3/16 NHK平日朝7時ニュースのイデオロギー
先日、朝のNHKニュースがおかしいと書いたが、やっぱりおかしい。
今日は、2番目のニュースが、雇用のミスマッチの報道。
事務職、製造業の有効求人倍率が0.2とか0.3なのに、介護職場は2.3で人不足が深刻だ、というデータを切り口に、「がんばっちゃっている」介護施設が一所懸命に従業員に資格取得をさせたり、昇給を保障することで人材不足を回避している、という話。
絶対的に雇用が不足している時に、ミスマッチという報道の仕方をすることに、失業はお前が悪い、というNHKディレクターの嫌なイデオロギーを感じる。
まぁ、努力して人を育てている施設もあるんでしょうけど、全体構造がそうなっていないんだから、例外しかありえません。そしてそれでも年収500万は絶対超えないんです。NHKの7時のニュースのディレクターも、朝も夜もなく体力仕事して、年収500万円で働いてみなよって。そんな美談だけではニュースを報じることが恥ずかしくなるはずだからって。
少なくとも介護より楽な仕事はゴマンとある。その中で、介護労働者だけが、正社員っていったっていつまでも月20万もいかない給料しかもらえず、朝も夜もなく、労働基準法違反の長時間労働がまかり通り、利用者のことや自分の良心を考えると労基署にも告発できず、労働組合を作る時間的余裕も精神的余裕もなく同僚と勤務時間ですれちがってばかりで、ちょっとでも経営者に反抗すれば守秘義務違反だの何だの嫌疑をかけられて退職に追い込まれるのであれば、人手不足になるのは当然である。
高齢者を支えて、自分が結婚も次の世代を作ることもできない。皮肉にも、当事者たちはそんなこと考えなかったとしても、高齢者に吸い尽くされる若者という構造になってしまう。
経営者だって、今の介護報酬だったら、労働者に犠牲を強いてようやく収支とんとんの厳しい状況である。許してはならないが、労働者を無権利にしなければ職場が維持できない。
そうした介護職員の悲劇は、何でも安ければいい、努力すればコスト削減はどこまでもできるという新自由主義イデオロギーによる政府運営したツケである。
そもそも介護は人員削減ができない仕事。機械化もできないし、養護される人たちのおかれた社会環境を考えると機械化しない方がいい。したがって製造業のようにがんばったって工夫したって、底堅い人件費原価があって、それに見合う介護報酬が事業者に払われなければ、どんなに努力したって、他の産業より魅力的な就業先にならない。それを新自由主義イデオロギーで、民営化やら宣伝の工夫をすれば何とかなるチチンプイと誤魔化してきたのが、がんばれば介護職場も、という論調である。
介護職場、今は魅力どころか、ワーキングプアとしか言えないような報酬しか払われていない。これが高い理想を抱いて、福祉系大学や、福祉系専門学校など早くから人生を決めて勉強をし続けた人たちへの処遇か、と呆れるような内容にならざるを得ない。
資格を取った人は社会にあふれ返っている。しかし家族に高所得者でもいない限り、いつまでも続けられる仕事ではないから、専門的な勉強をさせても、ざるのように労働力が消えていく。何というムダだろうか。そして介護から去っていった労働者が、ぼろぼろになって、事務職や製造業、販売や各種サービス業に転職していく。
その政策決定の誤りを指摘せず、個々の経営者や介護労働者の努力や奉仕に責任をすり替えるのは、大きな間違いだと言える。
そもそも「がんばったらむくわれちゃう」単純な思考回路は、チャーリーチャップリンのモダンタイムスに象徴されるフォーディズムの思考回路である。介護や福祉や教育というのは、内容については努力の余地があるが、生産性についてはほとんど努力の余地がない。フォーディズム的努力したって、政府や公共的な財団などから払われるお金より大きな金額が払われることはない。
がんばればなんだって報われる、その心を支えるのがナショナリズムだ、というのが、最近の7時のニュースの編集方針だと思う。ほんとうに時代にずれている報道が続いていると思う。
しかし、そんな編集していても、そのディレクターが元気じゃなくなったり、退職したりして、自分を支える社会がどんなになっているか現実にぶつかったときに、びっくりするほど悲しくなるからって。
天下り先見つけて、威張っていそうな気もするけども。
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コメント
初めまして。
44歳独身の自由業の男です。
私の実家が志木朝霞界隈ということもあり、
何かと地域的にタイムリーな話題も書かれておられるので
以前からこちらのブログは拝見させて頂いておりました。
でも…
>朝も夜もなく体力仕事して、年収500万円で働いてみなよって。そんな美談だけではニュースを報じることが恥ずかしくなるはずだからって。
↑こちらのくだりには初めて些か…
年収500万の方々を見下しては居られませぬか?
尤も私は年収200万台ですので
貴殿の思考の範疇には無いとは思いますが。。。
投稿: たつ | 2009.03.17 00:54
読み方によってはそう受け止められかねませんね。ご指摘ありがとうございます。
NHKの中堅職員が年収1500万円はいくという話があり、そこから3分の1の収入に落ちたことと、医師、看護士など医療行為ができる人以外の介護労働者で、最も収入が高いであろう水準を念頭に、500万円と書きました。介護労働者で「正規職員」と肩書きのついた人だけを調査して300万円ちょっとという結果が出ています。たくさんいる非正規職員を入れれば、年収200万円前後になるのではないでしょうか。年金もらうか生活保護もらってボランティアしているのと変わりません。
介護労働者は経営者でなくて労働者です。それで週60時間超えるのが当たり前、残業代も満足に出ず、不規則な勤務で想像以上に厳しい仕事をしています。
どうでもいいことですが、私にとって3分の1の水準とは年収200万円を切ります。
投稿: 管理人 | 2009.03.17 08:20