9/9 政治資金報告
●政治資金報告書の記載漏れ、二重記載などが続発し、問題になっている。
この間、金融監督と、会計監査を通じて企業を締め上げて構造改革を推進した政治の為政者が、自らの政治資金の管理では、会計監査ではとうてい認められないようなことをやっていたとは呆れるばかりだ。この数年、銀行は金融庁の監査をくぐりぬけるために、取引企業に相当な無理を求めてきた。その中には、会計に関する細かいどうでもいいようなルールまで影響している。また、監査法人による監査も強化されて、会計制度にあわせるためだけに企業はかなり無理なコストを払ってきている。そうして締め上げて、いろいろな企業が倒産し、失業者が溢れ、中産階級以下の人々の所得は低下した。
そういう中で、政権党の政治家の財布について、5万円未満は公表したくないの、領収証の紛失がどうの、よく言うよと思う。
ただ、選挙会計の報告などに立ち会ったことから思い出すのは、政治関連の会計というものが、違反の罰則が厳しい割には、ほんとうのところどう記載したらよいのか、不明確な制度になっている部分が多い(下手に簿記を知っていればいるほどわからなくなる)。また、基本は単式簿記だが、貸付金や借入金の報告があったり、財産の報告があったり、計算を混乱させる要素も少なくない。そこを間違えたり悪用したり、いろいろなことがあるだろうというのが私の思い出すところだ。
政党支部と政治資金団体と選挙会計は、政治家本人の会計と一体的なものなのか、法人的な概念で行われるべきなのか、政党支部以外はほんとうのところよくわからない。さらには、公職選挙法が異様なまでに厳しいので、公示日前の政治活動か公示日後の選挙運動かということを意識しながら領収証の宛名を書いて貰わなくてはならない。間違えていたら、領収証の書き直しをお願いに行ったこともある。
会計間の資金移動にいろいろ規制がかかっているので、会計上の法人的な概念があり、候補者個人から政治資金団体への貸付などという考え方がありうるということも、熟練した人に話を聞いてわかった。
公職選挙法で認められた印刷物の印刷代(選挙公報の版下代、ポスターやはがきの印刷代)なども、信用の問題で費用の前払いをした場合、本来は選挙会計に入るべきだが、選挙期間前の支払は選挙会計に入れてはならないという人もいたりして混乱した記憶もある(結局どうしたんだっけ?前金扱いにして、選挙期間中に精算して改めて領収証を書き直してもらったんだっけ?)。あるいはポスター印刷代の公費負担はどう表現したらよいのか、支出に総額を明示して公費負担を収入にカウントすべきか、それとも差額を支出として書けばよいのか、これも悩んだ。
そうした制度のもとで、間違いと不正の間がわかりにくい会計制度であるなぁと思った。
また、今日の毎日新聞で「領収書添付紛失申告で免罪」という記事が出ていて、東京都選管が領収証を紛失したときに、紛失を理由に領収証添付をしなくてよい制度があるという記事が出ていて、都選管は今年の手引き書から紛失に関する事項を削除したという報告がついていた。
これなども紛失が良いか悪いかということではなく、第三者に見て公正さが判断できるかどうか、という観点で議論が必要じゃないかと思う。絶対に紛失は起こりうる。問題は今回、第三者がほんとうに紛失したとは思えないような心証しか持てないものまであったり、常習犯的な紛失もあるようで、それに警告を発する仕組みが必要じゃないかと思う。
政治家はお金もないし、複式簿記を理解できなければ政治参加できないというのも困ったことになるかもしれないが、政治資金団体や政党支部、選挙会計に、会計間の資金移動に関する管理がきちんとできて、どこにでもいる会計士が監査できるような標準的な会計ルールを適用すべきではないかと思う。透明性を担保した上で、政治資金の出入りについて、もう少し緩和してもいいと思う部分も多い。うさんくさいカネがなかったことにしてしまう会計より、うさんくさいカネはうさんくさいカネとして公開され、有権者が判断できることの方が大事だと思う。
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