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2008.08.23

8/22 民主党の若手の戦略問題

民主党の党首選挙が無投票になる。もっとも民主党らしくない党首が民主党をまとめるという面白い構造。小沢陣営が、社民党や国民新党、共産党など他の野党との協力協力関係なども見ながら、右派の民社・鳩山派から、左派の横路派までまとめきってしまう手法など、政略を学ぶのに材料になる。90年代の政界再編のいきがかりから、民主党にとって選挙協力以外で社民党とベタベタすることは半ばタブーだったし、まして共産党などというのは自民党よりもあった。それを軽々乗り越えて選挙協力がらみで国会共闘していくことをんやれたということは大きい。

もう10年早く、小沢氏にこれができたら、きっと社会は大きく変わっていたし、今頃、もっと先の議論ができていたのだろうと思う。

それにしても、毎度毎度の党首選の対抗馬が、世代交代の話になってしまうのがこの党の不幸なところ。後付けのように「バラマキ」反対など政策論もあるけども、今回野田氏に出ろ出ろ言って応援している面々をみていると、政策でまとまっているとは思いにくい。世代交代論だから、政争ではなくて押さえつけの論理しか出てこない。あとどこの身近な組織でもある話なので、陳腐でばかばかしい。

さらにもっと不幸なのは、野田氏や前原氏など「若手」と言われるグループが、世代交代論を言いながら、もっと若手がついてきていないことだ。こうした政争があるときに、その下の世代の議員の名前を聞かない。枝野氏以外に政経塾とも何とも自由な人たちの人脈を聞かない。そして同じような世代、同じような顔ぶれの議員たちで、いつも推薦するのしないのという話でもちきりなところも層が薄い。せいぜい上に渡辺恒三がついているぐらいではないか。

野田氏にやれやれと言っている「若手」と言われるグループも、政策でまとまっているのか疑問である。

これらの克服がない限り、この世代は年齢的に党内の実権を握る機会はやってきても、勝てる党首候補を出せることは永遠にないのではないかと思う。

世論が言うように前原氏や野田氏は、偽メール事件の対応の悪さもあり、また、前原党首時代に、公認権を自分たちの党内権力行使に使って良心的な落選議員を追放したことがあり、そういう徳のなさも、今回、あの世代の無様な動きとなって祟っているのではないかと思う。

●前回も書いたが、この若手議員たちが、いつも維新の志士に自分を模するのがとてもおかしい。すっかり電通文化人のバカボンパパに乗せられている、ということも。
またこれも繰り返すが、1945年の戦後直後の混乱に比べれば、民主党が政権を取るということは、ずっと小さな変化である。私は前回の記事で、それを吉田茂と比べれば小さいと書いた。
 政権交代が起きて、古い言葉だが「西側先進国」として、ようやくたどりつく一里塚である。もちろん社会の変化、経済の変化があるが、それでも終戦直後の新円切替ほどの混乱ではない。あのときには全国民的に階層の入れ替わりがあり、人生のやり直しをさせられた。価値観も何もすべて崩壊した。今は、階層の入れ替わりがない。際だちだけがある。
その小さな変化を、維新や終戦と勘違いして大混乱に陥れるのは間違いだし、あえて言えば「共産主義者の陰謀」にまんまと乗っかっていると言える。戦後獲得した民主主義の文脈の中での変化であり、その中で権力闘争をどこかで忘れることなく実務的に社会の変化に対応していくことが望まれる態度ではないか。
そういう冷静な判断をしないと、夜郎自大な態度では、政権獲得しても政権運営を間違えると思う。

●若手で、保守主義の野田派が「百花斉放」の花斉会というのを初めて知った。近代では、文化大革命の前史~前半の歴史に頻繁に出てくる言葉なので、保守主義の野田派の名称としては意外。前原派の「凌雲会」という名称のいかにも、という感じとは対極にある。

●太宰治「人間失格」を読む。話の本筋も興味深かったが、そこに書かれているディーティルもまた面白い。谷崎潤一郎とか、もっと読んだ方がいいのか。
教育「談義」や治安「談義」で、戦後の人権や民主主義が間違っているという大ばか者が多いが、求める規律性が最も徹底したのは1980年代ではないかと思う。
むしろ戦前の社会は、今の時代でも唖然とするようなこともある。麻薬が一般の薬店で売っていたり、ヤクザでもない市民がピストルを所有していることがあったり、もちろん喧嘩や殺人は今よりも遙かに多く、家族主義でありながら平気で子どもを売ったり買ったり、そんなことをする大人が珍しくない。

