11/1 保育所の運営会社の危機による事業撤退を考える
池袋で保育園を経営している会社が、経営上の都合で事業撤退して混乱している。
公共サービスを民営化することが効率的だ、という固定観念が根強いし、社会福祉法人のような公的性格の強い法人より株式会社の方が効率的みたいな通俗的理解がされている。
しかし、業者側の都合による一方的な事業撤退に際して、どうしたらよいのか、ということはあまり議論されていない。
保育所の規制緩和で株式会社の参入の可否を労働組合として回答しなければならない仕事を担当したときに、事業撤退にどうするのか、ということを強く指摘し、その対応策を検討すべきと言った。事業撤退を予防する意味で株式会社では、鉄道会社や電力会社など公益産業かその子会社に限定すべきではないか、とか、事業撤退があった場合には施設を接収すべき、とか提言した。
しかし、事業撤退というのは、資本主義の効率性を維持するための根本原理に関わる問題のようで、全く一顧だにされず、株式会社の参入が認められた。
ところが昨年はグッドウィルの介護事業撤退、今年はこの保育園と、おわび一言で簡単に事業撤退され、地域の福祉基盤が危機におびやかされている。
規制緩和のときに厚生労働省に主張したが、福祉事業は公的性格が強い。銀行の経営危機のときのように、一時公営化とか、施設・職員・利用者丸ごと一時的に接収するとか、そういうことが必要ではないかと思う。銀行でできて福祉事業にそれが適用できないというのは不思議でならない。
21世紀から参入してきた福祉業者は、他の業種からの参入組や、人材派遣業の事業展開として始められているところが多い。背景資本が自己資本とはいいがたい場合も多く、時にはファンドからの投資を受け入れていたりすることも考えられる。事業破綻のときの利用者保護のために何をしたらよいのか、きちんと整理すべきだろう。
●NHK教育をぼーっと見ていたら、西原理恵子が人生相談みたいなことをしていて、児童虐待しそうな母親からの相談に、何かあれば子どもを市役所に連れて行って助けてと言えばとりあえず子どもは助けてくれる、みたいなことを回答していた。西原の住んでいる武蔵野市や東京都はそうだと思う。しかし朝霞市はどうだろう。余計追いつめるような言葉で「しっかりしろ」と追い返されるだけだと思う。あるいは中国地方の某県のように、預かってくれても小学生に暴力を背景に紙袋づくりをさせる児童福祉施設に放り込まれたり。どんな親のもとに生まれた子どもでも幸せになれる社会になりますように。
保育園閉鎖 保護者ら困惑
「ハッピースマイル」の名称で保育園などを運営する「エムケイグループ」(豊島区東池袋)が経営難から全施設の閉鎖を決めた問題で、都内でも保護者らに困惑が広がった。
同社には31日、保護者らからひっきりなしに電話がかかり、社員が対応に追われた。7人いた社員は給与遅配の影響で3人に減ったという。
同社によると、初見雅人社長は28日から連絡が取れなくなっており、弟の初見司ソリューション事業部長が「子どもを安心して預けられる場所でなければならないのに、安心を壊してしまった。保護者や園児に深くおわびしたい」とのコメントを出した。
同社が運営する都の認証保育所「ハッピースマイル東中野駅前園」(中野区東中野5)には31日、都職員2人が訪れ、聞き取り調査を行った。若い母親が時折訪れるだけで混乱はなかったが、職員たちが深刻そうな表情で話し込む姿が見られた。
中野区によると、同園は9月1日に事業を開始したばかり。利用していたのは0~2歳の8人で、都子育て支援課によると、全員について他施設での受け入れがほぼ決まったという。
石原知事は31日の定例記者会見で「保護者に説明もなしに、一方的に閉鎖するのは論外な話。決してあってはならないことだ」と批判。石原知事は「設立の過程で(都が)どんな評価をしたのか聞く」との方針を示し、「子供たちが次の施設に移れるまで、責任を持って保育をしろと指導させている」と説明した。
(2008年11月1日 読売新聞)
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コメント
こういった事例がありました。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/searchdiary?of=21&word=%2a%5b%bb%d8%c4%ea%b4%c9%cd%fd%bc%d4%c0%a9%c5%d9%5d
まるで食い逃げ状態。。。
介護への新規参入業者は金儲けしか考えていないかのような業者が多いと聞きました。
投稿: 一国民 | 2008.11.02 22:46
情報ありがとうございます。野迫川町のホテル事業の件、気にはなっています。
民営化を推進する役人は、民間事業者が仕事を欲しがっているという幻想があって、それがうまく行っている内は委託先の選定なんか困りませんし、事業撤退も別の事業者を捜してくればいいということなのだと思います。
しかし現実には、非常勤公務員や外郭団体の職員以下の賃金で働いてもらう人をさがして、創意工夫を求められて、一般の民間企業にない業務を、単純に営利を追求するのと違う価値観を動かさなくてはならないわけですから、なかなかうまくやれるわけがありません。野迫川町のように、違約金もない状態で丸投げ委託してしまえば、民間事業者の一方的な都合で撤退されてしまうことは避けられません。
保育所に話を戻すと、そもそも公であるものを民に委託しているのと違い、もともと民任せで育成しているのが最近のやり方です。その中で今回のような業者の破綻という問題が起こりうる、民の事業であっても、その公的性質に着目して接収するようなことが必要なのではないか、というのがもっと議論されていない部分です。
投稿: 管理人 | 2008.11.03 23:41