8/4 政党には元気な派閥が必要だ
昨晩の毎日新聞夕刊の「特集ワイド 安倍首相続投に異議あり!」が面白かった。続投にNoと言っている、野田毅元自治大臣と、後藤田正純衆議院議員のコメントが掲載されている。
野田さんのコメントは、オーソドックスな自民党員としての反応をきちんとまとめたコメントだと思う。続投への違和感、地回りしている議員としての感覚の代弁、じり貧状況に陥って打てる手が1つずつ使えなくなっている危機感をたんたんとまとめていて、「若いし今回はいったん陣を引いて態勢を立て直」せとまとめている。面白いコメントは、小沢か安倍かと迫りながら劣勢になると政権選択ではないと言った安倍首相と、負けたら引退すると言った小沢氏を対比させて「どちらが与党かわからない」というくだり。安倍氏に危機管理能力も政権担当能力もないんです。
後藤田正純さんのコメントは、自民党の今の党内野党的立場の人の意見を代弁するもの。「美しい国と言いながら美しい責任を取らない、再チャレンジと言いながら自ら再チャレンジしようとしない」という表現は的確。後藤田さんのコメントで秀逸なのは、小選挙区制下における政党の派閥のあり方について言及していることである(語っている本人が自覚しているかどうかわからないが)。
安倍首相続投への異論が党内に広がらないのは、昨年の総裁選で圧倒的な支持で信任したという負い目があるからです。私は谷垣さんを支持したから何でも言える。 自民党は層が厚くて幅が広いから、別に安倍さんに続けていただかなくても、他に人材゛かいます。これからは政策を中心にリベラルな考え方の人たちで、派閥を超えたグループをつくろうという動きが出てくるでしょう。これが政策集団になれば、今の派閥は抜け殻になる。 今はどこの派閥も右から左までいる。それが安倍政権がやっていける強さでもある。リベラルで結集できたら、はっきりノーと言えます。内閣改造でニンジンをぶら下げられても「泥船に乗れるか」という人たちが、この1カ月の間にどれだけ固まれるかです。
この25年ぐらい、自民党も社会党も派閥解消ということでやってきた。小選挙区制になり、政党助成金が誕生して、政党にとって党首・幹事長の権力が絶大なものになり、派閥は党首の恩恵によるポスト配分に対する懇願機能しか持たなくなってしまった。しかし、そのことが大政党の中でどのように意志決定がされているのか、国民がわかりにくくなったし、一般大衆相手の政治評論もやりにくくなっているように思う。個々の議員の特質をすべて理解しないと、その政党の意志決定システムが見えてこないのが現状である。
また自民党も民主党も、マスコミに流されて党首を選ぶ傾向があり(田原総一郎やみのもんたのように、テレビでわざとつっこまないことでヨイショしたり、逆に貶めようとする人にはあんたより安倍さんがいいとか言ったりして政治好きな人たちの中でつまらない世論を作るバカもいる。背後にはそうした演出をしかける独占企業・電通の人脈があったりするようだが)、党首選挙になるとなだれを打って総主流派になりがちである。そうすると、今の自民党がそうだし、民主党なら岡田さんや前原がずっこけたときにもそうだったが、総主流派でやってきたから、代わりうるべきリーダーがいなくて、政党にとって真空状態になってしまう。そうしたことがご近所さんのブログにも端的に書かれていて、非常にいい指摘だと思う。
多党制なら、特定の政党が真空状態になっても代わるべき中規模政党がごろごろしていて問題はないが、二大政党制が定着してくると、どちらかが真空状態になることは、政治のチェックアンドバランスからはとても危険な状態になる。現実には、この安倍政権の体たらくが続けば、民主党の執行部はどんどん鍛えられるものの、民主党の個々の議員は、安易な自民党批判に安住して、どんどん質が下がる。2001年、突然自民党の党首が小泉純一郎に代わって崩壊遁走状態になったことを思い出すべきだろう。それから4年半ぐらいは、ずっと小泉純一郎的なものに何の抵抗も批判もできなかった。中には小泉純一郎と寝ようとした若手議員すらいた。
政党の真空状態を回避するためには、恐竜にとってのほ乳類のように、対抗派閥をきちんと温存し、対抗派閥に批判され党内でのチェック機能を強めたり、主流派が危機状態になったときに対抗派閥によって人心を一新できるようなシステムが必要だ。
しかしその桎梏になるのは、小選挙区制と政党助成金である。これで嫌なめに会いたくないから、政党の議員・候補者は対抗派閥を作ろうなどと考えなくなる。したがって、公認候補者の選出過程の透明化、公認候補者の派閥の公開、各議員・候補者が権利として配分を請求できる政党助成金の配分ルールの確立などが必要ではないかと思う。
●民主の前原が、イラク特措法延長せよ、という。この人は現状追認、タカ派路線であればあるほど政権担当能力と表現するらしい。この人は、凌雲会という、「阿波狸」にそそのかされて作った派閥がありながら、ときに鳩山が流行れば鳩山派のように振る舞い、菅が流行れば菅派のように振る舞い、小沢が流行れば地元京都の稲盛とつるんで小沢に懇願して、ぬえのように国民の前に現れて、若手の代表のような顔をして党首になった。
空虚な強権的発言を売りにして、田原やみのなど電通文化人の歓心を買いながら、政治系バラエティー番組で「菅や鳩山の時代は終わった」と流布してもらってトップになる(何の実績もないのに)。しかし凌雲会以外の若手や女性議員を潰すための公認基準を作り、公認外しを繰り返し、民主党の基礎体力を低下させた。めちゃくちゃなことばかりやってカラ回りしているところ、安っぽい情報に対する慎重さのなさなど、お友達の安倍首相とそっくりだ。いっそ安倍前原新党でも作って、慰安婦問題や朝鮮半島問題に異様にアレルギー反応を起こすネットウヨたちのための政党でも作ったらいいと思う。すっきりする。
安倍にしろ、前原にしろ、若手の代表のような顔をするから、大迷惑だ。民主党に後藤田正純みたいな、若手でも嫌だよという人がもっと前に出てきて論争をすべきだろう。
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