1/12 自治体議会の定数削減をバナナの叩き売りのようにやるなら自治体議会無用論になる
埼玉・松伏町で住民の請求した議員定数削減案が議会で否決された。
すでに2005年に議会提案で定数を20人から15人に削減しており、数の感覚的なものからは妥当な結論だと思う。
この中で考えさせられることがいくつかあった。
議会定数削減の提案者たちである。各地でこの手の行革運動を推進している住民が、どうも共通しているように思う。高齢者男性で、さして生活に困っていなくて、資格職や大企業退職者だということが共通していること。こうした属性の人が地域社会に関心を持つときに、生活の場ではなく政治闘争の場と捉えていることが少し心掛かりである。
2005年に議会が町民との意見交換を行わずに一方的に削減を決めてしまったことが今回の提案になっているようで、やはり議会も自分たちが選挙一発で全権力を委任されたと考えずに、議会として市民参加の方途を考えるべきだろう。でないとこうしたバナナの叩き売りみたいな定数削減が次から次に提案されてくるだろう。
それから議会の定数削減について、何も理念がないことが不安である。
いくつに減らしたらいいのか、そういう根拠となる論拠がないと、減らすことのメリット(代わりに浮いた財源で議会事務局の強化や議員報酬を上げて議員の質を高めるなど)を提示できないと、行く末は議会不要論にしかならない。
議会の機能が大してないと感じているのであれば、議会強化の提案なき定数削減論者はいっそ議会不要論を立てて政治闘争を行うべきではないかと思う。民主主義の敵とか言われるのが怖いのだろうか。議院内閣制の国会はともかく、首長がおり、自治体の各施策で市民参加が進み、日当で議員より専門的な議論ができている状況を見ると、会派が分立しているとか、少数与党とか、議案の可否に流動性のある議会でもなければ、議会の政策決定機能は著しく低下していると言わざるをえない。
朝霞市でも自治体議会が行政や市長の暴走に歯止めをかけられない状況というのが目立っている。どうせ市長が提案する議案は可決され、市長に対立する議案は否決される。最初から決まっている。議論の結果で何かが変わるというリアリティが感じられない。
そういうことからすると議会が税金のムダ遣いであるという感覚はわからないでもない。保育所、子育て支援センターなど様々な現場業務を担っている自治体の非常勤嘱託職員は、議員と報酬支出根拠法が地方公務員法3条3項3号で同一である。議員に報酬を値切られる非常勤職員たちの感覚の中で、ワーキングプアである自分たちの方が仕事しているという感覚もあるだろう。
だからといって議員歳費が税金のムダだとなれば、歳費を廃止することになるが、今度は金持ちや土地持ち、大企業労働者の専業主婦、宗教団体の感覚だけしか物理的に市政に参加できず、その感覚だけで自治体の政治を動かしてしまい、恣意的な税金の使用がひどくなる問題が起きる。それなら自治体議会など廃止してしまうこも考えたっていい。市政の混乱を恐れて行政府への監視ができない議会なら、かえって議会の廃止で問題が起きる部分は少ないだろう。市職員にも変な要求がつきつけられなくなり、いいのではないかと思う。
私は自治体議会が必要だという立場だが、今の多くの地方議会のようなあり方ではダメで、議論の仕方、記録の残し方、発表の仕方、市民との関わりの持ち方、議員の位置づけと報酬のあり方、果ては選挙制度に至るまで、さまざまな改革を試みる必要があって、定数削減で税金を浮かすことだけでは、民主主義の劣化に手を貸すだけになると思う。
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コメント
そう言えば、自分の地元(茨城)でも定数削減で直接請求しているのは、決まって地域の区長なんですよね。しかも区長と言うのは一般の自治会長と比べても日当とか貰ってたり公式・非公式に自治体の幹部と会合を持っている。そのくせ、その選出って殆どムラの論理なんです。
確か、(今は合併して鉾田市になりましたが)昔の旭村で村長が汚職で捕まって議会が徹底的に追及しようとしたら、区長が中心となってリコールを起こして自分たちの都合のいい議員を送り込んだって話もありますしね。何かこういう動きを見ていると、怪しさ爆発って気がします。
ところで地方自治法では、町村だと議会の代わりの町村総会を置くことができるみたいですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BA%E6%9D%91%E7%B7%8F%E4%BC%9A
平成の大合併で自治体が大きくなった現状では、非現実的かも知れませんけど。合併で自治体を大規模化すべきかって議論と併せて、考えるべきかも知れませんよね?
投稿: 杉山真大 | 2008.01.12 12:19