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2007.10.17

10/17 29兆円もの財源不足?嫌なイデオロギー宣伝

社会保障をこれ以上切りつめなければという試算を内閣府の太田が発表。

ベクトルには真理があるし、一定の社会の水準を維持していくためにはある程度の増税は必要だと思うが、数字が誇張されているように感じる。数パーセントの消費税のみ増税の地ならしと、社会保障を切り込み、自助自立を強調して民間保険業者にビジネスチャンスを提供しようという、金融業界の手先・経済財政諮問会議の既定路線を強調しようという魂胆だろう。

政府発、あるいはこ経済財政諮問会議系の学者の発表する社会保障コストの数字は計算根拠が不明確だ。国民に公開されていない部分も多い。与党や政府は野党の年金改革を根拠薄弱とか言うけれども、年金を中心に十分な統計データの公表していないんだから、考え方の提示しかできなくて当然だと思う。野党の年金改革が税方式になるのも、負担と給付に関係する数字データやほんとうの計算の仕組みが発表されていないからだ。医療や介護などは、将来動向に確たる数字がないから、どうにでも鉛筆を舐められる。そうした根拠を明確にしないうちに、こうした数字を鵜呑みに信用してはいけないと思う。

人間開発という点から、先進国でいようと思えば一定の社会保障の水準を維持することが欠かせない。お産や介護の崩壊というのは、人間開発という面で遅れを取っている現象に過ぎない。

たとえ社会保障費の増大が主に財政を圧迫する問題があるという視点に立ったとしてもだ。社会保障費総額を抑制する議論からスタートするとろくな結果にならないことは、この間の小泉構造改革での社会保障制度の変更で問題が露呈している。

1つには財政構造そのものに何のプラスにもならないで、これまで効率的な給付サービスとなっていた部分からまっさきに潰れていっている。とくに介護も医療も高齢者や障害者の部分では、重度になる前にサービスを受けると負担がひどいので、重度化して手遅れになるまで、家庭内の素人介護、素人療法で症状悪化してから持ち込まれる傾向が出てきている。

また元気のよい高齢者の福祉ばかりが声高に主張されるので、最大の財政支出圧力である厚生年金・共済年金の2階建て部分の制度変更が遅れている。結果として、社会的発言力の弱い、あるいは引け目のある、ひとり親支援、生活保護、障害者介護、高齢者介護、医療、基礎年金の順にしわ寄せが行われ、社会保障給付が豪華客船で海外旅行する高齢者を作りながら、一方で倒れた高齢者がいても何の手当もできないようなことになっている。

また生活保護やひとり親支援などの現金給付も、規制改革会議や経済財政諮問会議が進めてきた無秩序な労働規制緩和で、雇用保護が外され労働条件が労働者にとって極度に悪化したから、受給者の自立が遠のいている面も強い。社会保障を切りつめたかったら、自助自立しながら家庭生活を両立できるような良好な雇用を確保するための施策が必要で、そのためには、何かと労働規制の緩和ばかりを訴える規制改革会議・経済財政諮問会議の考え方は逆効果である。

2025年度社会保障費、最大29兆円不足…内閣府試算
 17日開かれた政府の経済財政諮問会議(議長・福田首相)で、内閣府が、年金、医療、介護の社会保障3分野の給付と負担に関する将来試算を示した。

 高齢化で社会保障費が増え続け、2025年度に8~29兆円程度の財源不足が生じるとした。不足分をすべて消費税で賄う場合、税率は現在の5%から、8~17%程度になる。

 内閣府は条件の異なる複数のシナリオを示した。現在の給付水準を維持した場合、国内総生産(GDP)の名目成長率が2・1%程度の低水準にとどまれば、財源不足額は29兆円に達する。

 一方、給付水準を引き下げた場合で、成長率が3・2%では不足額は8兆円にとどまると試算している。

 消費税を1%引き上げると、約2兆5000億円の財源が工面できることから、不足額をすべて消費税で賄うと仮定すると、税率を3~12%程度引き上げる必要がある。

 政府は、日本経済の規模を示す名目GDPに対する国と地方の借金の割合について、前年度比伸び率がゼロとなることを、中期的な財政再建目標としている。試算はこの目標を維持するためのもので、歳出増への圧力が高まって歳出削減が進まなければ、財源不足はより大きくなる可能性もある。

(2007年10月17日22時37分 読売新聞)

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