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2008.04.08

4/8 戦争を終結させたのは原爆やソ連参戦ではなく岸信介という珍説

昨夜、仕事に関しての朗報。

●岩波新書「占領と改革」を読む。
戦後の改革の起点は戦前・戦中の軍国化にある、という分析が受けているらしい。社会保険制度など、表層的な部分だけ追いかけると確かにそういう面がある。著者はそれを全面展開し、農地解放も労働組合の結成も軍国主義があったから進んだと断言する。いかがわしい論理だ。いったい何の事実関係をもって、農地解放や労働組合の結成がファシストの仕業と決めつけられるのか、何の論拠もない。東京交通労組も横浜市従業員組合も大阪市従業員組合もみんなファシストどもに解散させられている。その事実をどうして労働組合の結成などという言葉に置き換えられるのか。

政治面では、戦争に反対したのは自由主義グループ=吉田・幣原と、日本共産党だけ、という旧社会党の存在を全く無視した論理である。そうなると共産党と岸信介が平和勢力ということになる。
この論理を全面展開して、共産党がかつて「社会ファシスト」として社会党を批判したことを思い出した。著者の過去の出版物を見ると、共産党系の本屋からいっぱい本を出している。また、小磯内閣の誕生によって「自由主義」グループが復権したことが、原爆投下やソ連参戦よりも戦争終結のきっかけになったという論理展開は、いったい何を示唆しているのだろうか。断片的には、1944年ぐらいから戦争終結に向けた動きが起きているが、それが8月15日終戦の決定打になっているだろうか。必要条件ではあっても、ソ連参戦や原爆投下ほど決定打ではなかっただろう。小磯内閣になったことが終戦への道の決定打だとすれば、そこで評価されるのは岸信介である。
逆に、戦後改革といわれるGHQの社会民主主義的改革や、片山・芦田内閣、池田内閣などはファシスト政権の延長にある、というイメージづくりに成功する。これは、日本の資本主義を「社会主義」などと断定する人たちの感覚と同一である。

共産党に毒された無政府主義的ニヒリズムが、今日の新自由主義の温床になっているという論理があり、私は時々同感する。また佐藤優は、今日のネオコンはトロツキストから発生していると指摘している。そんなことをまざまざと実感させられた。

岩波新書の質が下がっていると思った。

●NHKの放送を左翼偏向とみて「不偏不党」を求め、彼らの言うところの「反日」放送を追放しようとしている古森NHK経営委員長が、自民党の衆議院議員の政治パーティーに出席して、応援のスピーチをしていたという。呆れた話である。安倍政権は終わったのである。古森氏が残っていることは異様なことである。

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コメント

まぁ斉藤孝の本を出すくらいだし、岩波に限らず新書のレベルが落ちてる感じがするって気が・・・・・10年位前なら数冊ばかり買ってみたい本があったけど、今はそれすら見当たらない。

>岩波新書「占領と改革」
社会政策についての美しい誤解(?)を突かれたって、格好なんじゃないですかね?社会政策って聞くと何かと左翼や社会主義と結び付けられてしまいがちだけど、その元祖ってビスマルク時代のドイツで社会主義運動を抑えつける為に社会政策を始めたって経緯があるのですよね。
だから、社会政策を進めることと社会主義運動が鎮圧されたのが同時進行で起こったって歴史を知らないと、こうした"珍説"に騙されるのは仕方ない話なのかも。

投稿: 杉山真大 | 2008.04.11 21:10

杉山さんのような解釈が、「占領と改革」のトンデモ的な主張なんです。左翼が社会政策を求めるのは王道で、それを冷ややかに言い続ける日本のニヒリズムの左翼が、戦中戦前の体制と結びつけて社会ファシスト論を展開することが許せないんです。

投稿: 管理人 | 2008.04.11 21:24

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