11/5 田母神氏の処分は妥当
元幕僚長の田母神氏のことの問題について、私の同志が最も適切なことを書いている。
私は同志より、自衛官は外交安保に関する言論についてもう少し自己規制的であるべき、とは思っているが、そのあたりの感覚は、田母神氏が「そんなの関係ねぇ」と発言したことを問題視した記事で言い尽くされていると思う。
自衛隊の要職にある人物が、本物か擬制かは左派と右派で見解が異なるにしても、外交問題に直結し対外的約束とも言える過去の認識を変更するような発言をすることは、外交関係を変えることで、単なる個人的信条の吐露では片づかないだろう。少なくとも、政府は、それをうち消すための外交的労力をしなければならなくなるし、疑念を取り払うために倍返しの外交での妥協が求められる。
共産党員である公務員が、私的時間に全然影響力のない場所で共産党のビラをマンションに投函していることで国家公務員法違反に問われている事件について、右派は大きな賛辞を送っている。一方、田母神氏には、言論の自由だと言っている。共産党員の下っ端公務員が政治活動をすることを多めにみないとダブルスタンダードと言われても仕方がない。
公務員の政治活動の規制が行われるのは、仕事に公権力性があるからだ。その公権力性とは無関係のところではもちろん基本的人権の政治活動の自由が適用されるべきであろうし、逆に私人であっても公権力性が発生するような立場の人物は政治的発言は慎まなくてはならないだろう。田母神氏が個人的にどんな思想を持っても構わないが、それだけの影響力のある地位にあれば、政府見解と異なる行動を取るということは、政治活動とみなされても仕方がないだろう。
ただし田母神氏が辞任したことに、深追いしている野党や左翼陣営もどうかと思ったりする。仕事を棒に振った、それだけで責任としては十分だと思う。ただしその後の田母神氏の対応も見苦しい。
政府として今回大事なことは、中国や韓国に誤ったシグナルを送って、相手国の軍事力を強くしてしまったり、外交のバリアを高くするようなことをさせるべきではない、ということである。そのための落としどころとして、浜田防衛相の対応で妥当なところだと思う。
●(追記)退職金を支払ったことを問題視したり、証人喚問することはどうかと思う。文民統制のシステムがしっかりしていればいいことで、論文を書いて、それが政治的影響力を与える問題論文になれば、職から外して影響力を排除すればシビリアンコントロールは十分ではないか。
たかが論文で退職金を支払わないとか、証人喚問をする、などの制裁をすれば、シビリアンコントロールが効果を生むのだろうか。逆に、自衛隊内でのモラル低下や、政治家不信、野党不信、ひいては民主主義をないがしろにする思想を蔓延させて、危険な状態になるのではないか。ほんとうにほどほどにした方がいい。
私なんか、民主党が大好きな財務省の高橋洋一の方がよっぽど国賊だと思うが、しかしだからと言って、彼の退職金を今になってはぎ取ろうなどとは思わない。彼の主張は今財務省で影響力が少ない、それで十分だ。
右も左も、役人を叩けばいい、という気持ちが蔓延している。必要な罰を下せばいいので、下手にやることは副作用の方が大きい。
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コメント
この件、役人叩きとは意味が異なっています。田母神という人は軍人でしょう。(公務員である)軍人が裁判所の言うこと(判例は法律に準じた意味を持つことは言うまでもありません)を歯牙にもかけないと宣言したり、政府見解を人目もはばからず否定するという、本来許されない行為を意識的にとる輩がこの先何をするのか、はっきりしていませんか?必要に応じて軍が勝手に行動することもありうる、と言っているようにしか映りませんよ。
こういう手合いが幕僚であること自体本来異常であるうえに、法や政府に公然と挑戦して現に関係者に迷惑をかけていながら、定年退職扱いで痛痒を感じるような処分も受けずに退職金を満額受領しているなど異常どころかある種の意図を感じませんか。この挑戦の内容に妥当性があるなら別ですが、そんなもの何もない。役を解いただけでは処分になってはいないのです。天下りが早まるだけのことですよ。
現状の田母神という人物の取扱は、シビリアンコントロールなどあっさり破壊できる上に、試みたところでリスクなんか無い、と企む向きに行動の基準を明示しているようにしか思えません。
むしろ、職から外しただけでこと足りると考える政党や議員がいたとしたらその方が問題でしょう。上述の点からも、それから政党や政治家として軍人から完全に無視されていることに気付かないという点からも。
投稿: バウアー | 2008.11.06 13:31
軍人が実際にクーデター計画を立てたり、指図もされていないのに有事の作戦計画練ったりしているのとわけが違うと思いませんか。
彼の論文は、軍事問題ではなく、外交問題なわけで、政府の考え方と違う高級官僚をどう処するか、その観点で対応すべきです。
私は、それより彼を任官し推挙をした人物の責任を問うことの方が大切だと思っています。それと今後の影響力の排除です。
