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2007.12.07

12/6 横浜市役所が消防団に市長のパー券をあっせん

さきの朝霞市議選で、町内会が選挙をやっていることに対して問題はないかということを、町内会の育成をやっている市民環境課と選挙管理委員会に問い合わせた。
公選法上は問題ないということと、行政サービスを代行する部分の多い町内会が特定の候補者の票のとりまとめをすることに問題はないという回答を受けた。

しかし、やはりひっかかるものがあった。実は、私立学校への助成金をめぐって、以前から憲法問題があることを思い出した。高校時代に、私学助成の補助金署名をしきりに要求する共産党系のグループがいて、それに対してしっくりこない思いをしていたときに、これが憲法89条をめぐる論争であり、憲法改正をめぐる論点の一つでもあるということを知った。道路や福祉への補助金と異なり、その使途には大きな裁量が持たされ、当時の私学の経営者の多くは所得が高く、学校法人を使って様々な便宜利得を得ていたことからも補助金としての性格に問題を抱えている。

第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

公の支配に属さない団体つまり政府と地方公共団体と国策会社以外は、公金によって支配されるようなことがないよう要請する条文である。
旧教育基本法においては、公教育は個人のためにあり、国家教育ではないという建前があるため、私学に対して補助金を出し、教育内容について国が介入することに問題がないと理解されている。しかしそれでも憲法的疑義は消えず、憲法学の題材に鳴り続けている。
その程度までに私学への助成金が問題になるなら、本来住民自治組織である町内会などが、公金を受けて活動することにより行政の下請け機関となることがどうか。もしそれが仕方ないことだとするなら、行政の下請け・手先的な要素が強い町内会が、特定の市議候補を応援して具体的な集金や集票活動を会員に指示することは、行政機関が住民に対して特定の候補を応援するように働きかけていることに近く、やはり問題となるのだろう。たまたま法規制がないだけである。

そんなことを思っていたら、横浜市でとんでもない話が発覚している。
市役所が消防署を通じて、消防団員に中田市長のパーティー券を斡旋していたというのである(中田市長の毀誉褒貶はいろいろあるのでここでは論じない)。
これはもはや公務員が単に政治活動や選挙活動をやっているという問題を超え、監督官庁がその影響下にある市民に半ば政治献金の集金を求めており、地位利用にほかならない。

横浜市の消防団!という言葉にひっかかるものがあった。昨年3月に起きたあることを思い出した
私はこの春、休日を使っては横浜市港北区で立候補した友人の選挙前の政策宣伝活動を応援していた。それは告示前の最後の日曜日であった。東横線のH駅前で消防団の一員だと名乗る人に、いわれのない法違反を指摘され、法違反ではないと言うと、大声で邪魔され、警察が呼ばれ、最後には、ここは誰某の縄張りだ、地域の活動もしていないお前なんかが偉そうに演説するんじゃない、と2時間にわたり妨害をされた経験があって、そのことを思い出した。

今だからわかったことだが、消防団の一員である彼こそ、中田市長の与党の一翼を担う政治勢力を応援し、応援するだけならともかく、行政機関の手先とも言える人間が中田市政に批判的な候補を妨害して歩いていたのだ。そういう人間を消防車に乗せて国民の生命と財産を預けている自治体があるかと思うと恐ろしくて仕方がない。

消防局がリスト 購入割り当てか 横浜市長パーティー券2007年12月07日07時36分朝日新聞

 横浜市の中田宏市長を支援するために05年に開かれた政治資金パーティーの券を、市の消防署員が窓口となって消防団幹部が大量に購入していた問題で、全消防署の購入依頼枚数を示すリストを、市消防局(現・安全管理局)が作成していたことが6日、朝日新聞が入手した文書などから分かった。市は強制的な販売を否定するが、消防団側へ割り当てた形になっている。出先だけでなく局ぐるみの関与となると、政治資金規正法(公務員の地位利用の禁止)に触れる疑いがある。

 また04年4月にあった中田市長の政治資金パーティーでも同様の方法で券が売られていたことが、新たに分かった。300枚の依頼に対し、「300枚弱売れた」(安全管理局)という。

 入手した文書は「横浜を発展させる集い参加依頼数」。市内21の消防団幹部の役職と人数を示し、計250枚の割り当てが記載されている。

 市安全管理局によると、この文書を作成したのは市消防局総務課の消防団係長(当時)。04年のパーティーでも同様のリストを作っていた。元係長は「消防団長会の会長、副会長に頼まれて作って渡した」と説明しているというが、市はリスト作成の流れについて調査する方針だ。

 市安全管理局は「局本部の人間が関与していたことは不適切だったが、地位を利用したあっせんではないと考えている」としている。

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コメント

中田市長は何やってんでしょう?

毀誉褒貶の中身を知りたいです。「改革派」市長の本当の顔はどんな顔なのか。
(週刊誌の報道は本当なのでしょうね)

投稿: 一国民 | 2007.12.09 09:00

毀誉褒貶の中身についての事実関係はわかりませんし、中田氏については、何の因果もありませんから、コメントはしません。町田市長選挙に関して、自公推薦の候補者が元横浜市職員だったとかで、副市長が庁内で献金集めをしていたことが摘発されたことがあります。中田氏は献金集めのやり方に少しルーズなのかも知れません。

しかし今回の事件は、どんな改革派の首長のもとでも、こういうことがありうるという見本です。

特に、町内会、消防団、子ども会、PTAなど半ば役所の出先機関のように受け止められ、実際に代行業務のようなことをし、しかもそこに恭順しないと様々な生活上の問題を引き起こしてしまう団体が、現職候補の政治活動や選挙運動の支援をしてしまいがちです。その背景にあるのは、第1に選挙規制が戦前の翼賛政治体制と二人三脚でスタートしたものだからではないかと思っています。選挙規制は官僚体制による住民コントロールの色彩が強く、翼賛政治体制が隣組を使いながら市民生活の中で市民の政治的な動向を監視し、異色のものを抑圧する機能を果たしていたからです。その隣組の後身が戦後、町内会と消防団となって発展します。戦前ほど露骨ではありませんが、自民党議員の集票組織の踏み台になる傾向は避けられていません。
政治活動や選挙運動の規制や偏見が強く、紹介者もない人に無差別にダイレクトメールを送ってはいけないだとか、支援者を自由にさがして組織化するには膨大な手間をかけなくてはならないからです。
もちろん、町内会、消防団、子ども会、PTAなどを運営する側も、やはりそこは自重が求められるのではないでしょうか。
選挙で特定の候補を応援したいというなら、まずは自治体の下請け業務的なものとの関係をきちんと整理しておくべきです。
議員の口利きや市職員の裁量で補助金の変わるような業務は返上すべきです。また町内会やPTAがメンバーに不利益を蒙らせることができるような業務や権限について、メンバーにそれを利用して選挙や政治活動に参加させることについて一線を引くべきです。
手続き論としては、別候補を応援することを容認しながら全体会で支援を投票で決めたり、業界団体や労働組合が取っている組織合意のダンドリを踏むべきでしょう。

投稿: 管理人 | 2007.12.09 23:09

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