8/31 高齢者の自己負担は問題視されるのに子どもの医療保険はまともに論じられていない
公的医療保険のない子どもが県庁所在地と政令市だけで7300人いることが毎日新聞の調査で判明した。
やはり国保加入者が課題である。高リスク層ばかりかき集められている国保を何とか救済する制度改正をおこなわないと医療保険制度自体が特権階級のために公的制度を整備しているという批判につながりかねない。
そういう観点から、西濃運輸が組合健保を解散して政管健保に合流したことを批判がましく記事にした朝日新聞はずれているのではないかと思う。
さらに子どもの医療保険制度という観点で言えば、保護者の自己責任という考え方でよいのだろうか。親に着目すればそうだろうが、子どもの側からすれば医療保険制度にきちんと加入する親と、加入できない親とを選んで生まれてきているわけではない。生い立ちにリスクを背負わせるような制度設計が間違っているのではないか。またこの観点から言うと、公的健康保険に加入している人を前提にした小児医療費の無料化ばっかり追い求めるのも、今の時代に合わない運動だと言える。小児医療無料化の運動だけでは、そもそも加入していない子どもには無料化の制度が適用されない問題が無視されている。
それから、高齢者と子どもを比較すると、「これだけ一所懸命生きてきたんだから」という曖昧な価値観で自己負担そのものの是非が論じられる後期高齢者医療制度を考えると、アンバランスと言わざるを得ない。
無保険:子どもが20都市で約7300人 親の国保滞納で
国民健康保険(国保)の保険料を滞納して保険給付を差し止められ、医療費の全額自己負担が必要になった世帯の子ども(中学生以下)が、都道府県庁所在地と政令市計51都市中20都市で7333人以上に及ぶことが、毎日新聞の全国調査で分かった。「無保険」の子どもの人数が、全国的に把握されたのは初めて。子どもの診療抑制につながっている可能性が高く、保護者と同等に国や自治体も子どもの育成責任を負うとした児童福祉法の観点から見直しの声も上がりそうだ。
東京都区部を含む都道府県庁所在地と政令市で07~08年、給付差し止めで保険証の返還を求められ、代わりに資格証明書の交付を受けた世帯に義務教育年齢以下の子どもが何人いるかをたずねた。
人数を把握できたのは、横浜3692人▽千葉838人▽大阪748人▽和歌山407人▽大分379人--など20都市。無保険の子どもは「いない」と回答したのは山形、大津など5市。18市が「子どもは含まれるが統計がない」、8市が「不明」と回答しており、実際の人数は51都市で判明分の数倍に上る可能性がある。
7333人のうち年齢別の内訳が不明の岐阜市を除き、小学校入学前の乳幼児が少なくとも599人いることも分かった。ほとんどの自治体で子育て支援のため、乳幼児医療費の助成制度を実施しているが、無保険ではこれも対象外となっているとみられる。
政府は滞納対策の一環として00年度から、1年以上滞納した世帯に対し、保険証を返還させて給付を差し止め、資格証明書を交付するよう義務付けた。国会では民主党や共産党が制度の見直しを求めているが、厚生労働省は「ルールに基づき自治体が独自に判断するもの」と慎重姿勢を崩していない。【竹島一登、平野光芳】
◇直ちに是正を
芝田英昭・立命館大教授(社会保障論)の話 資格証明書の発行は子どもの診療を抑制することになり、社会的にも利点はない。国保は保険料が高い一方で所得が低い世帯が多く、滞納者が必ずしも悪質とはいえない。性悪説に立った現在の制度は健康を守る観点から本末転倒で、厚労省は直ちに是正すべきだ。
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