そこに退職金を取り上げるような動きをすれば、逆効果だと言わざるを得ません。
今日、日教組がバッシング受けているのは、そうした感情的な対応で自衛隊員の子どもを迫害してきたことの反動でしょう。右派にそういう感情を持たせてはいけないし、まして軍人にそういう感情を持たせてはいけないと思います。あくまでも人事の中で、考え方が違う人が責任ある立場に立てない、ということをたんたんと示すべきです。
逆に、この程度のことで多数決原理で証人喚問をしたり、退職金をはぎ取ったりすれば、野党が参議院で少数派に転落したときに、逆に自民党からやりたい放題やられます。そういう前例を作っていいのでしょうか。それはまさにマッカーシズムと同じではないでしょうか。
したがって、今は村山談話を政府の公式見解として再確認し固める作業をしながら、国会の一般質疑の中で、防衛大臣や前大臣などに質問を通じて、田母神氏が幕僚長になった経緯や、防衛省内での行動を明らかにしていくべきではないかと思います。
投稿: 管理人 | 2008.11.06 21:24
管理人さんの意見が妥当だと思います。
クーデターや、暴力を背景にした圧力が排除されることが大切だと思います。
戦前は、法律以外に、勅令や軍令があったので、現在の体制とは根本的に違っていると思います。
また、現在の国の体制の成立にあたって軍がはたした役割も、「独立」や「革命」を軍事によって獲得した国とは異なっているため、立場も異なっていると思います。
今回の騒動は、問題の論文を発表した人よりも、周りで騒いでいる人に問題があるように思います。
文民統制の中で、彼が選ばれて登用されていた点を軽視してはいけないと思います。更迭を判断することは、人事の権限からみて妥当かもしれませんが、懲戒については疑問です。文民統制は、ルールを逸脱したフリーハンドを持っているわけではないと思います。
統制にあたる文民が逸脱したり暴走したりしてしまうようでは、文民統制は無意味であるばかりか、素人の生兵法であり、むしろ、危険ですらあると思います。
マスコミの過剰反応も、戦前のように政治にかかわっている軍人を批判するような姿勢ですが、自衛官にはそんな立場はないので、大きく問題として取り上げる姿勢に疑問です。
「関係ねえ」発言は、問題発言かもしれませんが、彼は、文民による判断と命令に従っているだけで、裁判所が何と言おうと、何も決められない立場だったので、そういう趣旨で考えると了解可能な発言ではないかと思っています。
要は、統制にあたる文民がもっとしっかりしなくてはいけないのだと思います。
軍事力を適切に管理しないと、シビリアンコントロールが「破壊」されてしまう危険はあるとおもいますが、今の危険は、バウアーさん心配してるような破壊ではなく、文民やメディア、そして国民の暴走がシビリアンコントロールを陳腐化してしまうのではないかという危険だと思います。
本来、あの程度の発言で混乱するようなシステムではないので、もっと超然とした立場を、文民による政府も議会も明確にすべきだと思います。対等にやりあうような話ではないと思います。
投稿: koichist | 2008.11.07 00:15
「彼を任官し推挙をした人物の責任を問う」のは当然です。だからと言って、判例を含めた法に挑戦状を叩きつけたり、政府見解に反する文書を平然と出した役人に制裁を加える必要が無いということには絶対になりません。これが何故感情的というのか全くもって理解の外です。
不始末を実際に行ったのは田母神その人でしょう。
実行行為に及んだ者が実質的に責任を問われない、などという問題処理の仕方が妥当だとはとても思えない。やったのは判断力を欠いた子供ではないのです。やむを得ない事情があるわけでもない。
繰り返しますが、現状では、軍人が勝手な行動をとったところで、やった本人は役を解かれるまでがせいぜいだという前例を作っただけの効果しかありません。これも繰り返しですが本人の天下りを早めただけのことでしょう。
それに、あの戦争を「侵略」でないという以上、旧軍の行動はどれも問題ないと考えているとしかとりようがないのです(強権と残虐行為の積み重ねの総体が「侵略」にならないというのなら話は別ですが)。そうとすれば、旧軍がやったことを自衛隊にも権限の及ぶ範囲で命令すると宣言しているのと同じです。この点からも放置できないでしょう。
確かにこの軍人を処分したとして、事が法廷に持ち込まれた場合、勝てる見込みがあるのかといえば何とも言えないでしょう。しかし、やった本人に痛痒を感じさせずに事を終了させるなどもっての他です。
「日教組がバッシング受けている」という認識が私には無いのですが、それにしても「そうした感情的な対応で自衛隊員の子どもを迫害してきた」というのは事実なんですか?この部分は具体例を知りませんので。
それと、「この程度」という評価も理解できません。「自衛隊」という名でも軍は軍です。それも世界で一二を争う実力の、です。そこの幕僚が何でもやると宣言しているわけですから背筋が凍りませんか?
