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2007.12.03

12/3 朝霞市議会議員選挙の感想と分析

昨日、朝霞市議会議員選挙の投票と開票が行われて、選挙が終わった。

●全体の投票数と投票率が相変わらず低い。37916人(+405)、投票率が38.45%(-0.75%)で終わる。
今回は新人候補が大量に出たことと、基地跡地の国家公務員宿舎建設という大きな問題が出てきたので、新たに投票に行く人を候補者陣営が掘り起こすかと思っていたが、結果としてその影響はわずか400票強投票者数が増えただけである。特色のある新人候補者が少なかったと言える。
全体数だけ見ると、投票に行く人は行くし、行かない人は行かないという相変わらずの選挙である。ただし町内会など、既存の議員の集票組織が弱体化していると言われている中では、投票数の目減りが新たな票で相殺されていると見ることもできる。各候補者の票の増減を見ていくと原因が見えてくるのではないか。

●基地跡地に26階建ての国家公務員宿舎建設と、400億円(うち市負担が3分の1から2分の1)の見返り周辺施設の建設に異議を唱えた7人の候補が全員当選し、共産党の2人以外は上位当選していることから、一定の民意は見られたものと思われる。
ただし、基地跡地に国家公務員宿舎の建設反対運動している側が、候補者をもう少し立てていなかったことが力不足と指摘できる。

●町内会など地縁によって支えられてきた保守系無所属候補が苦戦している。半ば強制加入の組織を利用した候補者は全国的に弱体化しているといろいろなところで指摘されているし、先の統一地方選挙でもこうした候補者が苦戦したり、ところによっては町内会代表で保守系会派を形成している自治体議会で、その会派が第一党や過半数を手放すことが起きているが、朝霞でも同様の傾向が見られた。

●立候補者たちの市民への説明責任があまりにもなかったと言える。各候補者陣営の公示日前の広報活動は不十分かつ出遅れ、政策論争が満足にされていなかった。重要な政策課題であった基地跡地利用について、保守系無所属の議員がだんまりを決め込んでいたり、公報で「有効利用」というあいまいな表現で、対立している問題をぼやかすことに終始した。その副作用として、保守系の中でただ1人、市の基地跡地利用の方針に鮮明に異議を唱える神谷氏がトップ当選している。

●公明党は、1候補1400票の最低票を確保し、投票率が6割程度に上昇しても5人全員当選させる力を持っていることを示した。さらに篠原氏、利根川氏は、さまざまな日常活動の積み重ねで票を上積みし上位当選している。党の合計得票も700票増やし、8400票にもなった。これまで公明党票さしたる増加はなかったので、大きな変化と言ってよい。
いただけないことが一点。アンケートも回答しない、事前の政策ビラも配らない、とだんまり選挙をやってきたのに、選挙公報では議会改革と書いている。基本的な説明責任と公開性のある活動をすることが、議会改革の第一歩ではないだろうか。書いたからには、一緒に与党を組む前近代的な体質の会派をきちんと説得して、真剣にやってもらいたいと思う。

●一方、共産党は、今回候補を3人に絞ったことで、500票以上、合計の得票数が減少している。4月に行われたばかりの県議選で共産党が約4500票獲得していることを考えると、明らかに票の掘り起こしが不足していたことを示している。
過去から、3人立てると3300票~3500票、4人になると4200票~4500票となる。今回引退した松岡さんが持っていた票を堀内氏を中心に他候補に振り分けたが、その効果が出てるのは石川氏だけである。また、各候補ごとの票数のむらもあり、意外にも候補者陣営に依存した選挙体制であることが明らかになっている。県議選に出たり3人に絞ったり全体的な戦略を見直してはいるが効果が出ていない。

●民主党は唯1人の公認候補が上位当選するのは当然だろう。しかし、衆議院選挙で1万票以上出す政党が地方議会で1人しか公認候補を立てられず、2000票弱しか票を取れなかったことは、候補者自身の問題ではなく、民主党と地域とのコミュニケーション能力に問題があると見て良い。特に候補者擁立ができないということは最大の弱点である。国政の民主党をイメージし立候補を希望した人たちと、この地域の民主党の実態、やっていること、自治体での政策それらがズレまくっていることに原因がある。

●「市民派」と呼ばれる、市民ネットと小山氏は今回上位当選した。合計数では、1800票から4500票に伸ばした。田辺氏は前回約900票で不安要素があったが県議選に出た効果が見える。これまでずっと下位当選だった藤井氏は、手堅い票ができてきているのではないか。小山氏は政策が鮮明であった。また市の基地跡地利用の案に不満を持つ人が多い朝霞駅周辺を地盤にしたことが、朝霞台周辺を地盤にする市民ネットの2人と棲み分けに成功したのではないか。

