1/20 ガソリン税の暫定税率引き下げを環境問題にからめるなら一般財源化せよ
ガソリン税について、政府・与党関係者から引き下げは環境問題に逆行するという発言が続いている。ガソリン税を低くすれば経済原理にしたがえばガソリン消費は伸び(少なくとも抑制されず)、化石燃料の消費が伸びるという理屈はその通りだと思うが、この問題で与野党がドンパチ始まって相当時間が経った今さら言うから取ってつけたような印象をぬぐえない。自民党が支持を受けている自動車・石油業界に配慮して言えなかったのだろう。
環境問題と抱き合わせに議論するなら、道路特定財源の一般財源化とセットで議論しなければおかしい。
ガソリン税が事実上国土交通省の独自財源になり、道路関係の官僚がその使途配分についての裁量権を握っている。独自財源をもとにした国土交通省の暴走が、環境破壊と、地方財政の破綻を呼び込んでいるという認識をきちんと持つべきだろう(朝霞市の基地跡地に作られるシンボルロードなる幅50メートルのムダな道路も半分はこの財源をあてにしているらしい)。道路特定財源の廃止の話と抱き合わせでなければ、環境問題と言っても説得力を生まない。
道路特定財源を一般財源化して、きちんと国家予算として民主的な管理のもとにおくべきだろう。もちろんそうなれば、これまで道路特定財源で行われてきた道路建設や維持の支出も、当然一般財源からの支出があり、ということになる。また道路建設の分権化を進めるためにも、一般財源化や、自民党の族議員が声高に「地方との格差」を持ち出すなら、むしろ地方交付税財源化などを検討されなくてはならないはずである。道路建設で地方との格差を埋めるのは、あまりにもまどろっこしい。地方の建設業界など元金持ちに上前をはねさせて、地方のワーキングプアに当座をしのげる仕事を作っているだけである。それならここ数年大きく絞り込んできた地方交付税財源を復元し、自治体が自由に事業をできる余地を大きくすることが先決だろう。
一方で、民主党、社民党、公明党が主張している暫定税率の引き下げはどうかと思う。しかし今さら国民に大盤振る舞いの公約を、テロ特措法の次の主要な争点にしてしまったから、採決でいまさら態度変更できないんだろうなぁ。
ガソリン価格が高騰しているので税金で何とかしたいという気持ちはわからないでもない。しかし一方で、税収の欠損を埋めるのに景気回復の自然増収しかあてにできない状況は、誰が政権を担当しても、数年以内には消費税他、何かの税金を上げなくてはならないだろうと言われている。その上、年金以外の社会保障関係の財源不足で人材流出がおき、制度の空洞化をひきおこしている。景気回復して財政的に少し余裕が出てきた今、中川昭一のようなバカな政治家が、さらなる財政出動をなどと言ってもいる(これは明らかにたかりである。景気のよいときやインフレ状態にあるときに財政支出を膨らますことが、景気後退期に国債償還を迎えたり、政府によって景気を過熱させるデメリットを考えろと思う。景気低迷やデフレ状態になったら国債発行できる状態にしておくぺき時代に入っているのではないか)。
そんな中で、ガソリン税を下げて、消費税を上げるということになると、誰が得して誰が損するのか。最も損するのは、自動車免許を持たない高齢者や免許取得ができない目や耳や手足、判断能力に障害のある人である。インフラ部分についてすべて自腹を切っている公共交通利用者、とりわけ全額、事業者負担で事業が行われている地下鉄以外の鉄道、それを利用しているサラリーマンや高校生も、その被害者となる。
そういう点では古賀誠氏が「国民に喜んでもらえるところだけを発信し、政治のあり方をゆがめる論議は許すべきではない」と批判したのは正論だが、一方で、古賀氏が主張する今のガソリン税の使途のあり方を放置することは国土交通省の官僚と道路に群がる国会議員に喜んでもらえるところだけに発信しているとしか思えない。
「ガソリン価格下げたら、環境不熱心な国の烙印」官房長官
町村官房長官は19日、千葉県市原市で開かれた自民党衆院議員の会合で講演し、民主党などが求めている揮発油税の暫定税率廃止について、「ガソリンの値段を下げたら、日本は『環境問題に不熱心な国』という烙印(らくいん)を押される。国際的な評価は取り返しがつかないものになる。税収が減れば、国と地方自治体は一段と借金経営の度合いがひどくなる」と述べた。
自民党の古賀誠選挙対策委員長は19日の福岡県大牟田市での講演で「国民に喜んでもらえるところだけを発信し、政治のあり方をゆがめる論議は許すべきではない」と民主党を批判した。
揮発油税の暫定税率維持を含む租税特別措置法改正案については「年度内に成立させなければならない。今の生活だけを考えるのか、50年、100年先の街づくりを考えて議論するのかが問われる」と強調した。(2008年1月19日23時54分 読売新聞)
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