「逆に」から「マッカーシズム」の部分は意味がわかりませんでした。
「したがって」以下はそのとおりと思います。
投稿: バウアー | 2008.11.07 22:20
自衛官にも思想・信条の自由、そして表現の自由などの基本的人権はあるはずです。
確かに政府見解と違う見解を公に披露してしまうことは、自衛官として不適切だったかもしれません。
その限りにおいては田母神氏の資質に疑問あり、として更迭するということは理解できますが、表現内容を問題にして懲戒処分や退職金返上などということは憲法違反だと思うのですが。
投稿: 一国民 | 2008.11.08 00:19
先に>>一国民さま
憲法違反かどうかはわかりませんが、裁判で争われたら違法行為になるというのが、懲戒権の濫用ということになろうかと思います。
思想信条の自由はある、ということは当然なのですが、自衛官など公権力の行使にあたる職業をしている人は、やはり世の中の通常の感覚と異なる思想はなるべく持たない方が幸いである、と思います。
特定の職業には思想というのはつきもので、思想信条の自由、という言葉だけで片づかないものがあります。
私も労組職員という、労働に関する一定の思想的限界を根城に仕事をしているわけですが、もし労働者を売り渡す、不幸に突き落とす思想を持っている同僚がいたら、非公式には「手前、誰の金で飯喰っているんだ」と言わざるを得ません。
>>バウアーさま
今回の田母神氏の一件が、国家的犯罪と言えますか。ただのアホ論文を書いて、成り上がりの不動産屋が自らの会社のハクをつけるために利用したというだけの話でしょう。書かれたものの社会的影響力などほとんど無です。
懲戒権の濫用という言葉があります。やった行い以上に苛烈に懲戒をやれば、懲戒そのものが無効になります。
バウアーさんが退職金を没収すべきと簡単に思うことの方が恐いことだと思います。それは小泉構造改革で、労働者に安易に責任をなすりつけることが平然と行われる世の中になって懲戒権の濫用に甘い社会になっているところに、今回自衛官だから何してもいいという感情をぶつけているだけでしょう。
私はこれまで同僚や何かが問題起こして辞めざるを得なくなったときに、退職金でも何でももらって納得してそこからいなくなってくれるのであれば、うまくおさまった方ではないかと思ってきました。それくらい解雇・罷免というのは面倒な作業だと思うのです。
もしここで自分の行いがどうだこうだと、論証不能な価値観に関する議論でガタガタやって退職金をはぎ取り、野党の強行採決による証人喚問をやって名誉も傷つければ、かえって退職後も不遇の幕僚長だったなどと変な英雄扱いされて影響力残されませんか。
村山談話の解釈という抽象的な理由で解雇しなくてはならないのですから、懲罰として退職金まではぎ取るのは難しいのです。
逆の立場で行われたよくわかることです。東京の都教組、東京教祖の組合員が日の丸・君が代の強制をめぐってたたかっておられますが、このことも右よりの知事からすれば、自己の思想信条にからめとられて業務命令に従わない職員として処分しているわけです。今は戒告、訓告で一部昇給カット程度の懲罰で済んでいますが、これが賃金カット、諭旨免職(公務員の世界では分限処分)、退職金を払わない懲戒解雇と進んでいけば当然懲戒権の濫用として都の処分の不当性が問われます。それと同じなのです。教員や自衛官に聖職者論を持ち出すのか、ということにもなります。
右翼的言動を繰り返す教授を弾圧した大学が懲戒権の濫用を問われた事件
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_ad43.html
軍人という特殊性を強調し、そこは留意しなければなりませんが、しかし政府見解と異なる思想を持っていけないということになりませんし、政府見解と異なる作文を書いていけない、ということにもなりません。問題は、その論文によって実際に職務上の影響力を与え憲法が求める文民統制に挑戦したか、ということと、その論文によって対外関係に問題を生じさせたかどうか、という二点で検討されるべきです。
