1/22 近江八幡市民病院がPFI事業で行き詰まり
公立病院の改革として注目されていた滋賀県の近江八幡市民病院が、経営難に陥っているというニュース。
「公立病院の非効率な経営」という言い方は、これまで集客能力と医師以外のスタッフの待遇が指摘され、民営化や民間資本の導入などが実験的に進められている。
しかしPFI方式の改革が、高知に続き高コスト体質になって問題を起こしているということは、PFI方式の公益事業に問題があるということを示しているのではないか。
PFI事業とは、公共施設や公共サービスのリースのようなものだと考えるとわかりやすい。自治体や国が民間事業者と契約し、民間事業者が資金を調達し、建物や必要なサービスを作り、一定期間自治体や国はそれを利用料を払って使い、住民サービスを実現する。一定期間経過後は、建物やサービスは自治体や国に移管される。民間資本を民間の自助努力で調達できるというのが効率的になれるような幻想を持たせるが、民間事業者には国や自治体のように入札を義務化されているわけでもなく、PFI事業の背景に、金融業者やゼネコンが入り込んでしまうと、自治体の利用料を狙うカモネギビジネスとなる。
近江八幡の場合も、市民病院の新築でゼネコンにやりたいようにやらせてしまったことが問題だったようだ。身の丈にあわないPFI事業費のツケを、市が市民病院に拠出する運営費に回されるし、今回契約解除を市は検討しているようだが、損害賠償や、民間事業者によるPFI事業の放棄などが行われ、何らかのかたちで市は実害を被ることは避けられないだろう。
●朝霞市も基地跡地の開発でPFI方式を採ると言っている。
朝霞市役所は社会的規制と民法的な所有権とを混同しているし、市民もそれで納得してしまっているから、一度PFI事業体が事業を着手すると「民間事業者が事業推進をしているので、その内容については市としては何も言えません」などと言って、行政責任や社会的規制の問題を財産権や所有権の問題にすり替えて言い逃れし、市民の見えない裏側で市役所とPFI事業体でやりたい放題のことをやって後から市民につけ回ししてくる可能性は高い。PFI事業体での仕事が始まった途端、どんなグレードの施設を作るのか、どんな経費をかけるのか、口出しできないと思った方がいい。市役所が情報の全面公開と、厳しいコスト管理をしていかない限り、基地跡地のPFI事業について市民は管理できないと言ってよい。もっとひどいことを想像すると、公務員が談合に関わったり見返りを受け取って業者選定をやれば犯罪になるが、PFI事業体の幹部が、談合をやらせたり、個人的な見返りをもらって恣意的な業者選定をやっても、相当な損害でも与えない限りは犯罪にはならない。民間業者は社内処分しかありえず、朝霞市民に対するコスト責任などまずないからだ。
シビックコアなど400億円もの事業を、市民がコストチェックできないまま、暴走していく可能性がないわけではない。近江八幡や高知のPFI病院の経営難を見ていると不安でならない。
民間資本活用「PFI方式」の病院が経営難 滋賀
2008年01月20日06時03分
自治体の財政負担を軽減する目的で、公共施設の建設や運営に民間資本を活用するPFI方式を取り、06年10月に開院した滋賀県近江八幡市立総合医療センターが経営難に陥ったことがわかった。改善策を検討する市長諮問機関が、市財政の破綻(はたん)の恐れが出てきたとして、民間とのPFI契約の解除を視野に入れた抜本的見直しを21日、答申する。内閣府によると、PFI事業は昨年10月現在で全国に290件あるが、解除されれば全国初。
センターは旧市民病院の老朽化に伴い、前市長時代の01年、PFIによる移転、新築を決定。設計から民間が関与し、建設・運営まで携わる全国初のPFI病院として、04年10月に着工された。
契約では、大手ゼネコン大林組が出資した民間会社(特別目的会社、SPC)が病院を建設し、所有する。開院から30年間、給食や滅菌など医療行為以外の業務を担った後、建物は市に無償譲渡。SPCとの契約総額は682億5000万円で、市は、市による建設、運営より56億円減らせると試算した。
しかし、開院から1年半となる今年度末、24億円の赤字が見込まれ、8億円の一時借入金が必要とされるなど資金繰りが悪化。市は昨年12月、冨士谷英正市長の諮問機関「総合医療センターあり方検討委員会」を設けた。
市長に答申される提言では、このまま放置すれば、13年度末には債務が約70億円まで膨らむと試算し、市が地方自治体財政健全化法上の財政再生団体(旧財政再建団体)に転落する恐れがある、としている。
経営危機の原因については、市側が毎年度の収支計画を十分に検証せず、採算ラインを度外視した豪華な病院をつくったため、と指摘。赤字でも、銀行などからの一時借り入れで対応できるという安易な認識で建設を進めたと推測される、と市を批判している。SPCと交渉して毎年4億円以上の支出削減が不可能な場合は、契約解除も視野に検討すべきだとした。
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コメント
伊関友伸です。
黒川さん、こんにちは。
近江八幡市の委員会の委員をしていた立場として一言。
>近江八幡の場合も、市民病院の新築でゼネコンにやりたいようにやらせてしまったことが問題だったようだ。
これは違います。
あくまで、PFIの設計をしたのは近江八幡市で、企業は近江八幡市の出した原案の中で提案をしただけです。
PFIを進めるコンサルの「魔法の言葉」に乗った行政が最も問題があります。
PFIに関しては私の書いた「まちの病院がなくなる!?」をご覧ください。
病院PFIと他のPFIでは問題の所在が違いますが、病院PFIの問題だけについては議論を詰めています。
現地レベルでは、もっと愚劣な政治的争いが起きています。
保守系の方と共産党の議員が、委員会の財政支出について監査委員に監査請求をして、住民訴訟になりそうです。
投稿: 伊関友伸 | 2008.01.26 12:56