« 3/9 尼崎市役所の派遣労働者が無期限ストに突入 | トップページ | 3/18 人間を商売道具にする社会 »

2008.03.17

3/17 連日のNHKの冷凍食品バッシング

NHKの冷凍食品批判がひどい。中国産冷凍食品で有機リン系毒物が発見したことで、家庭から冷凍食品を使わないようになってきている、という報道がされた後、冷凍食品の何が危険か、一切、根拠を示さず、使う今どきの家庭や母親が悪いという非難を続けていた。5分以上も。とり憑かれた表情の文化人が、普通の家庭の食事がおかしくなっていると力説していて恐かった。

この報道、いくつかの点で問題があると思う。

まず、冷凍食品がどうして危険なのか、根拠を示さず、有機リン系の毒物混入事件のイメージを利用して、冷凍食品というのは危険なんだ、という無批判の前提で話を進めていることである。冷凍食品じゃなければ問題ないのだろうか。比較的安全ではあろうと思うが、国産の素材から作っているから安全なんてこともあり得ない。産地偽装だって本当のところは止められない。かつての三一新書が示したぐらいの根拠を示してくれないと、イメージ操作のそしりを受けても仕方がない。

次に、冷凍食品なんか使っている親は、という料理もしないような人がしがちなイメージ批判を利用して、モラルを強要するような内容であることだ。冷凍食品を使わない母親は立派で、家族のことを考えて、使う母親は家族が死んでも構わないと思っている、というような設定で議論をスタートしている。

そして、最後にこの責任の全てを「母親」という性的役割分業の言葉で母親におしつけていることである。母親だけが冷凍食品にまつわる問題をブロックしなければならないのだろうか。夫や子ども、売りつけている販売業者、製造業者、家族のおかれた社会的背景、そんなことを一切無視して、冷凍食品を食べさせる母親が悪い、というキャンペーンである。食べ物だけ改善したところで、今日の家族がどうなるものではない。それが生活している実感である。

冷凍食品を使うことがモラル的な問題があるというなら、NHKの社員はどうなんだと言いたい。食育キャンペーンなんてやっているけど、朝から晩まで仕事ばっかりして、面倒くさい素材からの料理なんかしているのか、と思う。比較的時間の調整がつく私でも、半製品や総菜店などで買ういわゆる「中食」抜きに、おむつ替えからお風呂、掃除までこなしきれない。冷凍庫には、かつお節(けずってあるもの)やズブロッカ、肉の貯蔵でめいっぱいで、冷凍食品は趣味じゃないから使わないけれども、そうした印象によりかかったバッシングみたいな言い方は気分が悪い。

だいいちこの手のことを言う人間はすぐ日本人の食事はそもそも、という話をしたがるが、江戸時代、江戸の町民は男が多かったり、炊事場が火災の原因になると規制されていたりで、家庭料理なんて限られた人しかしていない。東南アジアの都市のように、朝から晩まで外食産業が備わっていた。武家や商家では従業員一同食べる、ちょっとした社員食堂のような食事で、これまた家庭料理のイメージとは違う。薩長明治維新モデルを基本にして今はなっていない、という議論の建て方は、いい加減やめてもらいたいものだ。

食品の安全性から言えば、危ない食品より素性のわかる食品を食べられるに超したことはない。そのために消費者が努力するにこしたことはない。そうした消費者のニーズのために努力している生産業者や流通業者、生協があることも知っている。しかし、それでもたまに生産者や流通業者による産地偽装や成分偽装に巻き込まれたりしてお詫びの文書をもらったりしている。一方で、動物的な感覚が人間にはなくなって、危険物質が入っている食べ物をかぎ分けることもできなくなっている。

冷凍食品を食べさせる母親だからダメとか、いいとか、そういう議論が成り立つ前提そのものが壊れているのに、何を寝ぼけたキャンペーン張っているんだろうと思った。安倍晋三的なムードが、家族を大切にしようとか食育という誰もが反論できないような言葉の影にそっと差し込まれていることに非常に気分が悪い思いをしている。

●先週のSPAの巻頭で内田樹が、出されたものを食べられる感覚を養え、というコラムを書いていた。出されたものが食べられるものなのか、うまいのか、そんなことも考えずに、●●産だから、●●生協だから、賞味期限内だから、と無感覚に食べていることが問題なんじゃないかということ。味音痴な私が紹介するのもなんだが。

●パソコン復活。破壊された液晶を直してもらったついでに、壊れていたキーボード、USBポート1ヵ所、調子の悪かった排熱のファンまで直してもらって、新品感覚。ちょっとお金がかかったけども、清々しい気持ちである。事故後のメーカーの相談体制も良かった。某民間企業系電話会社のときと大違い。

●したがって溜まっている仕事しなければ・・・。

|

« 3/9 尼崎市役所の派遣労働者が無期限ストに突入 | トップページ | 3/18 人間を商売道具にする社会 »

コメント

確かに最近流行の食育論議を見ていると、栄養学ばかりか地理学や歴史学すら知らないんじゃないか?ってのを結構目にするのですよね。よく「健康的な日本食」の例として引き合いに出されるマクガバン=レポートにしても、一番理想的として示されたのは(生活の欧米化が進んだ後の)1970年代の日本なんですよね。むしろ伝統的な日本食に限って言うと、でんぷん質に偏った上に塩分の多いことが欠点として指摘されているんだそうです。

投稿: 杉山真大 | 2008.03.18 22:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 3/9 尼崎市役所の派遣労働者が無期限ストに突入 | トップページ | 3/18 人間を商売道具にする社会 »