はじめにやつらは共産主義者に襲いかかったが、私は共産主義者ではなかったから声をあげなかった。
つぎにやつらは社会主義者と労働組合員に襲いかかったが、私はそのどちらでもなかったから声をあげなかった。
つぎにやつらはユダヤ人に襲いかかったが、私はユダヤ人 ではなかったから声をあげなかった。
そして、やつらが私に襲いかかったとき、私のために声をあげてくれる人はもう誰もいなかった
これは和光市議松本さんが繰り返し紹介してくれる文章です。
マンションへの政党ビラ配布がまた弾圧されている。今度は、共産党の小金井市議が党の活動として国分寺市内で集合ポストにビラ投函しているところを、そのことをマンション住民に発見されて、警察に突き出されたという。その共産党市議は注意された時点で謝罪し、配布を中止したにもかかわらず、警察は逮捕こそしなかったものの、書類送検までしている。
今回のこの事件で、松本さんが紹介してくれるこの話はよりいっそう噛みしめて考えなくてはならないと思った。検察の立件、あるいは裁判所が、成立要件なし、最悪でも違法性阻却でとりあわないことを願いたい。今回の摘発は、民主主義社会にとって最も自由が保障されるべき政治活動に対する、市民と警察官僚一体となった弾圧といってよいと思う。
先日、私のブログに率直な市民の方からビラ投函そのものがおかしいという批判のコメントをいただいた。感覚の違いだと思うが、自分が何かの問題意識をもって立ち上がろうとしたときに、相手に情報取捨の自由があるビラの投函ができないような社会にしてしまうことは、きっと将来に大きな禍根を残す。
立川の反戦ビラや葛飾区の政党ビラ配布も有罪にすることがおかしいと私は思うが、まだ全面的な弾圧ではないとたかを括っていた。しかしこれは甘かった。立川や葛飾の事件で裁判所と検察は、住居不法侵入の適用範囲を理由や経過も説明せず住居から邸宅というあいまいな概念に広げ、立法を経ずにマンションの共有部分全般でビラ配布は警察が摘発できるという解釈改正を行っている。集合ポストか各戸ポストかは、警察の胸先三寸であると認めたようなものである。いつかは集合ポストまで弾圧されると考えるべきだったようだ。
しかも、今回のように謝罪しようが中止しようが警察に突き出すようになっているし、そうである限り、他の微罪なら送検すらならないようなレベルの問題が、検察に持ち込まれているということである。
これが共産党だからざまあみろみたいなことを思っていると、これは市民の政治全般への反感だと思うから、民主党も公明党もいつかは警察や検察にやられると思ってよい。特に空中戦に勝負強い民主党にとっては、マンションへのビラ投函禁止というのはかなり厳しい制約になるのではないかと思う。もし、自公与党が政権交代になりそうな情勢になって迎えた選挙であるなら、マンションに住む公●党員がポスト前で張り込んで、投函している民主党のビラ配布員を写メールで撮して警察に摘発を求めるということは十分に考えられる。
また、住居不法侵入だから、対象は政党だけではなく、デリバリーのちらしや近所の福祉活動まで対象は広げられる。近所で福祉バザーやります、町内会の集まりがあります、みんな配布できなくなるか、管理組合の管理員のさじ加減一つで配布ができる/できないが決まってしまう。マンションの主人公は誰か、どこかおかしな議論になっていくように思う。
一方、マンション住民がプライバシーに過剰に気にして、こうして政治を遠ざけている間に、一戸建て住民は町内会だ何だに組織化され、ちゃんと地域の政治の情報が入るようになっている。マンション住民とその他の住民との間の感覚の違いを、ビラの投函ぐらいで横着していると、いつか手痛いしっぺ返しを受けると思う。
日本人全体が何か誤解しているが、民主主義は投票のときに、無心になって誰かの名前を書くのが最も理想的と考えているふしがある。だから先進国では考えられないような選挙での文書や個別訪問の規制を行っている。一方で、何の意味もない選挙カーには補助金まで与えている。そして、ステロタイプな選挙のイメージを固定化させるようなウグイス嬢のプロダクションまであったりする。
がんじがらめの公職選挙法や、政党活動に対してのさまざまな刑法の微罪を利用した弾圧がまかりとおり、庶民がそれに拍手喝采しているのは、何のために選挙をやるのか、ということが見失われていているからではないか。
有権者と政治家との信任の契約更改なんである、ということが忘れられている。権限を委任するのだから、どういう権限の使い方をするのか、もっと有権者に知られる手段を政治家や政党は持たなければ、民主主義なんか機能しない。かしこい消費者になるためには商品知識をいろいろ手に入れなくてはならないが、残念なことに強制的に取られる我々の税金の使い道を決定する政治家を選ぶ段では、満足な情報収集をしない。だからマンションへの政党ビラの投函を、住居不法侵入とした警察、検察、裁判所の恐ろしさに無自覚でいるのだと思う。
そうした政治環境の中で、政策や政見を比較しながら投票するということができないために、汚職政治家やつまらないことで有権者を裏切るような政治家がのさばってしまうのである。
●マンションの管理人が特定政党の支持者だったりして、マンション住民が知らない間に、その政党に反対する人をすべて追い返したりしたらどうだろうか、という問題が残る。実際に朝霞に多いリ●ンの売ったマンションは、たいていビラ配布禁止という看板を、元からつけている。管理組合で真剣に議論なんかしたことないだろう。購入した住民は、おっ、ありがたいねぇ、と思いながら、それを受け入れ、しかし結局はあつかましく投函し続けるデリバリー、中古マンション屋の大量のちらしにやっぱり腹立てているのだろう。で、そのマンション管理人が、マンション販売会社にとって都合のよい政党の支持者ばかり雇った場合、あるいは特定のいくつかの政党だけ嫌うように社内教育をした場合、マンション住民には偏った情報しか入手できないようになってしまう。そういう危険性も孕んでいる。
●警察の防犯活動のビラ投函も摘発してみるべきだろうか。あれも、警察に認められた立ち入り権限をしなければ住居不法侵入である。市の広報の配布も摘発してみようか。市はまだいい。市の外郭団体が市の広報と一緒におくりつけてくる広報も摘発の対象にしようか。郵便局員が嫌いだから不法侵入で摘発、そんなことを考えられてしまう判決なのである。住居不法侵入罪は何のためにあるのか、ここまで拡大解釈していると、本当の罪の機能がどこかいってしまうように思うのである。
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