12/8 道路特定財源をめぐる俗論
道路特定財源の議論が迷走している。抵抗勢力やそれに結びつく特定の業界団体、特定業種の労働組合が振りまく俗論に国民は振り回されている。
民主党の直嶋政調会長など、自分の立場を何だと思っているのか。政調会長として政策とりまとめの立場にありながら、民主党の主張と正反対の道路特定財源の堅持をあちこちで語っている。自動車関係の労働組合の組織内議員という立場もあるが、他の労組の組織内議員でここまで自分たちの利害だけで動く議員は珍しい。
目的税というのは、政策効果の因果関係が明確で、かつ特定の政策を強力に推進しなければならない場合以外は極力取るべきではない。
自動車の場合、生活必需品という声もあるが、一方で娯楽性もあり、逆な立場では自動車の増大が公害や、公共交通や物流輸送を迫害するなどの問題も起こりうる。
そういう意味では、われわれの払った税金はわれわれのためだけに使えという自動車関係団体の要求はエゴもいいところだと思っている。
これは酒税やたばこ税が目的税でないことを考えるとよくわかる。酒税が国営バーの整備に使われているなどというバカな話はありえない。
さらに税制で考えると、税金は国民の意思決定のもとで動かされるべきである。そもそも議会というのはそのために発足したものだ。それが目的税というのは、国民全体の合意によるコントロールの外に置き、道路業界だけで予算をやりくりできるということである。これに納税者が怒らず、むしろ道路業界や自動車関連業界に一緒になってかれらの権益を擁護することがあほくさい。
ガソリンが高くなっているから下げろというバカな意見もある。ガソリンが高くなったのは、ガソリン税の問題ではなく、石油の埋蔵量の不安と、それに過剰に反応している投機マネーの問題である。そのツケを、800兆も赤字国債のある政府財政で尻ぬぐいするというのもずいぶんおかしな話である。生活が苦しい人も豊かな人も一律にガソリン税を減税して戻すなどというのは愚策に等しい。豊かな奴ほど、燃費の悪いマイカーを使い、趣味や道楽に乗り回している。目先の利益に囚われてはならない。貧しくて交通手段に恵まれない人がいるなら、それはその人のための政策を採用すべきである。
ガソリンの絶対価格が高いか低いかというのは感覚の問題だと思うが、地方暮らしをした身からすると、地方のバス運賃に比べれば今のガソリン代も屁みたいなものだ。クルマを余分に乗り回さず、できるだけ歩き、できるだけ公共の乗り物を使う、そのことが地域の力を取り戻すことにもならないだろうか。イオンなどの大型スーパーが誘導して郊外に無秩序に広がったまちづくりも、ガソリンをバカスカ安く浪費できたから進んだことである。
暫定税率だから下げろ、という最もらしい意見がある。しかし暫定税率といっても、これは過去の自民党政権が国民に負担増を求めるときのパッチワーク的な対策であり、30年以上それが継続したことからもはや暫定という質はなくなっている。暫定税率を下げるまで、道路特定財源をいじってはいけないという議論も誘発していて、そんなことをすれば残った道路特定財源だけでは道路建設ができないことから、今以上に一般財源から道路建設にお金がつぎ込まれることになり、かなり問題の多い俗論である。
ガソリンを使いまくっていいことはない。環境汚染、騒音、それから交通事故である。国や自治体が負担する交通事故の処理費用がガソリン税で負担されているかと言えばそれはない。一般財源である。電車に乗っている人は、インフラ費用は乗るたびに払う運賃で負担しているが、自動車に乗っている人は、道路使用料を払っていない。すごく不公平である。道路使用料としてのガソリン税と反論する人もいるだろうが、それとて道路建設費の国負担分に限った話で、地方負担分の半分は、一般財源から拠出される地方交付税から出ている。しかも自治体は借金させられて。
こうした俗論を排して、クルマと社会の関係を基本から捉えなおして、目先のガソリン価格に目を奪われた対応はすべきでないだろう。とくに趣味的色彩の強いガソリン税は暫定税率を維持した上でそれを正式な税率と修正し、一般財源として国民のコントロールのもとに置くべきである。その上で、一般財源の中で道路をどの程度造るか、国会や地方議会で議論すべきである。
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コメント
>>豊かな奴ほど、燃費の悪いマイカーを使い、趣味や道楽に乗り回している。
東京のマイカー保有率と地方の保有率を比べると、東京の人ほど車ではなく電車を利用していることは明らかだと思いますが。
投稿: a | 2007.12.08 13:13
誤解招く表現でした。すみません。
マイカーに頼らざるを得ない田舎でもそうでない都会でも、金持ちほど排気量の大きいクルマを乗り回しているという意味です。そういう意味で金持ちがガソリンを貧乏人より食べるわけで、それを減税すると、金持ちほど効果が高いということになります。これは格差を助長するという意味です。
投稿: 管理人 | 2007.12.08 14:29
それは調査結果があるのですか?
燃費の違いが2倍程度で金持ちの人の方がガソリンを圧倒的に消費するとは思えません。
マイカー保有率はトップの茨城は1世帯あたり5台以上でしたが、東京は0.2台くらいだったと思います。もちろん東京は1世帯あたりの人数が少ないのは承知していますが。
投稿: a | 2007.12.11 00:45
aさんの質問の意味がだんだんわからなくなっていますが、ひょっとして、東京の人=金持ち=排気量の大きいクルマを乗っている、田舎の人=貧乏=排気量の小さいクルマに乗っている、と固定観念をお持ちで、私がそれを前提に話を進めていると勘違いされているのではないでしょうか。
どこに東京と田舎の対立でこの話を私は書いているか逆に指摘してみてください。
調査も何も、排気量の大きいクルマは、金持ちじゃなければ買えないということです。ガソリン税が金持ち徴税であってはいけないと思いますが、逆に減税することで金持ちが燃費の悪いクルマにわざわざ乗っている人間を優遇する必要はないではないか、という問題を言っています。
もちろん例外もあって貧乏人で排気量の大きいクルマを買っている人がいるとすればそれはもはや嗜好の問題で、そこでガソリン税をたくさん負担していただくのは自業自得でしょう。それをいかんというなら、貧困地帯で行われている生活改善運動で是正するしかありません。
道路特定財源の問題では、使途については問題にしようとは思いますが、格差問題にからめるつもりはありません。ガソリンを使う人はガソリン税を払い、ガソリンを使わない人は払わなくてよいということで十分だと思います。
物流格差や公共交通の格差については、トラックやバスの燃料の多くは軽油であり、軽油引取税なので、これについて私はもう少し減税していいんじゃないかと思っています。
それから東京と地方の格差の問題については、ガソリン税をこちょこちょいじって是正すべき問題ではなくて、税収構造全体の見直しや地方交付税のあり方の改革が必要だと思っています。これは別途に書いていますので、ご覧ください。
投稿: 管理人 | 2007.12.11 20:59
金持ちの定義の違いが原因ですね。
「東京=金持ち」は固定観念ではなく、事実だと思います。平均年収は田舎に比べ明らかに高いです。全人口の内、大多数を占める年収1千万以下レベルでの金持ち、貧乏の話しで言えば「東京は金持ちが多い」と思います。
ただ、全人口のうち上位数%レベルの金持ちの話だとそうとは限らないかもしれません。しかし、排気量の多い車に乗るかどうかで考えれば、そこまでの金持ちでなくても良いと思われます。
ですので、「東京の人=金持ち=排気量の大きいクルマを乗っている」は間違っていないと思います。しかし、東京の人はそもそも車の所有率が極めて低いということです。
投稿: a | 2007.12.16 17:50