ブル新・朝日の面目如何という感じの記事だが、違法支出の賠償責任を議会が帳消しという記事。
違法な公共事業支出とかならともかく、自治体の非常勤職員(民間企業でのパート労働者)に一時金を出したことが違法だという大東市市議が提訴して市が敗訴したバカな訴訟に、市議会が損害賠償しなくてよろしい、としたことが題材になっている。取り上げた事例が不適切すぎる。市長の横領とか、政策判断のミスなどのような問題ではない。
最近、こうした裁判が大阪の行政オンブズマン(その多くは市議、市議挑戦者)から相次いで提訴されている。
富裕層の高等遊民のような市民運動家出身の市議が、市長や市役所との立場を優位にしようとして、法律的に立場が弱い人の問題をネタに、訴訟の技術も簡単ということで、狙い撃ちにされている。関西以外では東京都東村山市以外、こうした裁判はあまり見られない。あまりにも訴えることが下品だからだろう。
自治体の非常勤職員(パート労働者)に対する一時金・退職金の支払いについては、法律解釈がグレーであるる。
地方自治法では常勤職員は払ってよい、常勤でない職員は払ってはいけない、となっている。しかし裁判の判例では、それが常勤職員=正規職員ではなくて、常勤職員は、正規職員のほか、本来正規職員と同等の業務をする非常勤職員、あるいは、正規職員に比べて相当な時間数働いている非常勤職員も含まれると解釈されている。もう1つ、自治体の職員の給与は条例で定めなければならない(給与条例主義)という法律の縛りがあるが、その条例がどこまで詳細に書き込むかについては、型どおりの厳格解釈と、労使交渉をふまえるとする労働基本権などとの均衡で自治体の雇用者に一定の授権がされているという解釈が分かれて論争されている状況である。もちろん労働基本権がなくてリアリティーがないのか、裁判官は厳格解釈を支持し、ここで負けている。法学者のやや多数派は一定の授権を認める立場が多い。
ところで、この原告は何の利益があって、社会的弱者を踏みつけるような訴訟をやっているのだろうか。同類の原告の中には、「ヤミ手当」などと言い放っている人もいる。市民の多くは、彼らに学童保育や、保育所の延長保育、公民館業務などで労務を提供されており、その仕事がどうして「ヤミ手当」を受け取っているなどと罵られなくてはならないのだろうか。
この事例の大東市のかかる裁判の原告は大東市議である。給与条例主義で言えば、条例整備をすべき責任が市の当局の次にあるのではないか。それに頬被りして訴訟することはあまりにも無責任である。
市議会議員が立法に司法に解決を持ち込むべきでないとは言わないが、立法で問題解決ができることができるなら回避すべきだ。訴えるべきときは、遡及不可能な大損害が想定されるときや人権侵害に当たることを、他に容易な手段で止める方法がない場合に限られるのではないかと思う。
大東市のような非常勤職員の一時金・退職金について、遡及不可能な損害ではあるかも知れないが、市は労務の提供を受け、その労務は今日的に市町村の基本的なサービスである。むしろ一時金・退職金を払ったとしても、正規職員を雇わず人件費を節約したり、人事政策の矛盾を解消することに協力してくれた人という面での功労者でもあると言える。市議が訴えるなどというのはおかど違いとも言える。
そして、原告の市議会議員は、関西だから、おそらく、大東市から年1000万円を超える報酬を受け取っていると見られる。
自治体のパート労働者と話をしていると、同じような位置づけで隣の条文で報酬が払われるのに、議員の方や生活給以上のものが与えられ、実際に毎日のように労務を提供している方がワーキングプアであることの怨嗟はよく語られる。
誰でもが政治参加できるために、議員の報酬が低くあるべきとは私は思わないが、しかし自分ところの自治体で働く職員がワーキングプア状態におして頬被りして、あまつさえ、法律的にグレーであることをいいことに、そして一方的な雇い止めがあって強く反抗できない立場である足下を見て、その一時金や退職金を裁判に訴えるなど、狂気の沙汰としか思えない。
民間パートで同じようなことを考えればわかりやすい。パートでたまたま働いたところで、それなりに役に立ったと思って働いていたところ、パートを雇うことがそこの会社内の規則に反したからとして二世の専務あたりに上司がその賃金を会社に弁償させられたとしたら、働くということの意味を見失うだろう。
そういう種類の裁判の損害賠償を議会が債権放棄して、チャラにすることに何の問題があるのかわからない。だったら法律の本来の趣旨にのっとって、正規職員でその非常勤職員を雇ってやったらどうかと思うが、そういうオンブズマン体質の市民派議員が、正規職員を絞れ絞れの大合唱をしてきたのではないだろうか。その結果として住民サービスに見合わない職員数の穴埋めに、非常勤職員が雇われてきたのではないか。
そして、この債権放棄決議は、単に損害賠償請求を放棄するという目的だけではなくて、本来払われるべき常勤的勤務につく非常勤職員の一時金・退職金が給与条例主義によって適法でない支出とされたことから、給与条例主義にもとづく手続きに代わるものとして行われたものである。同様の訴訟があった茨木市でも同様の手続きが行われている。
単に、とんでもない契約や違法手続きで行われた事業の失敗による悪質な首長に対する損害賠償と意味が違う問題を、一緒のごとく扱っている記事は問題ではないだろうか。
●非常勤職員の一時金・退職金をめぐる裁判では、興味深い現象が見られる。
大東市と茨木市の裁判の原告の背景には、共産党色の強い自由法曹団所属の弁護士が担当している。オンブズマン団体の幹部も務めた弁護士なので、単に依頼主の最大の利益(この裁判でそんなことがあるのかわからない)のために働くというより、オンブズマンとしての主張に共鳴するか、一体の立場として担当しているのだろう。
一方、共産党系の自治体の職員組合が、非常勤職員の一時金・退職金の支給を問う裁判で、それを違法とする判決を不当と批判している。
もうちょっと党で意思統一されたらどうかと思う。これは共産党系運動の多様性の問題ではない。労働者の階級的立場に依拠しながら、政治を何とかしたい団体として、その職員を処遇することについてのポリシーが問われる。とりわけ公共サービスはできるだけ公務員であることが望ましいとしている政党の言うことなんだから。
オンブズマンの立場に近く、憲法より法律を優先して、自治体の奉仕者なんだから違法支出なんか受け取る権利がないんだ、と言い切るのか、まったく合理的理由もないのに一時金や退職金の支給をできないことはおかしいとする自治体労組の立場を代弁するのか、明確にすべきだろう。