今回は、外交問題になるかならないかということだと思います。被侵略国である中国や韓国も、今回の対応で納得していますし、それらの国内世論もこれで悪化しているとは聞きません。
私は与野党合意の証人喚問や参考人招致は仕方ないと思いますが、しかし野党が参議院で多数決原理で証人喚問するのはどうかと思います。
証人喚問については、マッカーシズムという恐怖をもう少しお知りになった方がいいと思います。冷戦初期、左翼人士がアメリカを脅威に陥れると、次々に議会で多数決原理で証人喚問し、思想調査を行い、職を奪っていった事件です。
野党だって、思想的にすねの傷を持っている議員は1人や2人はあるものです。報復で同じことされて多数決でどんどん議会で証人喚問されて、偽証罪なんかで告発されたらどうなのでしょうか。
田母神氏の愚かさ、あまりにも類型的な右翼的言動・行動に、自衛隊嫌いの左翼は喜び勇み足を踏み過ぎです。懲罰的なことを求める場合に、自分が同じ立場におかれたらどうか、という観点が必ず必要です。
私は背筋が凍るというより、こんな程度の認識能力、言語能力しかない人が自衛隊のトップエリートにしてきたんだ、ということに愕然とします。
少なくとも今の日本がどういう国で、どういう客観的な状況におかれていて、何をして、何をしては良くなくて、ということを客観的に捉える力があるべきだと思うのですが、あんな思いこみで正論かSAPIOの読書感想文みたいなものを論文として書いているようでは、防衛費をどぶに棄ててきたと言われても仕方ありません。
日教組のことですが。
今はさすがに聞きませんが、過去、先鋭的な組合員が全盛期に自衛官の子を迫害したというのはよく聞く話ですが、手っ取り早く最近記憶に残っている話として、永沢光雄「AV女優」の女優へのインタビューとして引用されいます。
http://blog.goo.ne.jp/nozaki_yasuhito/e/676a5c0ac322ad1214f5db72edf29d20
この反動は大きいものがあります。下層階級にいる人ほど左翼に共感しないというのもこのあたりにあります。
投稿: 管理人 | 2008.11.08 00:27
>成り上がりの不動産屋が自らの会社のハクをつけるために利用したというだけ
うわははははは
全く同意っす
利用された方はもっとなさけないけど(笑)
投稿: 一国民 | 2008.11.08 22:33
どうも取り違えが何点かあるようなので指摘させていただきましょう。「退職金を没収すべき」と思っているのではなく懲戒免職にすべきだったと言っているのです。結果として退職金が支給されない、ということでは同じですが。それも、政府見解と異なる見解を幕僚長の地位にありながら活字にして表明し、政府に正面から挑戦した、という事由からです。「自衛官だから何してもいい」などとも思っていませんし、「小泉構造改革で、労働者に安易に責任をなすりつけることが平然と行われる世の中になって懲戒権の濫用に甘い社会になっている」ことなど私の認識に何の影響も与えていません。大体、懲戒云々の係争事件は私自身が経験者ですから。ただ、民間で行われている不当解雇事件の類とは全く異なる性格のものであることは明らかです。
勿論、裁判所が、「政府見解を否定する行為を働いた」ということを懲戒免職の理由としてどう評価するかはわかりません。ただ、争っていきつつ法の不備を埋めて使用者としての態度をはっきりさせながら、結局敗訴することも考えられないわけでもないでしょう。
日教組の件ですが、引き合いに出すのは筋が違っていませんか?田母神の処分は本来するべきで、都教組の処分は本来すべきでないと言えるでしょう。尤も、私は、都教組が日の丸や君が代について古代史レベルでどこまで理解しているのか首を傾げていて、教組の処分覚悟(?)の行動が古代史まで含めた正確な歴史認識を根拠としているのか疑問ではあるんですが。
懲戒権の乱用についても田母神について、仮に「論文」発表による懲戒免職が行われたとして、判例はまだ無いでしょう。反面、君が代や日の丸が絡んだ時の裁判所の態度は明らかです。
多数派の証人喚問のやり方については外形的にはいつでもとられうる方法でしょう。一方で「マッカーシズム」はあの時期独特の現象だと思いますが、再現する客観的根拠が何かありますか?
