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2008.10.12

10/12 ネタでしかない朝霞の市民派議員の保育所問題

少し前、朝霞市議会に議員を2人送っている市民ネットの会から広報が届く。朝霞市の支出事業の支出額上位の企業をランキングした表が載せられてあった。これ自体は単純な表なので、不公正も公正もないと思う。その中で、保育所が3園ランキングされていた。


それをもらったときには、こんなものだろうと思って放置していたが、昨日、用事があって市民ネットの田辺淳市議を訪問した。その前座の席で、補助金の調査結果から、保育園が補助金をもらいすぎだ、という批判の言葉があった。それからもう聞くに堪えない民間保育所への批判のオンパレード。

しかしそれが批判されるものなのだろうか。まず保育所の補助金は厚生労働省ならびに県、そして条例で定められている市の加配基準で厳密に算定され、公共事業のように談合水増しができる余地が全くない。私立学校のように傾斜配分などという行政の裁量もない。機械的に条例や要綱にしたがって計算され支払われるだけである。そういう意図があって、事業支出額上位の企業に、これら保育所を運営する社会福祉法人を入れたとするなら問題である。

1億円といっても、これらの保育園は90人規模の園である。常勤の保育士だけで10以上人はいるはずである。この他調理員、延長保育のパートや残業手当なんか考えると、実質14~20人ぐらいの人件費を負担しなくてはならない。それだけで1人450万円(国の積算根拠額)として、6300万円から9000万円が出ていく。この他にも、子どもの給食や教材費などに充当されるから、妥当な水準である。

市独自の家庭保育室が儲けているかどうかは経営監査が入らないので何とも言えないが、少なくとも県の監査が入る認可保育園はよほどの不正でもやらなければ儲かる事業という話にならない。そして、働く人にまともな賃金を払って儲からないのに、これが高コスト体質だというなら、この10年、医療や福祉、保育をガタガタにしてきた規制緩和委員会~規制改革会議の宮内義彦オリックスCEO・八代尚宏ICU教授コンビの言い分と同じである。

さらにその1億円の支出もあるが、市は保護者からその支出の30%~45%の保育料を受け取っている。保護者は保育料を市に払い、市に収入にいったん計上しから、補助金が支出として計上する。利用料負担がない他の公共事業と違って、補助金額がすべて公的財源からの支出ではない。

この議員の質問の意図は、保育所経営者のあら探しのような、別のところにあったようだが、本当にその無知さに驚くばかりである。
そして、私には私立保育園を選んで、という批判の意が込められていた。ほんとうに後ろめたい思いを浴びせかける言葉が続く。

しかもそれとは矛盾するような話で、市議は「保育所はすべて公営であるべき」という発言が出てきた。

しかし公営ということは市が職員数を増やす覚悟をしない限りやらないわけで、行革優等生だけが使命感である朝霞市がそんなことクビをタテに振るわけがない。民間で1億円で運営できている保育所が、公立なら2億はかかる(つまり民間保育所の補助金1億円でも、十分な保育士の待遇を保障できないのだ。最小限の職員数で全職員の平均賃金を450万円以下に抑えなくては経営できないのだ)。

朝霞市が期待もしていないところで無認可保育所が認可に転換していく過程で、朝霞市は最小限の待機児童問題を解消できた。民間が県にそそのかされてやったくれたからということである。
しかし、これを公立に拘っていたら、待機児童問題は深刻なままで、公的なかたちで質の担保をしていくことができない無認可保育所が増え続けていただろう。ただでさえ、朝霞は第一次マンションブームで適当なことをやって、家庭保育室という名の無認可保育所を20ヵ所以上も作らせてしまった。それを追認し続ければ保護者の経済的負担も大きかっただろう。

今回のやりとりで自覚のないうちのまちの「市民派」議員の就労と保育に対するとらえ方の問題点もよくわかったと思う。
勤務先に無理難題言われて、なんとかかんとか保育つないでいく苦労なんかしたことないから、保育所のことなんかネタでしかない。あら探しのネタでしかない。そのスタンスは規制改革会議と同じなのだ。
そういった有権者の関わり方は、保育所を利用している保護者にネガティブな感情ばかりを創り出すことしかない。

市議が、保育所をネタに有権者をいじっているヒマがあるのか、と思うのだ。
仮にも質の悪い私立保育所という問題意識を設定をするなら、保育所をどうこうする規制を作るのは、市議の仕事で、そういうところを選ばざるをえない保護者の選択の主体性を問うてどうするんだ、と思う。そういう発想は、新自由主義者の態度そのもので、新自由主義を批判している田辺氏の態度としていかがなものかと思う。

朝霞の市議会で、保育所のことを、支持者の関係で取り組んでいる共産党と一部保守系市議に任せきりにしてきたことの問題を何も感じていないようだ。

あほらしくて、用事半分も片づけずに中座させてもらった。

他にもいろいろあって、朝霞の野党系政治勢力に絶望的な思いをしているのだ。市長も市長与党もどうしようもない政策選択をしている。通算28年住んでいるが、情けない思いだ。

●こんな状態の市町村に、保育所・学童保育の施設基準や監査権限を降ろすというのが規制改革会議の提言で、これに異を唱える声が少ないのが心配である。補助金が多いというだけで、あれこれ刈り込まれて、学童保育みたいになるのではないか。声も数も力の高齢者の福祉に分捕られるのではないか、そんな心配ばかりだ。

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コメント

お怒りごもっともです。市民ネットという会派はつまり趣味人の集まりでしょう。田辺市議がどなたかの切実な生活の必要から市政を変えようとしてきたとは到底思えません。あの人物の市議会での質問はつまり「空中戦」です。かつての総評内で行われた党派闘争に遥かに劣る次元のものでしょう。
 藤井議員にしてもベースは生活クラブのようですが、あの生協も共産党系生協と同じ位の嘘つき生協です。バカ高いものばかり供給していてそれを何とも思わない。加入期間中、貧乏人は癌になれとでも言われている思いがしましたよ。基盤がそういう集団であればやはりがどなたかの切実な生活の必要から市政を変えようとしてきたとはどうしても思えない。
 実際、両名とも長くやってきて、「市民」の何がどれだけ守られたというのか、「市民ネット」は新顔の小山議員に実績面ではっきり劣ると言わざるを得ないのです。
 
 とはいえ、「市民ネット」が今のところ「会派」としては相対的にまともと言わざるを得ないのは事実です。ただ、正体も分かってしまっている。あるもので我慢するしかないのでしょうかね。
 尤も、張子の猫など蹴破られるのも近いと思っています。

投稿: ハンス | 2008.10.14 02:08

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