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2008.08.19

8/19 酒井順子がトクをし赤木智弘が損をする自民党の親同居減税

自民党の一部が同居の親がいれば減税拡大するということを検討しているらしい。

減税というと国民サービスだと単細胞な人間は喜ぶが、金持ちほど優遇され、貧乏人ほど損だということを認識すべきだろう。その上で、政策減税というのは、税金の不公平感を拡大することになる。特定のライフスタイル、特定の物を買うと減税される、というのは、そういう情報を知り得た人間だけが減税に預かれる。そういう情報格差の不公平も拡大する。

政策減税というかたちで高所得者を優遇する。そして親と同居という生活条件で税金を優遇する。結果、どういう人がトクをし、どういう人がトクをしないのか。
親と同居していない人はトクをしない。1人で生活をがんばってやっていたり、シングルマザーなんか絶対にトクをしない。減税で財政が厳しくなるから、この人たちが受けられた児童扶養(母子家庭)手当だとか、保育所への補助金などが削減されるかたちで損をする。東京にいる地方出身者が冷遇されているということはいろいろなところで言われているが、ますますそれに拍車をかけることになる。
一方で高所得者はトクをする。税率10%で所得税を払っている人より20%の人が、20%の人より30%の人が、30%の人より37%の人が、大きく税金が返ってくる。一流大学を出て、外資系金融機関か不動産業者になって、堅気の仕事ならびっくりするような年収をもらって、親元を離れず、親にご飯を作ってもらって独身を貫いている人が最もトクをする。
さらに言うと、親元でひきこもっている人や病んでいる人は納税額ゼロだろうから、この人たちは全くトクはしない。金を稼げない障害者の子と暮らす老親には何のメリットもない。

消費税の逆進性どころではない、不公平の拡大である。

そうやって計算してみると、自民党の復古派は日本の伝統だとか言っているけども、実は、復古派が嘆いている少子化の温床・パラサイトシングル優遇税制になる。
象徴的な言い方をすると、赤木智弘(東京に出ていたころ)が損をし、酒井順子がトクをするのだ。感覚的にイヤなものがないだろうか。
自民党の一部にはそういう政策を推進しようとしている人がいる、ということをきちんと若者は認識すべきだろう。

三世代同居を推進する人たちがいるが、そういうことは税制で誘導すべきではない。三世代同居とはそもそも経済的原理と一歩距離をおく考え方のはず。現在も扶養控除で手当されている。それを経済原理で推進するとは、理念とかけはなれた下品な手段である。やはり本来の価値をきちんと伝えていくべきである。

一方で、税金による中立的な再配分が機能せず、東京一極集中・県都一極集中がどんどん進む中で、日本の人口の半分以上が物理的に三世代同居が不可能になっている。家族によりかかるだけではない、新しいかたちの都市共同体のあり方をいろいろ模索すべきだろう。

●経済政策面からも。独立世帯を増やした方が消費性向が上がり、経済は活性化する。しかも比較的環境を害さない食料品や衣料品など基礎的な物の生産によって上がる。
しかし、金持っている若者を実家にとじこめてしまえば、消費性向は下がり資産が余る。そこから流動性の罠の舞台装置はそろい、経済は沈滞し、ひどいときにはデフレに拍車をかける。

●後期高齢者医療制度が高齢者いじめだという批判をかわす狙いがあるようだが、そもそもその批判は筋が悪い批判だ。もっと本筋の議論をきちんとした方がいい。
また今どきの高齢者が子どもと同居したがっているか、というのもよく考えた方がいい。ある人のお葬式にいったら、3人いた子どものうち2人が来てなかった。そのうち1人は亡くなった親のところに同居していたこともある人だ。ちょっと驚いた。そういう時代である。同居すりゃいいってもんじゃない。人間の絆のあり方はもっといろいろ考え方方がいい。

●小泉構造改革がいけないというのはわかる。竹中平蔵が憎たらしい。しかしだからと言って、最近の自民党は安易な逆戻りを口にしすぎである。逆戻りでも小泉構造改革でもない次の進歩を提示できず、否定された過去の話をぶり返すから、支持率を回復できないのではないか。

高齢の親と同居なら減税拡大? 総選挙控え浮上2008年8月19日1時49分
 09年度税制改正で、70歳以上の親と同居している世帯を対象に、所得税の減税を拡大する案が浮上している。総選挙を控え、高齢者対策の1項目として検討が進む可能性がある。ただ、家族との同居などライフスタイルに関係なく公平な税制を目指す最近の税制改正の流れには逆行することになり、反発の声もあがりそうだ。

 「個人としての考えだが、家族同居を推進するということであれば老親扶養加算を少し(多く)とってあげたらどうか」。伊吹財務相は今月初めの就任会見でこう述べた。

 高齢の親との同居に伴う減税は、所得税控除の「同居老親等加算」といわれる。70歳以上の親と常に同居している場合、所得税の控除額が親1人につき10万円ずつ増える。

 後期高齢者医療制度の導入で、子供の健康保険の扶養家族となっていた高齢者からも保険料が徴収されることになった。伊吹財務相は「従来一番日本が伝統的に大切にしてきた家族」を重視し、同居を促す別の仕組みがあった方が良い、との考えを会見で披露した。

 同居老親等加算により、現在は総額約300億円の税金が免除されている。仮に控除額を2倍にした場合はさらに同額の税収減となる。景気後退で法人税収の落ち込みが懸念されるなか、減税を拡充すればさらに厳しい財政運営を迫られるのは必至。伊吹財務相も現時点では、「財政事情が許さなければできない」としている。

 また、最近の税制改正は、「一人ひとりのライフスタイルの選択を税制ができる限り阻害しないことが重要」(07年政府税制調査会答申)との方向で進められており、「親と同居すべきかどうかは価値観の問題。いまの税制改正の流れにも沿わない」(政府税調関係者)との声もある。

 一方で、与党内には伊吹財務相と同様の声がくすぶる。5月末に自民党の合同部会がまとめた高齢者対策でも、3世代同居世帯などを対象にした所得税や不動産取得税の軽減案が盛り込まれた。

 後期高齢者医療制度が高齢者から酷評されているため、与党内には「政府は高齢者に冷たい」との批判を和らげる手を打ちたい、という思いがある。こうした声は、総選挙が近づくにつれ一層高まる可能性がある。(山川一基)

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コメント

こんにちは。
この手の話は、立場によっていろいろ議論があると思うのですが、いい加減「モデル家族」を想定するのはやめて欲しいです。人間、いろんな生き方があるのですから。

ニュースなどで、「サラリーマンの夫に専業主婦、子供二人のモデル家族」という表現を聞くたびに、夫婦で12年間毎日二人の保育園に送り迎えしていた者としては、「官僚のお偉いさんは、国民みんなが自分と同じと思ってるのかねー」と腹が立ちます。

投稿: iulius | 2008.08.20 10:39

この「高齢者と同居なら減税」というニュースを見たときには、何だか絶望的な気持ちになりました。頭の悪い政治家が多すぎる。人気取りになるどころか反発が多いと思います。我が家でも、これでは金持ち優遇だねと話していました。年収が少なければ所得税控除など意味がありません。広い家に住んでいなければ親を引き取れません。みんな実家に帰れということでしょうか。ところが、優雅な実家というのも一部の話で、帰ってもらっても部屋ない、仕事はないで迷惑がられます。本当に庶民の生活というものを想像できなくなっているんですね。

投稿: meme | 2008.08.20 11:25

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