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2009.01.12

1/11 子育て政策にツボの一押しはあるか

野党の偉い人に仕えている友人が、子育て政策のことについて飲みながらレクチャーしてほしい、と要望されて、出かけた。市の保育政策に問題意識を持って武蔵野市議になった男性と、友人の妻と4人で飲みながら政策談義をする。

子育てが、保護者や保育者、教員の精神性の問題にされがちなので、不幸な境遇におかれた子どものことについて、その問題をどう解決するか、という視点より、保護者や保育者、教員の姿勢の問題に置き換えられて議論されることばかりである。

望むべき社会がどのような子育てをすべきなのか、全く到達点が明らかでないから、そういうバカバカしい議論がまかりとおり、保護者どうし、保育者どうし、教育者どうしで、路線論争の名を借りた精神性への批判ばかりが横行しているという問題意識を話した。何より大事なことは、「24時間365日子どもが路頭に迷うことなく、誰かに必ず保護され愛される社会」という言葉を繰り出した。

しかし、彼の親分は「どこをどう押せば一発で解決できるのか、その勘所を」と望んでいるらしく、そういうまどろっこしい理想論から話をしても聞いてくれない、というのだ。

困ったものだ。子育ての問題を解決するのは、昔のように女を家に張り付けるか、保育所なり学童保育をきちんと整備するしかない。前者であれば、その某野党が最も嫌っている、右肩上がりの年功序列賃金を維持するしかないし、後者であれば、社会に薄く広く負担してもらう増税をするしかない。
そのチチンプイを解決しようとしたら、宮内義彦=八代尚宏の規制緩和にすがるしかない。その結果、保育現場はどうなっているのか。年収200万円も行かず、週60時間が当たり前の労働によって支えられる、どっちが福祉が必要かわからないような現実が出てきてしまっている。小泉政権でさんざん痛めつけられてみて、ようやくそこの反省をしたはずのその某野党だが、まだまだ薬が効いていないと思う。
党首が増税ぜったいダメという立場なので、そういうチチンプイにすがるしかない、というのもわからないではない。

年越派遣村はじめ、派遣労働者をめぐる社会問題化で明らかになったが、その野党の雇用問題に対する今日までの鈍感さは、「一発で押せる」ものを青い鳥のように探すところにあるのではないかと思っている。雇用や福祉、医療の問題は、どこを押せば一発解決なんてない。そういう思想は、チャチな新自由主義者と、単純な共産主義革命論者しか持ち合わせるべきではないと私は思っている。

大事なことは最終的にめざすべき立ち位置で、そのために政策を打てば長い目で見て、そんなに大きなミスはしないと思う。今日の児童福祉法の原型は、終戦直後の高邁な理想のもとに誕生した。今もって根本的な修正はされていない。年金制度や健康保険制度と全然違う。喰うや喰わずの終戦直後に、複雑な家庭問題まで呑み込んでいたこの法律のすごさは、大きな目標を見誤ってないからだと思う。

それと最後に、地方交付税を増額してばらまくよりも、こうした児童福祉や教育で雇用を生み出せば、地域社会に人口と、真水の消費が流れてくる。人を寝かせて給付金をばらまいて有効需要を押し上げるよりも、人を働かせて、あるいはワーキングプアを脱出させて、社会に有効な価値を生み出した上で、社会の目詰まりを解消した上で有効需要を押し上げることが大切なんではないか、という話しになって、介護ヘルパーの人材難や劣悪な労働条件の解消なども含めた「ヒューマン・ニューディール」をやっていく必要がじゃないか、と一同の話はまとまった。

しかし、次の日に上司に報告しなければならない友人のための材料にはならなかったなぁ。わかりやすい話ではない。

●話の中で、女性議員が子育てを語って票にする難しさが議論になる。みんなが子育ての社会資源を奪い合っている中で、議員はいい思いをしている人たち、という認識が強い。働いている親も家にいる親も、一緒に子育てから一息つけるようなことをしない限り、なかなか子育て中の親たちとの信頼関係は、利益誘導以外では生まれにくいなんて話にもなる。
これが子育てが政策課題になりにくく、当事者の声なんか無視されて、官僚や思いつきを語る有識者の発言がそのまま政策化され、つまらない補助金事業が次々に自治体に降りてくる原因なんだろう。

