。JR九州のお盆期間の収益は14減だったそうです。無料開放によってJR四国、JR九州JR貨物の収益は悪化しるのはまちがいないでしょう。倒産も考えられると思います。
 フェリー会社、特に瀬戸内航路のフェリー会社はほぼ全てが倒産すると思われます。
 
車を持つと言うことはある程度生活に余裕がある人達です。使用者が負担し建設費を償却していくことは持てる物が持てない物い負担をかけない思いやりでもあるはずです。
 民主党試算によれば年間一兆三千億円が償却費+利払いに必要とされています。それにプラスされて3600億円の維持管理費が新たに必要となります。一兆六千億円の税金が持てる物につぎ込まれるわけです。
 雇用を失い、貴重な公共交通を失い、環境の間逆のいく政策果たして無料化という言葉の持てる物への優遇策を唯々諾々として認めていい物でしょうか?

投稿: がんば | 2009.08.20 14:20

通りすがりさん
まったく反面教師にしてもらいたいものです。

がんばさん
クルマが必要な人もいるということはわかっていますが、だからといってその論理が全面展開されて、税金の無駄づかいのようなマイカー優遇策が歓迎されているこの社会に危機感を持たざるを得ませんね。

投稿: 管理人 | 2009.08.20 21:08

 試算によれば、高速道路利用者が(高速走行のためだけに)支払うガソリン税は、約2兆円なのだそうです。このガソリン税を充てれば、借金償還も維持管理費の捻出も可能だと言うのが「無料化」のキモです。

 むしろ現状は、ガソリン税+通行料という二重払いをさせられています。しかもガソリン税は、高速道路ではなく地方の一般道の整備にまわされています。

 高速料金が高いため一般道が混雑する、その渋滞対策と称して、高速道路と並行する国道を拡幅したり、バイパスを作ったり、そういう工事が全国いたるところで行われています。なんたるムダか、と思います。

 高速道路を無料とする代わりに、平行する幹線道路はこれ以上整備しない・・・この方が、はるかに税金の節約になるのではないでしょうか。

投稿: 旅するデジカメ | 2009.08.25 12:27

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