●新たな市議たちによる会派(議会内の党派)構成が今後流動的になる。特に保守の側が大統合があるのか再編があるのか見物である。
今回、自民党県議を父に持ち、他の保守系無所属がだんまりを決め込む国家公務員宿舎建設の問題にノーを明快に言った神谷氏が台風の眼になるだろう。他の保守系無所属候補全員から目の敵にされてしまい、当面は孤独な闘いが強いられる。基地跡地利用をどうするかということは01年の塩味対渡辺の市長選挙で保守が分裂したときの政策対立であったわけで、簡単に保守が市役所の案ですっきりまとまって進むということはない可能性もある。
第2保守会派だった拓政会が3人から獅子倉氏1人だけとなり、どうするかという課題も出てきた。
また民主クラブも、もともとは市長が市議にいた頃に所属していた会派を母体にしており、実質的には与党第1会派の役割を果たしている。国政選挙の人脈の対立がどの程度市議に影響するかわからないが、国会議員や県議会議員たちによって、すっきり2つの保守系の会派として棲み分ける力学が働くことも考えられる。
保守系無所属候補で会派を決めていない人もおり、その人たちを巻き込んで、保守系会派の再編成は避けられないのではないかと思う。
もう1つは小山氏が、市民ネットに入るか入らないかということである。これは会派構成に大きな影響はないが、市民ネットの会派に入れば、共産党などと市議会第3会派の地位を得られる。ただしもう1つは基地跡地の問題で当面の間は、神谷氏と共闘するということも選択肢として考えられるだろう。

●肝心の市政への影響だが、個々に特徴を見れば変化はあるものの、議席配分が大きく変わったということではないので、市役所は市議選の結果の変動をほとんど無視するだろうと思われる。
しかし、底流では少しずつ変化は起きるのではないかと思う。
災害だ何だと言っても、町内会を通した住民の動員と組織化は、これまでのような機能は果たせなくなる傾向は否めない。町内会=後援会型の保守系無所属候補が軒並み苦戦した結果に現れている。広く市民全般に網をかけて意見反映をはかっていく市政運営をしないと、マグマは溜まる。情報公開や計画段階からの参加が後ろ向きに動いているがこれは明らかに危険である。
また、具体的に、26階建て国家公務員宿舎が建ち、緑や自然が多いとマンションを掴まされた住民が目の前から景観を奪われたとき、さらに見返り事業での大型公共事業と、その裏側にある市債の増加をもって財政事情が悪化して住民サービスを切り下げたとき、大きな反乱となる可能性もないわけではない。

●あと、「朝霞生まれ朝霞育ち」とか「朝霞を愛して●年(=彼女いない歴生まれた時からの年数)」とかいうスローガンを選挙カーで絶叫している候補もいたが勘違いも甚だしい。自己陶酔ですね。今の50代で朝霞生まれ朝霞育ちは少数派である。50年前の朝霞市の人口は今の10分の1である。地縁をベースにした人か土地持ち既得権益者と言っているに等しい恥ずかしいスローガンである。
政治業界では、こうしたことが人間の価値の高低を決めるのかも知れないが、こういうことを言われると、ベッドタウンとして住みついた多くの新住民は不愉快な思いをすることをわからないことがおかしかった。

●どうでもいいことだが、今回個人的に接点のあった候補の事務所に立ち寄ったら、隣の公明党のポスターの貼っている商店の関係者が笑顔もなく「おめでとうございます」とやってきて、事務所の中を舐めるように見て「まだ当選お礼の挨拶を受けていない、うちは10票出した」と言われる。見返りの匂いが立ちこめる。これ選挙違反の誘導でもある。無視すると、悪評まきちらしたりするんだろうな。
入れたかどうだか候補者には確かめようがないからねぇ。本当に入れていたら、もっと早く何か言ってくるんだよなぁ隣にいる人間はふつう。圧力がましい言い方するなら、店に貼っている公明党のポスターは何ですかね。候補者の立場が弱いことを百も承知で、しかも弱い候補に見返りを暗に要求する人、どこの選挙行ってもこういう人は必ずいますね。でもそのわけのわからない10票のために何かすると、選挙に出た大義や清潔な人間関係を失い、何百票も失うことだってあるということを考えなくてはならないのだ。

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