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コメント

吉田茂を持ち出すのはやり過ぎでしょう(笑)
週刊朝日の記事は見出しが派手な割りに何にも言っていないという印象です。

司馬イズムの毒はわれわれの世代以上は強いと思います。自分も侵されてますからね(笑)
維新の志士にああいうことができたのは大混乱期だったからで(終戦も含めて「革命」ですね)、
今の時代で当時の人物になぞらえるのは一種の遊びに過ぎないと思います。

小沢さんもこの10年で学んだということでしょう。
自分も物心ついてからアンチ小沢、反小沢でしたが、この10年は小沢一郎という政治家に振り回された10年のような気がしてきて、アンチ小沢、反小沢なんていっても小沢という対立軸を自分で設定してしまっていることのあほらしさを感じています。
それよりはくろちゃんさんの言うように着実な社会改革の方に目を向けて、小沢さんがいなくなった後くらいを構想して動いた方が良いと思います。

今回気づいたのですが、93年当選組の若手は「小沢」という呪縛から逃れられていないということです。そこにくろちゃんさんのいうそれ以下の層との温度差があるのではないかという気がしました。

そういう面では今、岡田さんが地方を回り、本を書き、地道な政策課題に取り組むというようなことをしているわけで、そういうことを各紙の編集委員クラスがコラムなどでそれを高く評価し始めていると思います。若手が今やるべきことはこれなのでしょうか。

枝野さんや野田さんは小沢さんと戦うことに拘るより、自民党と戦うこと、自らの考えを明らかにし、党内の議員の支持を得、国民に語りかけ共感を得ることに注力するべきです。

枝野さんは消費者庁のことなどで野田聖子のカウンターパートとして国会でしっかり議論して着実に成果を得るとか、そういったことでアピールしてほしいなと思っています。

投稿: wacky | 2008.08.24 00:11

まず、定例の党首選が無投票になりやすい民主党に課題がありそうです。

それから、公認権を楯に党首や党内与党が議論を封殺(政党の党内抗争というのは政党の新陳代謝のために必要で、その反作用として必ずしも封殺することすべてがいけないとは思わないが)して、党首選挙すらなくしてしまうというのは、問題ではないかと思うのです。

若手の問題点や吉田茂論は再論になりますのでおいておきます。

岡田さんの評価ですが、やや経済政策や規制緩和の考え方に難があり、と思いますが、筋を通し、まじめにやる、ということで、菅、鳩山、小沢、横路世代の次として、彼よりぬきんでている人はいないだろうと思います。節制がきいていることとか、民主党の不安定感を払拭できるパーソナリティーを持っていますが、それを支える党の体制がどのように作れるかが、課題ではないかと考えています。

枝野氏について、政策面や行動力では評価するのですけども、、なぜ前原なの?という疑問はぬぐえません。
考え方が違っても一生助け合っていきたい盟友というのは、誰にでもいるものですが。

投稿: 管理人 | 2008.08.24 04:42

確かに問題ですよね。

私も代表選を封殺してしまうような今の民主党の空気に嫌なものを感じています。

代表選をやると衆院選に集中できなくなるってよくわからない論理ですし、
本当は、むしろ玄人受けしかしない内閣改造の後、オリンピック明けに民主党への注目度を高める絶好のチャンスだったのにとは思います。

早速、麻生あたりが非民主的な点を批判したりしていますが、やった方が小沢さんにとってもイメージアップの機会にもなったのではないかと・・・。

それにしても小沢氏はよく若手の運動量の少なさを嘆きますが、どちらかというと自派閥の皆さんのことなんじゃないのと言いたくなります。
大体、某国対委員長にしてもず~っと比例復活だし、うちの地元も本当は民主が強い地域なのに、いい歳して比例復活。9.11でも自由党系の若手は軒並み落ちたし、足腰が弱いのは小沢チルドレンの方でしょう。

あと、くろちゃんさんの岡田さんへの評価は同感ですね。遅れてきた構造改革論者のような面がなきにしもあらずです(岡田さんなりの筋の通し方ではあると思います。各論部分なんかでは下手に空証文切るより真っ当な政策をきっちり実現してくれそうではあるのですが)。
田舎の商店街で、「あれはイオンの息子だから・・・」と言われないようにしないといけないと思います。

前原さんは先日の農水系3議員によるメール弾劾文の一件(あれはやり過ぎだとは思います)などありましたが、とても党内世論が代表として推すようなことはありえない気がしています。未だに代表候補として名前が挙がるのがよくわかりません。
ただ枝野さんは前原代表時代、執行部入りすると思いきや憲法調査会長だったので、そこら辺の距離感が今ひとつわかりません。

投稿: wacky | 2008.08.24 17:19

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