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2009.03.21

3/20 介護報酬の上げ方

職場の会議で、介護報酬改善の制度について勉強する。来年度予算で、介護労働者の確保を目的に、3%の介護報酬の改善が行われる、とアナウンスしているがその中身についての概略の学習であった。

基本の報酬を上げることに理由が見つからないのか、奨励したい事業にとびついた事業者に加算が行われる。その話はそれでふむふむと聴きながら、はたと、厚生労働省がそういうかたちで報酬加算をすることについて、いいのかという疑問がもたげてきた。一見、税金を効果的に使っているように見えるが、そうではないんじゃないか、と。

というのも、報酬の加算による政策誘導をすると、政策誘導をする必要がなくなったときに、加算をやめることになる。そうなると介護事業者はやっていけなくなったりするから、新たな加算事業に飛びついたり、労働者を整理したり、入所者から報酬加算につながらない人を出ていってもらったりすることになる。

また、介護報酬の体系が複雑になるため、請求・支払の業務が複雑になる。特に少しでも間接コストである事務コストを削減したい介護事業者にとって負担きわまりない。
また、介護労働者にとっても、本体の基本的な介護報酬が改善されないものだから、今回の改善分が賃金に反映されたかどうかが検証しにくい。介護労働者があまりにも忙しく、経営情報を収集できない、情報の非対称性も考慮に入れると、3%改善がそのまま労働者の賃金改善になって、人材不足が少しでも解消される、という絵姿にはなかなかならないように思う。

わかりやすく基本報酬の改善が本当は必要だと思った。その方が、事業者にとっても事業の転換がしやすい。加算のにんじんにぶらさがって仕事を始めると、加算がなくなったときの転換が難しい。
※それにしても、3%の報酬改善の水準がどうか、という問題もある。200万円程度の介護労働者の年収が3%改善しても、206万円である。3割アップぐらいにしなければ、他の仕事とのバランスが悪すぎる。

今の不況で、一所懸命失業者を介護労働者にしようと官民挙げて大キャンペーンやっているが、私はずれていると思う。介護の人材不足は離職によって起きている。2000年に制度がスタートして思ったよりスムーズに人材が確保できたのに、その後その人たちがいなくなったのはなぜか、という問題を直視しない限り、人をいくら育てても、ざるに水を流し続けることになる。福祉や医療や教育というのは、人的資源に依存している仕事だから、そういう問題をきちんと考えないと、製造業モデルで人材確保を考えてもうまくいかない。

そして、雇用のミスマッチ論による、介護労働者育成をやっても、人材育成の労力に比べ再び育成して定着できなかったロスを考えると、壮大なムダをやろうとしているのではないかと思う。

すでに介護関連資格を持ちながら介護以外の仕事をしたり、家庭で家事に専念している人がたくさんいる。この人たちがまた介護職場に戻ってくれれば、その分、他の仕事のポストが空く。そのことの方が失業問題の解決には効果的である。余っているところから足りないところに一気に移すことではなく、より適性のある人が向いた職場にシフトしていって、最終的に失業が解決している、という絵姿の方がいい。
そのためには、介護労働者の賃金を思い切って多くする必要がある。大臣などにはそういう問題意識があるみたいだが、どうも財政の議論のされ方に硬直的な思想がこびりついて、なかなかうまくいかない。

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コメント

こんばんは。ちょっと介護報酬を調べていて、「介護」「加算」のキーワードで、このページが上位にヒットしていてびっくりしたのでコメントしてしまいました。黒川さんすごい!

投稿: 小林美希 | 2009.04.07 00:53

すごくないです。
保育園でも、延長保育加算、特別延長保育加算、障害児保育加算、病後児保育加算、子育て支援センター事業加算と、肝心の積算根拠の人件費や人数に手をつけず、加算加算でやって、延長保育以外はあまりうまくいってないなぁ、と感じたものですから。

投稿: 管理人 | 2009.04.07 22:24

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