日教組の件、「先鋭的な組合員が全盛期に自衛官の子を迫害したというのは」聞いたことが無いのです。もちろん皆無だったとは言いませんが、どれ程の広がりと意味があったのか分からないし、はっきりしていますか?
「下層階級にいる人ほど左翼に共感しない」というのも、何とも抽象的で根拠がよくわかりません。「左翼に共感しない」という現象はよく見ますが、その場合の「左翼」がどういうものとして認識されているかといえば大体の場合講座派か労農派の代物で、「社会主義」が何なのか定義もできないような水準のものです。一方で、そんな労農派でも、元警官だった方がまとめられて印刷物にもされている『異風者からの通信』を見れば「下層階級(?)」からの支持も共感もあったことが窺えるわけで、ここは断言は難しいところだと思います。
投稿: バウアー | 2008.11.10 00:05
>>バウアーさま
政府見解に反したんだから懲戒免職か、犯罪ではないのだから諭旨免職か、というすれ違いで議論は終わりそうなので、私からの議論はここまでにいたします。
右派が思想信条の問題に過ぎないのになぜクビ切るんだ、ということは一理あるんでしょう。おそらくこちらの方が筋です。社長や社是に逆らう意見を公表したからと、懲罰をかけるような職場がまともだとは思いません。官民で違うんだ、という理屈をお立てになりましたが、官こそ、刑事罰を食らった人でもなければ、懲罰に慎重であるべきでしょう。
しかし、あのまま任官し続けていれば、中国や韓国との外交問題になりましたし、中国の軍拡の口実に使われる危険性もあったわけで、辞めていただく、というのは政治的に正しい判断でしょう。
そうなると、組織の方針と違う立場に立ち、正面切って批判する幹部社員についてどうするかということになりますが、ヒラ社員なら口頭注意で多少の配置転換をして、必要であれば行動を監視する、というところが(構造改革前の)相場だと思いますが、幹部職員であれば意見の相違は穏やかではないので、金銭スキャンダルでもなければ、たいていは「本人が納得した上で」、退職金を払って辞めていただく、というのが妥当な量刑ではないかと思います。
都教組・東京教組の組合員の話、この件で懲戒免職認めてしまったら、日の丸君が代の処分がおかしいと言えなくなる問題だと思います。そこは本当に注意すべきですし、私はその認識を変えるつもりはありません。日の丸君が代について、裁判所も処分の内容が免職ではないため、懲戒権の濫用について是とも非とも判決を下しているので、懲戒免職にまで至れば、濫用という判断をせざるを得ないでしょう。
マッカーシズムそのものの再現というのは定義次第だと思いますが、しかし政権交代が55年体制の時代より近づいた(あるいは自民党が弱ってきた)今日、かつてであれば政権与党はそこまでしないだろう、ということを平気でやるようになっています。
多数決原理だけで相手の政治的ダメージを狙うようなことを野党がすれば、当然与党も同じ手段に訴えて、野党の何倍もの情報収集力を駆使して野党の弱みに付け込んでくるでしょう。そういうことを覚悟して野党は政治的立場によって評価が変わる人間の証人喚問を検討すべきです。
幸い、参考人招致ということで与野党合意で国会で真相究明が行われるようですからほっとしているところです。
日教組の後半、左翼の話は、確かに科学的実証は乏しい話かも知れません。ここはポッキリ折れます。左翼については状況証拠的な現象は選挙結果なんかからありますが。
投稿: 管理人 | 2008.11.10 01:00
管理人様のご意見に賛成します。
政府見解に反対した職務上の行動をすれば懲戒でしょうが、学術論文の発表であり、懲戒理由に該当しないと思います。
政府見解というのも、過去の歴史見解であり、政府としての行動指針ではない、ということにも注意が必要です。違う見解を発表することが政府に挑戦したということにはならないし、それが挑戦にあたるとするならば挑戦してもよいのではないかと思います。
懲戒処分や退職金返還、国会招致など、話が大きくなってきて、おかしいと思っていたところです。
