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2007.12.11

12/11 自治体の法人税収について考える

東京と愛知に集中する法人税の分配をめぐって、一番良くない決着の仕方をしたように思う。

東京都や愛知県が法人税の一部を拠出して、財政力の弱い道府県に分配するというもの。ここに官僚の差配が入ってくるから本当に心配である。
さらに東京都は、羽田空港の国際線の開放や、外郭環状道路の建設について国の支援を引っ張り込んで、焼け太りの匂いすらある。
羽田空港の国際線の開放については、私は疑問があって、渋滞道路か山手線のようなホスピタリティーに欠ける公共交通を使わなくては行けないような空港を、重い荷物を担いで旅する人の空港としてふさわしくないことと、国内線でも渋滞で定時運航ができないのに、この上国際線まで入ってきたら、たまらないという感じがしている。ますます地方の整備新幹線建設促進運動も加速されてしまうだろう。
高速道路を結ぶ環状道路やその抜け道道路がひどい渋滞にあることから、多くの市民運動家と違い、外郭環状道路についての必要性は私も感じているし、国も何らかの支援をすべきだと思うが、しかし税制と取引するのはどうかという思いもある。

●NHKの朝のニュースがこの問題で特集を組んでいた。
愛知県の財政力が良い村を取り上げ、法人税と地方税を交換すると、この村の税収が下がり、今までのサービスが提供できなくなる、という報道をしていた。で、今までのサービスとは何ぞと思って見ると、民営の温泉を税金で買い取って、高齢者に無料開放しているというのだ。それができなくなるとNHKの取材班は告発しているのだ。

ちょっと待て、と思う。たしかにこれは善政だが、風呂がないわけではない人に税金使って風呂を提供するというのはどういうものかと思う。もともと民間でできていた事業を何で役所がやらなくてはならないんだ、という理由もまた、足りないように思う。温泉に行けない高齢者はこうしたサービスは受けられていない。そういう高齢者を無視して、元気な高齢者だけに利益を分配しているこの村のやり方そのものが公共サービスとしてどうなの、という疑問は湧かないのだろうか。

一方で、企業もないような島根や高知の山村なんかは、公営温泉どころか、やっとの思いで介護保険財政を維持していたりするのだ。愛知の豊かな村では元気なじいさんばあさんが毎日タダで風呂に浸かっている、それは幸せでいいことだけども、その裏側で、介護を必要としている高齢者がサービスも受けられなかったり、バカ高い介護保険料を払っていたりするという大矛盾を、マスコミはどうして考えようとしないのか。

自治体に努力が足りないと言われるとそれまでかも知れないが、しかし法人税獲得のために基礎自治体が努力するというのはどういうことか。自治体にケインズ主義財政をやれ、と誘発しているに近い話なのだ。
景気循環を財政で調整するケインズ主義政策は、財政赤字を担保すべき国民に国籍変更を難しくしている拘束性があることと、国民国家の維持が前提となる。きょうのあすから住むところを簡単に変えられてしまう自治体がケインズ主義財政を取ったら、住民は負担の段になったら去られてしまう。夕張市がまさにそれを証明したわけで、今後は自治体がそのようなことはできないと思うべきだ。だとすると、あまりにも法人税の消長に影響される自治体財政の構造はまずいわけで、法人税と消費税を国と自治体で交換するという総務省当初の発想は、地方財政の自立のための本質的な提案であったと思う。

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