9/22 2年間保育所で育てられた子がみつかる
北九州市で2年間保育所に入れられっぱなしで育てられた子どもがみつかり、育児放棄として問題になっている。
育児放棄は問題だが、赤ちゃんポストで問題が表面化したように、この社会には子どもを育てられない親というのが必ずいる。それをどうしたらよいのか、受け止める力はこの社会にはまだない。(よっぽどバンコクのスラム街の方が上手に受け止めている。)
養育してきた保育所に対して、北九州市は保育所に行政指導をする、と言っているが、保育所としても保育料も取れずに養育していたわけで、見るに見かねてということだったのではないかと思う。養育環境に問題があればともかく、それがなければ行政指導なんかされなくてはならないのかよくわからない。
もちろん、保育所が適切に保護者に自立を促していく取り組みが必要だが、それだって限界があろう。そうなると直接子どもを守るしかない。
ここで考えなくてはならないのは、北九州市は、生活保護の給付をうち切り、餓死や自殺者を次々に発生させている自治体であるということである。そういう福祉事務所が福祉行政を司ってきた自治体が、果たして、こうした家庭や子どもにどれだけ親身に相談に乗れるか疑わしい。もし反証材料があったら教えてほしい。生活保護行政の延長でいけば、説教して、怒鳴って、保護者を「鍛え」、子どもには施設に送り込んで一件落着ということをやっていないと言えるだろうか。
少なくとも、育児放棄状態になっている家庭を相談・ケアできず、こうして無認可保育所が我慢して対応してきたことを、市として恥じいるべきではないかと思う。
そうして入所する施設も、今はたいぶ良くなってきたみたいだが、かつては職員や上年齢の子の暴力がつきもので、子どもたちはひどい扱いを受けていた。そうした環境で大人になって屈折してしまっても、「親がいないから」の一言で片づけられ、施設の養育責任みたいなことは、誰も何も検証されてこなかった。97年の児童福祉法改正で、ようやく子どもの人権が児童福祉行政に取り込まれ、施設による児童虐待の対策が始まっている段階である。
それと今回はたまたま保育所側の人権侵害がなかったから良かったと思うが、かつてのベビーホテル問題のように、24時間預けられっぱなしの子どもが発生したときでも保育所での子どもの人権保障をどうするのか、ということについて、保護者責任を強調するばかりで、実質的に保障する手だてなどほとんど考えられていないと言っていい。子どもが直接申し立てできる「子どもオンブズマン」制度も、反動的な地方公務員幹部や地方議員、有力者が徹底的に設置を妨害するし、運良く設立されても何とか廃止したり、予算カットを目論んで他の行政施策では考えられないような厳しいチェックを入れ事実上の妨害がたえない。
保育所で2年間生活、5歳と4歳の姉妹保護…育児放棄か
北九州市は21日、同市小倉北区の無認可保育所「砂津保育園」(佐藤良子園長)で、親が迎えに来なかった5歳と4歳の姉妹2人が、同園で約2年間生活していたと発表した。
市子ども総合センター(児童相談所)は、親の育児放棄の可能性が高いとして姉妹を保護、連絡のついた20歳代の両親から事情を聞いている。
市によると、姉妹は2005年春に入園。約半年後、母親との連絡が途絶え、2人は園で生活するようになった。母親は常に留守で、父親の行方もわからず、保育料は滞納されていた。市は18日、匿名の通報に基づいて立ち入り調査し、姉妹を保護した。
市に対し、母親は「経済的な理由で迎えに行けなかった」、父親は「仕事を見つけてから行こうと思った」などと説明したという。
また、同園が市の立ち入り調査に対し、「長期滞在児はいない」と2年連続で虚偽報告したことも判明。児童福祉法に基づく関係機関への通告も怠っており、市は行政指導を行う方針。
佐藤園長は21日、同市役所で記者会見し、「報告すると子どもは(公的)施設に預けられると思い、かわいそうだと思った」などと述べた。
園は1996年にも、2歳男児を2年間、5歳男児を4年間、園で生活させていたことが発覚しており、市が2人を保護し、園に改善指導を行っている。
厚生労働省の指針では、長期滞在児がいる施設は自治体に報告義務がある。一方、福岡県警小倉北署は「生命に危険が及ぶ路上などに放置したわけではなく、保護責任者遺棄罪などの適用は難しい」としている。
(2007年9月22日1時23分 読売新聞)
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コメント
「一方、離婚したという20代の父親は園を2度訪ねてきた。同年秋ごろの2度目の訪問の際には、姉妹の寝顔を見て涙を流していたが、その後は連絡がなかった。」
「佐藤良子園長(65)は「施設にはやりたくないという思いと、涙を流す父親を見て、迎えに来てくれるという確信があった」と説明。」
「市が姉妹の両親を見つけて事情を聴いたところ、母親は「借金で昼も夜も働いて体を壊し、父親に引き取りを依頼した。子どもたちに申し訳ない」、父親は「働いて迎えに行けるようになればと思っていた」と話したという。」
勝手な想像ですが、「両親が離婚して母親が引き取るものの、ワーキングプアで体をこわす。市に生活保護を求めたが、「水際作戦」を展開する北九州市は離婚した父親がいることを理由に生活保護の支給を拒否。しかたなく娘を父親に預けようとしたが彼もまた失業中で育てられず、やむを得ず仕事が見つかるまでの間だけ施設に預けたが、その後も仕事が見つからず引き取りに行きたくてもいけなかった。」ということがあったんじゃないかなあという気がします。
しかも市は両親ともに連絡がついているんですよね。「失踪して行方不明」とかではないわけです。最初に私が疑問に思ったのもこの部分でした。
投稿: とおりすがり | 2007.10.06 10:48
両親が失踪してしまえば、逆に乳児院とか、児童養護施設など児童福祉法でつくられている施設に入ることになるので、保護者が連絡つく状態だったからこそおきた事件なのでしょうね。
この事件とは別に、働き方の多様化(この現実を否定して親の責任を強調する人は、保育所閉所時間以降、公共交通機関も、スーパーもコンビニも使わないようにしてほしいです)と、家族形態の多様化(と近代的に表現するより、禁欲を強てきた近代より前に戻っていると言った方がいい)が進んでいる以上、子どもたちの安全弁として各市町村(政令市なら区ぐらい)に1つは、子どもを長期間保護できるぐらいの保育所があるべきじゃないかと思います。
こうした議論をすると、子どもを慈しまない保護者が増えているとか、捨て子につながるとか、非科学的な情緒論が蔓延しますが、日々、保育所でよその子や他の保護者と接していると、それがあったからと親が簡単に子どもを捨て子同然にするとは思えないです。毎日、長時間預けている保護者でも、子どもへのこだわりは大きいものです。
投稿: 管理人 | 2007.10.07 15:09