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2008.01.13

1/12 社会保障に関する国民会議を塩じいにやらせていいのか

福田首相がスウェーデンのような政治合意で年金改革を進めようと設置した社会保障に関する国民会議の座長に塩じいを起用することを決めたという。

こりゃダメだ、と思う。塩じいが社会保障制度に精通しているとも思えないし、与党案を強行するか、パッチワーク的改革にとどまるんじゃないかと思う。

また塩じい、トヨタの奥田、連合の高木と、年金もらう寸前の地位のあるおじいさん世代ばかりで、今の年金制度の矛盾をもろにかぶっているロスジェネ世代の課題をどう取り込むのか、という展望が感じられない。少子化子育ての課題でも児童手当を増額すればいい、という安直な考えに飛びつきそうだ。

それと政治合意なら、自民党、公明党、それと今回断られた民主党だけではなくて、社民党や共産党も出て、政争のドンパチとは一歩距離をおいた政策実務者どうしでやらなくては意味がないのではないかと思う。

また年金運用金の権益に近い人たちの利害をどのように排除して、社会構造の変化にあわせた年金改革をやるという保障が何もない。

また、連合から支持されたからといってこの国民会議の結論を政治の場で強行したりすれば、当然、年金改革はまた信用を失って、やり直しをせざるを得なくなる、ということも忘れてはならない。

●児童手当増額論者はフランスの例をいつも引き合いに出すが、フランスは自分で子育てすることは卑しいことだという感覚の強い国で、お金を与えれば育児を簡単に外部化し育児の負担感を回避する国である。それに対して日本は、育児において実の親、とりわけ母親のかかわりを非常に重視する国で、必要があっても保育所の利用を控える国である。そんな国に児童手当をばらまいても、私立中学や高等教育の費用として溜め込まれるだけで、少子化対策には全くつながらないし、育児の負担感を軽減することにはならない。最悪の場合、住宅ローンの返済やワンランク上の高級車の購入資金に使われるし、良くて、高等教育への経費補助になり、さらに子育ての負担感を強めることになる。
日本では、育児の負担感を軽減したり、育児の一部外部化につながることが見える対策を打たなくては、現金をばらまいても、子育てが家庭内で窒息して、子どもはこりごという家庭を増やすだけだ。

また保育所増設の方が、現金ばらまきより4倍少子化対策に有効という原田泰さんの論文もある。

こう書くとなぜ今の親はそんなに育児が負担なのか、という質問をいただく。しかし、求められるしつけ、教育水準、子ども社会が無くなって大人社会で恭順させるための努力、そうしたものから昔のように表に出しておけば近所の子どもどうしで遊んでくれる時代ではないのだ。一方で、子育てしている親たちの窒息状況に比べて、子なしの人たちが深夜まで働いて生き甲斐を感じ、深夜まで遊び歩いて文化を高めている、という取り残され感もある。

クルマも大型スーパーも規制して、高卒で立派に就職できる、昭和30年代のような社会を取り戻せば、負担感はそんなになくなるだろう。

社会保障に関する国民会議、塩川元財務相らメンバーに
 政府は、年金制度などの社会保障政策を議論する「社会保障に関する国民会議」のメンバーに、内閣特別顧問の奥田碩・前日本経団連会長や塩川正十郎・元財務相、高木剛・連合会長を起用する方針を固めた。

 学識経験者らも加え、十数人で構成する予定だ。月内にも初会合を開く。

 同会議は福田首相の主導で設置されるもので、年金、医療、介護、雇用、子育て・少子化対策など、幅広い観点から、社会保障制度改革の在り方を議論する。秋までに最終報告をまとめ、年末の税制改正などに反映させたい考えだ。

 首相は国民的な合意形成を目指す立場から民主党に参加を呼びかけたが、拒否されたため、与野党関係者の起用は見送る方向だ。

(2008年1月12日21時44分 読売新聞)

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