なお、コメントのなかの議論で思ったことですが、法律と判決は別のものですので、同視すべきではないと思います。法律は国会という民主的手続により作られたものですが、判決は少人数の裁判官が書いているにすぎません。判例批判というのは、学会でも日常的におこなわれています。また、問題となっている判決は、その一部分だけが取り上げられていますが、結論としては自衛隊の海外派遣を認めたものだということにも、留意が必要です。
投稿: logic star | 2008.11.16 19:45
loqicstarさま
結論はご意見一緒かと思いますが、私は彼の書いたものは学術論文とは思いませんし、政府見解と異なる意見を軍人が言う自由があるとは思いません。外交と軍事はとかく対外関係になりますし、対外関係は、既成事実が先行してしまえば追認するか全面謝罪して撤回するしかない性質のものです。外国と緊張関係にある仕事をしている人に、外交安保で政府見解を超える言論の自由は制約されて当たり前です。文民が平和友好と言っているのに、その横で軍人がピストルをちらつかせていたら、誰が信用するのでしょうか。そんな国を。
したがって、言論の自由などという甘やかしは許されないと思います。
判例と法律は違うと言いますが、判決は、立法や行政処分に介入する課題については、解釈をかなり抑制的にやっていますから、判例は判例だ、と開き直ることは許されないことだと思います。
そういったところで見解を異にします。
今回の記事が田母神氏をかばったかのように取られて、左派から批判され、右派から全く違う観点に立っているのに評価されることは、私の望むところではありません。
職場(この場合は日本国になります)を滅ぼしたり、存続の根幹に関わる迷惑行為をする困った人物をどうやって混乱にならずにやめていただくか、懲戒権の濫用や懲戒手続きの煩瑣をどう乗り越えて解決するのか、そういう意味で、今回の処分が妥当だったと言っているに過ぎません。退職金もらって、年金もあって、少なくとも退職手続きにケチをつけてごねる理由はないでしょう。
あと、証人喚問での田母神氏の発言は相当見苦しく、また、やっぱり罷免に値する人物だと思いました。
いわゆる自虐史観的な考え方が自衛官が誇りを持てない、としきりに嘆きましたが、あんな居酒屋談義程度の認識や、社会常識を持っている人間が上官であることこそ、誇りが持てなくなっている理由じゃないかと心配しました。
投稿: 管理人 | 2008.11.16 23:22
管理人様
コメントへの言及ありがとうございます。
レスポンスが遅れましたが、少しだけ補足させてください。
わたしは今回の論文の内容について言及するつもりはありません。政府見解に反して、公務員が「自衛隊の海外給油活動は違憲だ」という論文発表を個人としてした場合でも、同じ理屈が当てはまらないとおかしいと思っています。
そのうえで、まず、今回の論文発表が、職務としてなされたものではないということから、重い懲戒処分はすべきではないと考えます。もし、政府主催の会合や自衛隊員の研修講師として発言したのであれば、懲戒ということもありえるだろうと思います。
自衛隊の幹部が軍事に関することを個人的見解であっても不用意に発言するのは望ましくないと私も思います。ただ、「自衛官には言論の自由は認めない」とか「自衛官が軍事について個人的見解を外部に公表した場合には懲戒処分する」ということが法律で明確に定められていない以上は(「内規」があったとしても)、やはり自覚の問題という面が強く、やはり懲戒ではなく、降格といった分限処分が妥当だろうと思います。
ということで、おそらく、管理人様と見解は大きく違っていないかと思います。
ただ判決というものへの考え方は違うようです。判決は民主的手続がとられていません。また、法律を決める国会議員は選挙で選ばれ、選挙で落選するということで責任を問われますが、裁判官は責任ととることはないということからも、同視することはできないと思います。なお、判決が立法や行政に対して抑制的だとも思えませんが、これは評価の問題でしょう。
長文失礼しました。
投稿: logic star | 2008.11.23 13:14