1/30 暴力団が客を狙っても客が悪いという宿
●粟屋健太郎「昭和の政党」を読む。
政党政治の混乱から、政党の崩壊、大政翼賛会の成立と崩壊の過程を書いている。ところどころ歴史的経緯が前後するのが読みにくくさせているが、戦前の政党政治家たちがどのような行動を取ったががわかる。
また明治憲法の体制というのは、明治維新による権力構造の複雑さを前提としたシステムであり、政党政治の時代や、元老が機能しなくなっている時代に、衆議院、貴族院、内閣、天皇、枢密院、軍部とさまざまな権力が分立しかつ権力の優劣が不明確で、それらの上に乗る天皇は、天皇の代弁者たる明治の元勲たちがほとんどいなくなって調整力を失っていたということに、問題があると指摘している。実際に、内閣は1年ともっていない。
そう考えると、権力構造がきちんと明確になっている日本国憲法の体制の方が政治が安定した政治ができると言え、政治による社会の混乱が回避されてきたのも、偶然ではないと思う。
日本国憲法がダメで明治憲法の方が優れているという論者の中には、戦前の政治の方が、倫理的であるかのような誤解があるがとんでもないことがわかる。私利私欲、権力欲の渦巻く中で、政党がまともに機能せず、つまらないテーマで政争にあけくれ、「挙国一致」や不偏不党を掲げる軍部と官僚の連合軍による介入を招いたし、軍部や官僚も、抱き込んだのは、政党政治の中でも自らの権力欲のためなら何でもする最も悪質なグループであった。
本の中では昭和初期に、リヒアルトゾルゲによる日本の進路の予測が書かれているが、恐ろしく正確であることに驚く。
●粟屋「昭和の政党」の翼賛体制から、今の時代の問題をいくつか拾い上げることができる。
今の選挙制度、世界でも稀に見る禁止だらけの制度は、翼賛体制の準備段階で誕生したことがわかる。天皇に誓うための投票であり、政権選択や政策選択ではないというものである。だから選挙をやる人にうさんくさい印象を与えている。
政党に対する嫌悪感も、この頃の軍部やそれにすりよる人たちのプロパガンダでまき散らされたものである。
また、町内会が政権与党と行政の下部機関として選挙をやるようになったのも翼賛政治の時代からである。
翼賛時代の前段階では、警察が選挙分析をし、必要に応じて選挙介入もしていた。その名残が、今でも行われている警察による選挙情報収集で、その正確さは定評があると言われているが、政権与党中枢しか情報は入手できない。
さりながら、「きれいなファシズム」の翼賛体制が、ファシズムやナチズムのような強力な政治実績を上げたかというと、ただただ軍部と官僚にひきまわされていただけであり、ナチスの経済政策の成功のような成果は何一つ挙げてこなかったことも特徴といえる。
●日教組の教研集会の全体会議が開けないようだ。
今回、会場としてずいぶん前に受注して、土壇場で代替の会場も用意せずキャンセルするプリンスホテルの営業姿勢に問題を感じる。ウヨク企業としての嫌がらせだろうか。公的な責任を持たない企業姿勢は、不祥事以降、変わっていないのか。
日教組の教研集会にウヨクがやってくるのは、ちょっとした人なら知っている話であり、そんなことを知らないで受注したとも思えない。日教組も参加者にすら直前まで会場を教えないなど、慎重に運営をやっている。
ウヨクが問題行動を起こしたら、ウヨクに抗議すべきであって、被害者になりうる客にクレームをつけるとは、旅館業としてどうかと思う。
教研集会、開催できない?会場使用の見通し立たず
日本教職員組合(日教組)が来月2日に予定している教育研究全国集会(教研集会)の全体集会が、会場使用の見通しが立たず開催できない可能性があることが30日、わかった。
教研集会は、日教組に加入する全国の教師が年1回、教育活動の研究成果を発表する場で、例年、延べ1万人以上が参加する。今年も初日の全体集会には2000~3000人が集まる予定になっている。
日教組は昨年5月、「グランドプリンスホテル新高輪」(東京都港区)と会場使用契約を結んだが、ホテル側が11月になって、「必要な警備などについて十分な説明がなかった」などとして契約の解除を通告。日教組は12月に東京地裁に対し、契約解除の無効を求める仮処分を申請した。
同地裁は今年1月16日、日教組の会場使用を認める決定を出したが、ホテル側は決定の取り消しを求め、東京高裁に抗告。東京高裁が30日に抗告を棄却したが、ホテル側は日教組に対し、改めて「会場として貸すことはできない」と伝えた。日教組では「あらゆる手段を講じて交渉を続け、混乱なく実施したい」としているが、期日が迫るなか、開催できない可能性が出てきた。
一方、同ホテル営業戦略室は、「高裁の判断は尊重されなければいけないが、承服できない。都心で多くの右翼の街宣車が来ると大きな混乱が起こる可能性がある」としている。
(2008年1月30日22時52分 読売新聞)
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