2/13 障害者の就労がもてはやされる影で・知的障害者への強制労働がある
札幌で、知的障害者に強制労働させていた食堂経営者がいたことがわかった。3日に1回の公衆浴場の入場券と飲食店の残飯の現物支給で働かせていたということで、保護者たちも就労の場が与えられていたという「幸運」のために何も言えなかったという。さらにこの経営者は、障害者年金もだまし取っていた疑いもあるらしい。
前から、知的障害者を食い物にする人たちはあちこちにいて、左翼セクトのニセ募金、性的奴隷、こうした強制労働まで、ちょっと障害者問題にかかわっている人ならみんな一度は聞いている。
しかし、なかなか当事者によりそう問題解決が進まないでいる。収容型ではない知的障害者の社会的な居場所がまだまだ作られていないからだ。
バリアフリーの意識が普及して、就労できる障害者がいることが「発見」されて、少しずつ社会に生きる居場所が見つかるようになってきたが、その一方で、障害者は健常者並みの就労をしなければならないという強迫観念も強くなってきている。障害者と接したこともない人は、例の「がんばれば報われる」小泉構造改革思想で福祉を語りたがる傾向は否めないし、そうした障害者の美化の仕方で、見事なほど脳天気に障害者福祉はムダだと言い切ってしまう人もいる。
もちろん一般就労ができるに越したことはないが、身体的、能力的に、健常者と同じ働きを求めることは土台無理な人も多い。介助者や器具の改良でもまだ難しい人もいる。そういう就労が無理な人たちにあわせる社会参加のあり方について、これまで何とか作業所が補ってきたが、昨年の障害者自立支援法で小規模作業所に対する助成が大きく削られ、完全な就労か、完全な福祉の保護か、どちらかを選ばざるを得なくなってしまっている。
再び、知的障害者は、就労の場があると甘言を弄してひどいことをする人にいいように利用される危険性にさらされる状況になっていると言わなくてはならない。
またこうした被害が発生したときの、本人たちの権利擁護システムが全然できていない。私が以前地域福祉計画で福祉オンブズマンの設置と専門家の配置を求めたところ、税金の無駄遣いと言い切る人がいた。そんなもんなのだ。マジョリティーというものは。
こうした問題は、奇特な弁護士が善意でやってくれるだけで、札幌だからこそ浮かび上がったと言える。最近、企業舎弟に位置づけられてしまった弁護士は、企業のない地方都市や低所得者の多いベッドタウンにはほとんどいないため、これらの地域ではたまたま障害を持ってしまった人は、人権侵害にまったく丸裸でいるのだ。
●鳩山法相が、鹿児島の公選法違反の被告が全員無罪になった件について「冤罪」ではないと発言。アルカイダ発言といい、問題が多い。鳩山ブラザーズで何か動きが始まっているようだが、勘弁してもらいたい。
知的障害者に「奴隷生活」 保護の4人、経営者らを提訴
2008年02月13日22時42分
札幌市の食堂で住み込みで働いていた知的障害のある32~51歳の男女4人が13~31年間、無報酬で劣悪な生活を強いられ、07年6月に保護されていたことが13日わかった。労働時間は1日十数時間で休日は月2回。食事も満足に与えられなかったという。4人は同日、「奴隷のように働かされ、障害者年金も横領された」などとして経営者らを相手どり約4500万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。経営者は現在、行方がわからないという。
4人は、32歳の男性1人と35~51歳の女性3人。定食類を出す札幌市白石区の「三丁目食堂」の調理室で調理や皿洗いを担当していた。
4人を保護して暮らしぶりを聴き取った弁護士によると、4人は食堂2階の部屋などに住み、毎日午前6時ごろ起床。仕事中はトイレに立っても怒鳴られ、午後10時ごろまで働かされた。食事は残り物ばかりで、調理室の食べ物を持ち出してしのいでいたという。
休みは月2回で、現金は週1回、銭湯代を渡されるだけ。入浴は休日しか許されず、下着は汚れたものをずっと使っていた。歯磨きも「仕事を始めてからほとんどしたことがない」といい、保護時は緑色の歯石がびっしりたまっていたという。
4人は長期にわたって恐怖感を植え付けられ、逃げ出すことができなかったという。親たちも知的障害があるなどの事情で、後ろ盾になれる状態ではなかったという。
弁護士の電話相談に事情を知る人から情報が寄せられたことから、4人は障害者施設に保護された。発見時は4人ともやせ衰え、繰り返し「早く食堂に戻らないと大変なことになる」とおびえていたという。
食堂の経営者らは4人の障害基礎年金の手続きも無断で行い、約2600万円を横領していた疑いもあるという。経営者は弁護士に「面倒をずっと見てきた。責められることはない」と話したという。
弁護士は「自己主張のすべがないのをいいことに、奴隷のような環境で人格をおとしめた。裁判を通じて警鐘を鳴らしたい」と話している。
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コメント
アカス紙器の事件が脳裏をよぎりましたよ。
大体、人間って完全に善意で物事を出来るほど出来たものではないってことを理解できないのですかね?規制緩和とか自己責任とかが大声で叫ばれるようになって以来、何故か篤志家や"目覚めた人"の善意みたいなのが持ち上げられていて、それで却って弱者を食い物にしたり不正がまかり通ったりしているって気がしますね。「学歴汚染」の小島茂氏の言を借用するなら、儒家の善意を信じて却って法家の現実が追いつかない様にも思えます。
>企業舎弟に位置づけられてしまった弁護士は、企業のない地方都市や低所得者の多いベッドタウンにはほとんどいない
首都機能移転の議論でもよく見られるのですけど、何か経済的中枢としての東京を繁栄させれば地方も食っていけるって論調って目立ちますよね。「ものづくり立国」を唱えて偽装請負が常態化していたシャープの亀山工場を持ち上げていたのが、東京に住んでいるエリートってのが如何にも皮相的です。
投稿: 杉山真大 | 2008.02.14 22:43