8/17 NHK・日本軍と阿片
NHKスペシャル「日本軍と阿片」を見る。文庫化された佐野眞一「阿片王」と重ねて見るといい。
関東軍が阿片で裏金を作り、東京の手の届かないところで戦線を拡大する経費にしていたという報告。今日の土建型公共事業とよく構造が似ていて、阿片の生産地拡大→占領地の拡大→戦線の拡大→東京の預かり知らない経費の増大→阿片の生産地拡大、という悪循環にあった。陸軍は、外務省が勝手な約束を結ぶと、その悪循環の利権を放棄し、ときには占領地撤退をしなくてはならなくなったり、軍人を雇いつづけることすらままならなくなるので、国際条約1つ結ぶにいちいち介入して内閣を崩壊させたりしてきたのではないか。
1938年の国際連盟での阿片規制の議論の中で、中華民国は阿片の利権かを進める日本を非難し、そのことで決定的に発言権を失っていくことを番組は紹介してくい。
関東軍の元軍人が包装されているキャラメル粒を手にした証言で「今の若い人に大麻を売るのと同じことやっていたんだね。」「今の暴力団と同じことやっているでしょ」というのが印象的だった。
NHKと佐野のルポルタージュとの違いについて。
大筋の部分で、佐野は阿片にまつわる中国大陸での軍や利権の動きを追跡したに留まるのに対して、NHKは外交戦での敗北を主題に取り上げている。
NHKは控えめに、現在の貨幣価値で数百億円の収益を陸軍が上げていたとしているが、佐野は兆の単位を言っている。
またNHKは戦費調達と言っていたが、佐野は軍隊の機密費、いわば裏金と言っている。ただし使途に関しては、傀儡国家の樹立にかかる経費と言うところで同じだが。
NHKは少しだけ匂わせつつ国府軍は阿片販売をやめていたとしているが、佐野は、国府軍も軍閥も大なり小なりやっていて、システム化したのは関東軍だ、と書いている。
佐野は、どうして軍隊がこうした販売で機能し、かつ、日本の敗戦と中国内戦の激化で阿片が消えたのか、ということについて説明している。清朝末期から、中国は村単位のひどい内戦があって、阿片の販売に必要な長距離の輸送手段がなく、それを可能とする日本軍や国府軍が阿片の元売りとしての優位性を発揮できた、ということのようでもある。
カメラのブレが大きかったのが見ていて辛かった。事実を断片的に見せていくので、佐野の著書を読むか、構成力がないと、理解が難しいかも知れない。
●NHKとしては快挙だと思うが、国に誇りを持てなくなるような番組をつくるな、民放のような娯楽番組をせっせと作れと言う(安倍晋三が送り込んだ)古森経営委員長や、政治家筋から圧力がかからないだろうか。旧陸軍関係者、満州国関係者、製薬業界の暗黒の恥部だったわけで、旧軍や大日本帝国を再評価しようと目論んでいるウヨな人たちの感情を逆撫でしてしまわないか心配である。
とくに、岸信介の政治資金には、こうした不透明な資金が流れ込んでいるのではないかという話も多く、満州帰りの軍人・革新官僚たちの持ち帰った満州利権による資金の実態は何だ、という話になると、戦後の保守政界にとってのタブーに触れてしまうかもわからない。
●第二次世界大戦に至る、和平工作に対する陸軍の妨害を見ていると、ほんとうにわけがわからない行動が多い。阿片の販売元締めをしていたことは、その解明の1つの補助線になるだろう。
組織が、その存亡を問われる大目的のための対外公約を結べないとするとき、その組織の内部にわけのわからない強固な内部組織があり、ときにその内部組織が、不法行為や組織の存亡にかかわる倫理違反をやっていることが多い。高校や大学のときにそういう組織を見てきた。証拠もないので今さらどうこう言うつもりはないが。そういう組織は、「本当のところどうよ」と聞いて相手の顔を潰ずに改善できる妥協点を探っても、表向きと違う「実は、」という言い訳も言えないで、わけのわからない理屈を並べ立て、世間に通じないことを押しつけることが多い。政治的テクニックで異論を潰していたりもする。そういう組織とつきあうときは要注意である。逆にそういう組織でも、「実は、」という話をできる人が何人かいると、注意してつきあえば、何とかなる部分もある。
●朝霞市も基地跡地の開発に関して、私や市民連絡会ではない人の至極真っ当で修正したところで市の計画が大変更になるわけではない意見まで、わけのわからない組織の論理をごり押しして原案どおりで進めている。市役所内部や、市政運営に影響を大きな与える人のソサエティーの中で大きな矛盾を抱えているのではないか。
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コメント
NHKは支那事変以前の支那におけるアヘンの実態や、日本が台湾でアヘンを撲滅させた実績などを隠蔽しています。
NHKによる日本を貶めるための悪質な印象操作と認められたので、まずは郵便にて質問状を送りました。
投稿: deliciousicecoffee | 2008.09.04 01:21
台湾がそんなにうまくいったんですか。後藤新平が、阿片を容認しつつ撲滅させるというわけのわからん政策を台湾で採ったことが、のちのち陸軍が、中国人に阿片取引をさせるより、という理屈で阿片利権に手を染める口実を作った現実もあるのです。
そうは言っても、阿片で裏金作った陸軍の悪業と、そのことで中国から撤兵できなかった現実はきちんと問いただされるべきです。
日本を貶めるとかそういうことより、ちゃんと事実を見たらどうですか。恥ずかしい過去を反省して誇り高き日本があるんじゃないですか。恥ずかしい過去を正しいなんて言って、それは周囲から見ればバカ丸出しです。
投稿: 管理人 | 2008.09.04 01:33
はじめまして。
「日本を貶めるとかそういうことより、ちゃんと事実を見たらどうですか」という管理人さんのご意見に強く賛同します。
台湾での阿片撲滅などとんでもありません。
台湾総督府にとって阿片専売から上がる利益は重要な収入源であり続け、それはやがてヘロイン精製につながっていきます。やがて台湾の阿片・ヘロインは関税自由の大連港を介して関東州外の満洲および中国内部へと密輸されていくのです。
これらはひとり台湾のみならず、関東都督府や青島守備隊、内地の商社(三井物産など)などが半ば結託して行った阿片汚染の姿でした。
最大の当事者たる日本政府は、中国への阿片禁輸を決議したハーグ条約を、その批准を前提としたヴェルサイユ条約締結時に併せて批准しながらも事実上これを放置し、原敬内閣に至ってよってようやく禁輸が実現されるところまで漕ぎつけた矢先、その原自身が暗殺されてしまいました。
その数年後、幣原外交が展開されるなか再び阿片密売は取り締まられるようになりますが、満州事変の勃発と関東軍の独走で政党政治は瓦解し、以降歯止めは利かなくなっていくのです。
研究書としては山田豪一『満洲国の阿片専売 : 「わが満蒙の特殊権益」の研究』、実用書としては倉橋正直『日本の阿片戦略 : 隠された国家犯罪』など、しっかりと精査された書物がありますので、是非ご一読ください。
投稿: 太郎 | 2008.09.09 07:19