10/20 谷垣氏が道路族の仲間入りか
自民党の谷垣氏が道路特定財源の死守に加担する側にまわったようだ。税収欠損を心配しての話ではあるが、結果として道路族の古賀誠氏の立場を擁護することになる。
いわゆる「改革」指向でありながら、激烈な新自由主義の経済運営には疑義を呈してきた政治家であったので、「改革」の指向を棄てて、古賀誠と同じになってしまったのが商品価値を落としているのではないかと思う。
それにしても道路特定財源についてはちんぷんかんぷんな政治の対応が目立つ。結局その中で財源死守派が勝ち残っているように思う。
1つは自動車業界と石油業界、それに癒着したユーザー団体、週刊プレイボーイを中心とした、道路特定財源をいじるなら減税せよという主張。ちんぷんかんぷんな主張の中では最も論が通っているが、減税なんてありえないという見通しから減税論を主張すれば道路特定財源が死守できるという業界も一緒に運動がされていて、不純きわまりない。
こうした減税論は、国財政しか見て言っていない。確かに国財政だけ見れば道路特定財源が余っているなら返せというのは正論だが、どういうわけか、国道と言われる道路でも、建設費に道路特定財源は半分ぐらいしか使われず、残額は道路の作られる地域の自治体が負担することになる。
自治体負担分に道路特定財源はごくわずかしか入ってこないので、道路が造られると自治体の一般財源からの支出が必要になる。それではたまらないというので、国土交通省は、必要な道路計画として位置づけられた道路を国土交通省の決めた規格(これが高コストになるしかけになっている)で建設して借金すれば、その返済金について地方交付税の基準需要財政額にカウントすることにしている。その税収が基準財政需要額を上回る自治体(朝霞市や和光市)は身銭を切ることになるし、そうでない自治体は、国の地方交付税を増額して受けとることになり、全国の自治体の財政保険的な役割を果たしている地方交付税特別会計の財政悪化に手を貸すことになる。道路特定財源で使われたほぼ同額の財政支出が、モラルハザードの枠組みで、道路特定財源でもないところの税金を食べてしまっているということになる。高齢社会も次世代育成も必要な施策に使うお金がみんな我慢し、そこで働く人たちの賃金など劣悪な状況におかれているのに、マイカーユーザーの損得感情だけ前面に押し出して、道路特定財源を一般財源化が問題だなどと言う人間たちは、ずうずうしいにも程があるという感じがする。
1つは、租税措置特別法の範囲について減税せよという議論。
租税措置特別法の税率は割り増しだというのは筋論としてはわかるが、1970年代初頭に増税されたものが永続しているため、今さら過剰な税徴収だと言うには無理があるのではないか。大多数のドライバーにとって、払いすぎている税を取り戻すというより、実質的に減税になってしまうからだ。
結果として、自動車の濫用の奨励税制になってしまう。消費者保護というのもいるがマイカーに乗っている特権を保護するにすぎない。この社会にはマイカーが増えて泣く人たちもいる。健康問題では喘息患者や騒音に悩む人たち、生活では渋滞の激化による緊急自動車の到着の遅延、バスやタクシーの遅延がひどくなる。
1つは、環境目的税という話。幾分良心的な話だが。
しかし、目的税とするところで特定の利権が群がり、使途と徴税の社会的意義がずれ始めたときに、また今度のように道路特定財源の問題が起きてしまう。その心配からは、自動車を乗り回すことと、森林育成との関係をどう対価関係にあるのか示さないと、説得力が生まれない。
大きな政府論、小さな政府論関係なく、税金の民主的管理という意味では、可能なかぎり税金は一般財源であるべきで(例外として考えているのは、年金保険料を廃止し所得税や消費税とするような場合においての一部目的税とするようなケースである)、そういう問題提起から一般財源化というのがあるわけで、目的税を目的税に置き換えるといのうは、政治的妥協としては素晴らしいのかもしれないが、本質的な問題解決ではないと思う。環境目的に税を使用したいのであれば、一般財源の中で本来は議論して民主的にコントロールするというのが議会制民主主義で期待されているやり方であるはずだ。
“3分の2条項”使っても、谷垣氏が予算法案重視の考え
自民党の谷垣政調会長は20日、京都市で講演し、来年の通常国会で道路特定財源の暫定税率を延長するための租税特別措置法改正案などの予算関連法案が民主党などの反対で参院で否決された場合、衆院で3分の2以上で再可決し、成立を図るべきだとの考えを示した。
谷垣氏は「(租特法改正案が否決されれば)2兆数千億円の税収欠損が生じ、公共事業をどう執行すればいいのか分からなくなる。道路特定財源だけでなく、税法はあらゆるところで国民生活に影響を及ぼす」と強調。その上で、「我々は、衆院で『3分の2』の多数を使う必要がある時は、断固として使わなければいけない」と述べた。
道路特定財源の暫定税率に関し、政府は道路整備費が足りないとの理由から、揮発油税などに本来の税率の2倍以上高い暫定税率を課しているが、2007年度末で期限が切れる。
(2007年10月20日22時41分 読売新聞)
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