10/29 文科、総務、農水省がポルポト政策を採用
文部科学省というのは三流官庁だと思うことがまたあった。
全国の小学生に、農山漁村体験を義務づけるという。そのために地方交付税をばらまくという。いい迷惑だし、余計なお世話だと思う。
農業漁業やりさえすれば人間根性がたたき直せるみたいなバカバカしい幻想があるのではないか。
残念なことを言うが、近代化した農村に、昔の村落共同体のような暖かさを追い求めるのは幻想だと思う。残念なことに、テレビゲームもテレビを見っぱなしの時間も、今や農村の子どもの方が圧倒的に長い。
日本の伝統とか言うつもりなんだろうけど、日本社会が近代化の進まなかった他のアジア諸国と違っていたのは、単なる農業国ではなく、江戸時代に、世界最大の都市江戸ができ、国内の商取引が活発になった面も持ち合わせていたからである。まさに都市文化と商業活動がいち早く根付いたからにほかならない。化石燃料が入る前にこうしたことが先行して定着したということも、着目しなければならない。
もう1つ、アイヌ民族のことも忘れてはならない。彼らは土地を奪われ、明治政府にかろうじてあてがわれた土地で、農業を強制された。アイヌ民族の運動家であった野村氏が狩猟民であった自民族が「農業なんかできるか」と
啖呵を切っていることを思い出す。農業をしなければ人格ができない、などという幻想は、士農工商の身分制社会の残滓である。
しかし、我が国の官僚制のルーツは薩摩や長州のいなか侍のしきたりにある。彼らにとっては忌まわしい徳川時代の都市文化など抹殺しようとしているのではないか、などと妄想を広げてみたりもする。
ともかく、農業の重労働もいいけど、少しは都市文化の伝統から学んではどうかと思う。
また、農村がそんなに人間の精神を明るくするものだろうか。私は懐疑的である。
引き揚げ者だった父方の一族、縁故疎開だった母方の一族、どちらも農村の人たちにはひどいめにあったようだ。祖父母はそんなこと一言も言わなかったが、叔父叔母は幼少期の体験を隠し立てなく話してくれたこともある。
また、毛沢東系の共産主義国は、都市住民を否定し、帰農させる政策を重視した。最悪の事例はカンボジアのポルポト政権である。彼らの思想と、今回の文部科学省の義務づけ策は同類ではないかと思っている。
優秀な共産革命の指導者がいれば、この政策を先取りして、農村に親を密告して打倒すべしと子どもたちに吹き込むことだってできる。文部科学省あたりの問題意識からは、今の親たちは子育てする能力もない問題親ばかりだというのが発想のスタートだからである。
これがばかばかしい政策だということは、逆に考えればよくわかる。地方に行くと時間感覚がおおざっぱである。その根性をたたき直すとして、田舎の人たちを東京の通勤電車に、1分遅れてはトラブルになるような生活をさせるために補助金を出す、などという政策をやったらどうかということでもある。
都市と地方の格差を是正すべきという議論がある。このことは正しいし、このことからは価値判断から中立的な地方交付税の機能強化と、地域間格差の出にくい税を地方の自主財源にすべきだという議論が出てくるはずだ。しかし、出てくるのは次から次に、公共事業をばらまく政策か、こうした情緒的な農村回帰の補助金ばかりだ。そんなことでいいのかと思う。
地方交付税を使うことも許し難い。本来、自治体間の財政格差を補正するためにあるはずの地方交付税を歪んだ帰農政策としての使うのは無駄遣いもいいところだ。財政不足で、福祉サービスを切っている過疎の自治体はどう捉えるだろうか。
税金がないないと必要なサービスが切られていて、障害者のいる家庭なんかほんとうにひどい思いをしているのに、こうしたばかげた情緒的な政策には省庁の壁を超えてポンポンとお金がつく。嫌な気分だ。
全国の小学生、在学中に必ず農山漁村体験…費用の大半補助
政府は全国の小学校すべてで、児童が在学中に1度は農山漁村で長期の宿泊体験活動を行えるよう、宿泊などにかかる費用の大半を補助する。
2008年度からモデル事業を開始し、13年度には全国約2万3000の小学校すべてに拡大する考えで、年間約120万人の参加を目指す。地域活性化の起爆剤としても期待されており、農林水産、文部科学、総務の3省が連携して、政府の総合的な取り組みを推進する。
「子ども農山漁村交流プロジェクト」と名付けられた事業は、小学校高学年の児童が農山漁村に約1週間滞在し、自然学習などの体験活動に取り組むというものだ。「児童が豊かな人間性をはぐくみ、学ぶ意欲や自立心を身につける」(文科省)と同時に、「地域コミュニティーを活性化する」(総務省)狙いもある。
08年度は都道府県ごとに10校、計470のモデル校を指定。参加児童には食費を除く宿泊費などを1人当たり約5万~6万円補助する。08年度の参加者は約3万人を見込んでいる。
このほか、100人規模で児童の受け入れが可能なモデル地域を全国に40か所設け、体験活動の実施に関する受け入れ側のマニュアルづくりに取り組む。将来は、拠点となる廃校舎の改修、研修施設などの整備も進め、受け入れ地域を少なくとも500か所にまで拡大する考えだ。
農水、文科、総務の3省は08年度予算の概算要求に宿泊費補助などで約22億円を盛り込んでいる。また、都道府県が同様の事業を実施する場合、特別交付税による財政支援も検討する方向だ。(2007年10月29日14時36分 読売新聞)
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