8/31 いまどき身体障害者の乗車拒否事件
いまどき、長崎のバス会社のバスが、車いすの人を乗車拒否していたようだ。しかも、国から補助金が出ている低床バス、ノンステップバスの乗務員までやっていたという。これは差別糾弾の対象であろう。しっかり反省してもらわなくてはならない。
マイカーが普及している少子化、人口減少時代に、バス、電車、タクシーが狙うべき乗客層の市場が狭まっている。それをみすみす逃しているんじゃないかと思う。
交通産業がマッチョな職場であることが、こういう事件を引き起こしているのではないか、と思うこともある。
●今回、こうしてマスコミの問題になっているが、20年ぐらい前までは、無視するのが当たり前、乗せろという身体障害者がおかしいんだ、という感覚が当然だった。川崎や大阪の身体障害者が体を張ってバスを停め、乗せろとごねて、拒否されるたびに交通局やバス・鉄道会社を糾弾して今日に至っている。
●今は障害者のガイドヘルパーがそのたたかいの境目にある。障害者が普通に買い物したり、銀行に行ったり、友人と飲みにいったりするためにヘルパーをつけることが、今は贅沢だ何だと批判されている。しかし当事者になってみろって。ヘルパーも親もいないから友人とも会えない、銀行に行くことは経済活動だからダメ、そんなことがまだ当たり前であるし、福祉水準を切り下げたり、上限を設定するとき、こういう価値観が入ってきている。
●福祉の世界は、必要としない人にとってはどうでも良いことを、ことさら騒ぎ立てて、問題を明確にして、前進したことばかりである。とりわけ、個人の尊厳と自由の調和より、常識というわけのわからない価値基準が支配するこの国では、福祉を必要とする人にとって不可欠なことが、それ以外の人にとって「~のくせに騒いで」みたいな受け止められ方をする。
今の時代それがなくなったかと言えばそうではなく、もっと巧妙に健常者や福祉を必要としない人たちへの同調圧力をかける言い方に変わっている。「もっと上手な表現方法はないのか」と言う言い方である。コミュニケーション格差の問題と言われるが、そんな上品な学術論争の問題だろうか。そういう言葉を投げかける人間の鈍感さではないか。まだ「くせに」論の方が差別感情のありかが明確で対応しやすい。
しかも、表現技術の水準に話をすりかえるのは、人権などに理解のある人が平気で使ったりする。本当に表現技術だけが問題なら「あの相手にはこういうふうに言えば相手に通る」という通し方を教えてあげるのが親切だろう。
時代が進歩して、もっと許容性の高い社会がやってきたときに、そういう態度を取っていたことを恥じることになろう。
長崎自動車:車椅子の女性、乗車拒否を訴え 行政も調査へ
車椅子で生活している長崎市内の女性(56)が、長崎自動車(本社・長崎市)の車椅子対応の路線バスに乗車を拒否されると訴えている。女性に同行取材した毎日新聞記者も、バス停で待っていた女性を乗せずに走り去るバスを確認した。長崎自動車は運転士の対応に落ち度があったことを認めたが、乗車拒否は否定している。国土交通省と長崎県は「運転士の対応に疑問がある」として調査に乗り出した。【宮下正己】
記者は今月25日に女性に同行取材した。長崎市内の3カ所のバス停で乗車を試み、2カ所目まで乗車できた。しかし3カ所目は、やって来たバスに女性が手を上げ、バスは車椅子用の待機位置にいた女性の目の前で停車。いったん乗車ドアを開けたが、すぐに閉めて走り去った。停車していたのは数秒で、運転士は女性に何も声をかけなかった。
長崎自動車は長崎県内最大のバス会社で、保有する約570台のうち車椅子対応は163台。運転手が乗車口に収納されたスロープを手動で引き出し、段差を解消して車椅子を乗降させる。
女性は8年前に小脳梗塞を患い、両足がほとんど動かなくなった。月に4~5回、約7キロ離れた市中心部に出かけるが、自宅近くのバス停は車椅子で乗車できないため、約3キロ離れた車椅子対応のバス停にわざわざ行って乗るようにしていた。それでも「これまで何度も乗車拒否された」といい、最近はタクシーなどを使うようにしているという。
長崎自動車によると、運転士は「バス停で女性が手を上げたのを確認したが、女性がよそを向いたように見え、自分のバスに乗らないと思い込んでしまった。停車時、サイドミラーに女性が見えなかったので発車した」と説明したという。
だが、同社の運行マニュアルは、バス停に人がいる場合は運転士が乗車意思を確認しドアを閉めるよう定めている。同社は「乗車拒否ではないが、乗らないと決め付けたのはマニュアル違反だった。配慮が足らず、申し訳ない」と話している。
道路運送法は、安全設備がないなど特別な理由がある場合を除いて乗車拒否を禁じている。違反すれば車両運行停止など行政処分の対象となる。
車椅子に対する公共交通機関の乗車拒否問題に取り組むNPO「DPI(障害者インターナショナル)日本会議」(本部・東京)によると、路線バスの乗車拒否は大都市で改善されてきたが、依然として全国的に事例が報告されている。乗降に時間がかかるため運行の遅れを嫌がるなどのケースがあるといい、同会議は毎年国交省に実態調査や改善を要望している。
同会議の三澤了議長は「乗車意思を確認しないのは、乗車拒否以前に運転士のマナーから外れている。あからさまに拒否できず、見て見ぬ振りをしたのではないか」と指摘している。
この女性は、長崎自動車の説明について「私の姿が(サイドミラーに)見えなかったはずはなく、言い逃れにしか聞こえない。障害者を差別しないでほしい」と話している。
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