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2009.05.03

5/3 何にもわかっていない待機児童対策

隣の市のことをあれこれ言うのもよろしくないが、このあたりの政治家の保育所観が見えるようなことがあったので。

和光市の市長選挙に出ようとしている柳下氏陣営の「保育園・学童保育の待機時0へ・その1、保育園」が手に入った。こんなんでいいのか、と思う。このあたりの政治家は・・・とまたため息が出る。

 柳下氏が待機児を深刻な課題として受け止めようとすることはいいと思う。
 しかし「待機児を0にする対策とは、待機児をあずかる以外に方法はありません」と同義反復にすぎない、何もわかっていない言葉が出ていて、以下、問題の本質をきちんと把握していない対策が書かれている。

 柳下陣営は、保育園を新設することが容易でない、という前提から、今すぐ実行することとして、無認可保育所に入っている人への補助が打ち出されている。そこで引用されている
「朝霞市は、無認可保育園にも、そこへ通う個人にも補助金を出し、認可保育園の利用料と変わらない負担になるようにしています」
というのが本当だろうか。朝霞市が無認可保育園へ補助しているなど初耳である。施設への助成は問題があるからと、保育料負担を軽減するための個人への助成になっている(実際には、保護者の頭を通り過ぎて直接保育所運営会社に振り込まれている)。

 その水準も、確かに、生活保護受給世帯や低所得層には認可保育所に預けるのと同じぐらいの手厚い補助になっているが、夫婦で住民税が20万円を超えると、最低水準の補助で月1人7000円程度である。親の片方が年収400万円でもこの水準に到達する。年収1人300万円の夫婦ならこの水準に到達する。無認可保育所の保育料が月1人60000円~80000円であることを考えると、明らかに認可保育所に預けるより不利になる。パラダイスみたいな補助ではない。
 何万円も補助してもらえる層の世帯については、認可保育所での入所審査で得点が高く配分されており、勤務時間が変則的だとか長時間でない限り、通常は認可保育所に預ける。したがって、無認可保育所を利用している大半の家庭には、7000円程度配っているに過ぎない。これは地方交付税の積算根拠で、本来認可保育所や各種の子ども福祉事業に使われるとなっている児童福祉費を吐き出している程度である。
 朝霞市は無認可保育所利用者を支援しているが、認可保育所と同じなど、そんな立派なものではないことを和光市民に誤解させている。

 また無認可保育所を定着させることの副作用も考えるべきだろう。朝霞市内に定着した20以上の無認可保育所で働く人たちの賃金が、時給800円前後であることも認識てしおくべきだろう。それは圧倒的に少ない公費の中で、保護者負担に何とか耐えられる保育料で運営しようとすると、大きく占める原価=保育士の賃金にしわよせせざるを得ないからだ。また、長時間保育や変則勤務の保護者に対する保育、休日保育、外国人児童など、無認可保育所がやるものだ、と地域の空気ができてしまって、認可保育所は長時間開所など「子どもにとってよろしくない」と責任放棄をしても頬被りできてしまっている。そのことで一部を除き、認可保育所での実施が全然前に進まない。
 無認可保育所利用者を支援することは応急的措置としてはいいが、それが恒常的な制度になってくると、低賃金保育士を酷使する保育が定着していくことになる。それでいいのだろうか。国費や県費を突っ込んで、無認可保育所を認可保育所に転換させていくロードマップが必要だと思う。それがない。

 保育園の新設で民設民営にすればできる、と言っているが、何の根拠があるのだろうか。民設民営とは、手を挙げる事業者がいなければできない。その手段として、絵に描いてあるのは「地主さん」「土地を持っている方」の好意という、何とも頼りない話である。彼らは保育園に困ったことなどないもの、そう簡単に土地を出すのだろうか。朝霞市でも塩味市政時代に、保育園用地の確保のために地主に地価をつり上げられ断念した話を聞いたことがある。
 政府は、保育園が公立であることは非効率だとして民設民営にこだわってきたが、そのことで土地の確保、事業者の確保に困難をきたしてきた。それでも朝霞市では急速に民設民営の保育所が増えたが、これは10年以上にわたる無認可保育所育成策の結果、事業者の方が無認可でだらだら続けていても発展性がないとして、認可保育所の増設に取り組んでいた当時の県政と連携して、意欲的に取り組んだ結果である。それでも20園以上あるうちの5園がやっとだ。資金も潤沢ではないので、地理的に不利なところが多い。
 意欲的な事業者を長期間育成しない限り、民設民営のチチンプイで待機児解消など無理である。すぐになどできないのだ。

 さらには、民設であれ公設であれ、保育所を増設すれば市負担分だけで1園1億円以上の負担を覚悟しなければならない。しかし、柳下氏は、学校は新設する、高齢者に入院セットを配る、医療費助成は拡大するで、財政支出の拡大政策ばかり並ぶ中で小さな政府にすると主張しており、、どのようにして待機児解消などできるのか、まったく理解できない。

 民営で増設しても質を確保するために「行政の監督方法も適性な形に」となっているが、そんな政治公約として裁量行政のようにやる時代ではない。2000年に改正された社会福祉法で、福祉事業者は第三者評価制度の導入をすることが努力義務とされていることを知らないようだ。和光市の保育行政で1回だが過去にこれをきちんとやっている。私はこれを非常に高く評価している(朝霞市は法律にも書かれていて、市の地域福祉計画などに書かれているのに、1回数十万円の支出をけちって一向にやらない)。

 未来に向かっての待機児解消の最大の手段は、開発抑制である。無軌道な開発を市が追認すると、ちょうど子どもを抱えたり結婚したばかりの家庭が流入してきて待機児問題が深刻な事態になる。90年代後半~01年ぐらいにかけての朝霞市がそういう状態だった。流入してくる住民に罪はなく家の購入のために多額の借金を背負って住んでいるのに、さらには福祉サービスで開発して儲けた連中の犠牲となるのだ。アメリカウエスタンのような話である。開発利益に対する尻ぬぐいを行政が行う仕組みそのものを見直す必要があるのではないか。

●子育ての当事者でもない人が、当事者でもない人から聞いて書いていると形ばっかりの話になる、という見本ではないだろうか。福祉は、結果がどうであれ当事者からきちんと話を聞き、誠実に前に進めるということの積み重ねでしかない。

●柳下氏を支援しているは上田清司知事らしいが、知事が推進している教育政策は、母親が保育園に子どもを入れて愛情を注ぐことを放棄することは問題児を作ることになる、という価値観ではないか。何とも矛盾した話である。

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