●しかし、私の発言のまとまりのなさについて、反省。理想や目的については話せるし、細かい政策技術についても話せるのに、その真ん中あたりの、どこを押せば、という勘所を的確に話せないもどかしさを感じている。そして話は右にいったり左にいったり。

●晩婚化はやむを得ないものの、出産は早くてもいい、という社会環境を整え自然分娩を増やす努力をしないと産婦人科がたまらん、という話にもなる。そういう観点では、結婚生活と、性交出産が完全に一致する江戸期の武士~明治期の子育て、家庭政策の問題点がやり玉に挙がる。
子育てと家庭政策のフレキシビリティーという観点と、社会秩序の維持という観点が融合するためには、離婚再婚を繰り返し他の男との間に生まれた子どもを大切にさせた江戸期の庶民や、母系家族で子どもと母親を抱え込んだ平安時代の子育てが日本の標準スタイルであって、その方が子どもが幸せだ、と。われわれこそ本来の日本主義だと、気炎を吐くような場面も。

追記●年越派遣村の運動から、厚生労働省の講堂が開放された政治ルートの経緯を書いた毎日の記事が良い。政局を意識しながら政局を超えることを判断した与野党の政治家たちの努力を伝えている。

読む政治:官邸動かした派遣村(その1) 与野党超え、電話リレー
 ◇人があふれている--異例の講堂開放
 今月2日夜、厚生労働省は東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に集まった失業者向けに異例の講堂開放に踏み切った。失職と同時に人間の生存基盤までも脅かす経済危機の深刻さが、具体的な姿となって都心に表れ、与野党の議員と政府を突き動かした。

 派遣村の湯浅誠村長(39)=NPO「自立生活サポートセンターもやい」事務局長=は焦っていた。入村者の数が予想を上回り、用意したテントからあふれ始めたからだ。

 2日朝、隣接する厚労省に出向き、ロビーの使用許可などを文書で求めたが、正月休みで応対できる職員がいなかった。湯浅氏の電話作戦が始まった。

 副厚労相の大村秀章氏は、地元・愛知県での新年会回りを終えた午後1時ごろに電話を受けた。「100人以上オーバーしています。夜は気温が下がるので何とかしてほしい」。2人は年末にテレビの討論番組で同席し、互いの連絡先を教え合っていた。

 「分かった。今から東京に行く」と大村氏は新幹線に乗った。

 民主党の菅直人代表代行は、同党の山井和則衆院議員経由で要請を受けた。京都にいた山井氏は「今晩にはテントが足りなくなる」と湯浅氏から聞き、党緊急雇用対策本部長の菅氏につないだ。

 菅氏は舛添要一厚労相に電話で「今晩が問題なので早く動いた方がいい」と伝えると、午後1時半に東京・吉祥寺の自宅を出て日比谷に向かった。車中で首相官邸を動かす必要があると考え、定期的に会談している自民党の加藤紘一元幹事長を頼った。「官房長官に話をしたいので仲立ちをお願いしたい」

 加藤氏は河村建夫官房長官に「野党が後ろにいると思わないで話を聞いた方がいい」と進言し、河村氏は「政府としてもできる限りのことをする」と菅氏に電話で伝えた。

 厚労省に到着した大村氏は、夕闇が迫る中、幹部職員らと対策を協議していた。大谷泰夫官房長らは「正月休みは今日で終わりだ」と三々五々集まった。

 「生活困窮者への対応は基本的に自治体の仕事です。中央政府の施設を宿泊に提供したことは戦後の混乱期もなかったはずです」。官僚たちは難色を示したが、適当な受け入れ施設はいまだに見つかっていなかった。

 大村氏は「これで麻生政権をつぶしたと言われたらどうするんだ。万策尽きたから開けるぞ」と宣言し、講堂の開放を決めた。

 午後6時半ごろ、湯浅氏の携帯電話が鳴った。「私の判断で講堂を開けます」。大村氏の声だった。

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