« 12/8 麻生太郎のキリスト教への冒涜か | トップページ | 12/11 規制緩和してコネが横行するだろう保育制度改革 »

2008.12.11

12/11 行政法学の扱う労務管理

今日、総務省の「短時間勤務のあり方に関する研究会」に、委員をやっている同僚のメモ取り要員として出席することになった。そんなことになるとは予測もせず、溜まりに溜まった内部の仕事、立替の請求を処理しようと、私服で出勤していたため、あわてて、私服に、とってつけたようにたまたま鞄に入っていたネクタイを締め、総務省に。

以前にもこの研究会の居心地の悪さみたいなことを書いたが、今日、よくわかったのは、行政法学者だけで労務管理を議論しているところに限界があるのではないか、ということ。行政法学者の限界というのは松下圭一法政大名誉教授が「市民自治の憲法理論」でしつこく書いているが、強烈なまでに官僚制と法律の予定調和に信頼感を置いていている。
したがって、法律に書かれていることは官僚制の論理にのっとって予定調和的に実現されるべきもの、と考える。したがって、現実が乖離しているときに、現実が乖離した原因を突き止め、対応策を考えるのではなく、逸脱したものに対して処罰したり非合法な存在として位置づけようとする。おまけでちょっと体制に取り込んでいく制度を広げる。
それが自治体の臨時・非常勤職員の処遇をめぐる、「何か違うんだよなぁ」という当事者や私の感覚につながっている。
その結果、自治体の臨時・非常勤職員に関して、行政法学独特の解釈が行われ、法律には書かれていない理屈が山ほどあって、結局はいいように低賃金でこき使って、使い捨てにして、文句も絶対言われないように解釈されるようになっている。当然、当の臨時・非常勤職員は、夫の稼ぎを充てにしている補助労働力か、金持ちのボンボンでもない限り、労働問題にぶち当たれば、くやしく思いをして泣き寝入りしていることが多い。

その委員のよって立つ思考回路の違いに気づかせてくれたのは、私の同僚の発言と、労働法の専門家である川田琢之委員の発言である。
とくに川田委員は、雇い止めをするにしても、それまでの手続きが必要だろう、と述べたが、行政法学者の委員たちは「ですから再度任用の手続きをしっかりすればいいんですよね」と全くその意味を理解できないでいた。雇う側の選抜の都合しか視点にないのだ。

労働法だと、雇い止めであっても予告期間は必要だし、予告期間を十分におかなければ、1ヵ月分の賃金相当の補償の支払いを求められることもありうる。公務の場合、解雇権濫用法理をクリアするために求められている要件や手続きうち、無理がなく実行できることすら怠って雇い止めにしてしまうことが多い。任用が、人員を要らなくなればぱっと棄てられるものと解釈されているからである。

必要な手続きは、予告期間であったり、解雇理由の明示であったり、可能であれば他の仕事の斡旋であったりするということになろうが、最低限の予告期間すら守られないケースが多い。そうした手続きが杜撰にされていることの意味が理解されていない。

だから研究会の答申のたたき台の案は、できの悪いワンマン社長の会社の労務管理みたいに、1年こっきりの雇用であることを再確認させ自然に更新されるなどと期待させないこと、非正規労働力として受け入れたんだから自業自得です、のような表現が随所に見られる。労働法を知っていたら、恥ずかしくて書けないような言葉遣いである。

西村美香委員の発言もよかった。西村委員も法律が実態に合っていないなら法律を優先、という立場だが、その立場から、フルタイムで毎日働いて、正規職員と同じ仕事をしているなら、正規職員にするような方向を出せ、と発言。まったくその通りで、臨時・非常勤職員の問題の半分ぐらいは、本質的にはそのことに問題がある。

研究会では、8月に人事院が、非常勤公務員の賃金の計算方法について簡易に示した「非常勤職員の給与に関する指針」を、国と自治体は別物として一向に取り合わない総務省の態度も議論になった。
これについて、高橋座長からももう少し何とかならないか、という指摘があった。その上で東京都庁の竹内委員の発言の皮肉もとても効いていて、自治体の正規職員の賃金・労働条件はラスパイレス指数などというものがあるように国との権衡を求められ、同じく非正規職員の休日や勤務時間は国との権衡を求められるのに、どうして非正規職員の賃金だけは国とは別物なのか、という疑問を呈しておられた。総務省も、普通に理解できる理由としてあげた中では、自治法で給与と報酬は別物です、というに留まった。相変わらず別物論から脱出しようとしなかった。

|

« 12/8 麻生太郎のキリスト教への冒涜か | トップページ | 12/11 規制緩和してコネが横行するだろう保育制度改革 »

コメント

>行政法学者だけで労務管理を議論しているところに限界があるのではないか

目からウロコです。

>自治法で給与と報酬は別物です

賃金には変わりないのにねぇ
総務省官僚は労働法分野に関してはほとんど知識を持っていないと思われます。

投稿: 一国民 | 2008.12.12 22:39

連投すみません。

行政法学者は「きちんとワーキングプアを作りましょう」
と言っているのと変わりがないわけですね。

投稿: 一国民 | 2008.12.12 22:43

>総務省官僚は労働法分野に関してはほとんど知識を持っていないと思われます。

いや、いい意味でも悪い意味でも、知識は百も承知でしょう。西村先生の指摘するように地方公務員法の原則にのっとれば、正規職員を30~40万人増やさないとならなくなりますし、そうすると総務省が自治体の非正規職員より重視している地方行政改革との矛盾が出てしまうので、いろいろな言い訳を使って、臨時非常勤職員が必要だといいながら、賃金が上がるような理屈にならないよう細心の理論配置をしている、ということだと思います。

行政法学者というのは、ワーキングプアを作ろうと言っているのではなく、労働力の問題が、一連の問題として理解できない立ち位置にいるということではないでしょうか。公務の場合、使用者が使用者だけではなくて国民でもあったりするので、どうしても労働者が少数派の問題になりがちです。

投稿: 管理人 | 2008.12.12 23:50

某県庁では事務処理システムの新規導入時に事務処理が追いつず、そのため非正規雇用労働者への賃金支払いを遅らせる、と一方的に通知しました。
幸いにも共産党議員の指摘で事なきを得ましたが、給料遅配という行為に対する認識が全くないんですよ。

地方自治体での人事担当課は行き詰まってます。

最近気が付いたのですが、民間企業は労働基準監督署が目を光らせていますが、自治体は人事委員会(ないところは首長が監督ってオイオイ)が監督機関です。この問題が意外と大きいのではと思います。

それと、公共機関での非正規雇用労働者の問題は、公務員の身分をどうするのか(戦前の公務員制度では、同じ公務員でも身分保障のあるのとないのとがあったんじゃなかったでしたっけ??)という問題に行き着くような気がします。

投稿: 一国民 | 2008.12.14 00:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 12/8 麻生太郎のキリスト教への冒涜か | トップページ | 12/11 規制緩和してコネが横行するだろう保育制度改革 »