6/6 コムスンが介護保険非適用に
厚生労働省が、コムスンの事業所の新規開設や更新を認めないことになり、6年以内に全面撤退になる。
今サービスを受けている人たちが路頭に迷う、という報道のスタンスが目立つ。とても大事な視点だと思うが、官から民を是認し、ときには煽ってきたマスコミの立場からすると、もっと問題解決的な視点の報道が必要ではないか。官より民がもてはやされるのは質の悪いサービスは客の選択で淘汰されるというのがその論理だったと思うが、淘汰ということが起きたときには、今回のようなトラブルが起きるのだ。民が事業崩壊を起こしたときに公共サービスをどう肩代わりするのか、というシステムの議論がこれまで十分にされたとは思えない。保育所事業への株式会社参入が容認されたときに厚生労働省と交渉したが、そのとき、株式会社の場合、資本関係や事業撤退などが社会福祉法人より容易であり、そうした場合に利用者が不利益を蒙らないように事業継承について公的枠組みを検討すべき、と指摘したが、明確な回答はなかったことを思い出す。
今回の事件は、医療でいえば診療報酬の不正請求だから、保険事業者の指定解除は正しい対応だと思う。
たぶんコムスンは介護事業を広げていった手法とは逆の、地域の福祉業者に介護事業を売り渡す方法で、今後の問題解決をしていくのではないかと思う。このときに焼け太りみたいなことが起きないように願うしかない。
また、地域のボランティアを有償ボランティア、介護NPOの労働者として育ててきた地域は打撃は少ないが、官から民へという雰囲気の言葉にのせられて、どこのだれに責任を負っているのかわかりにくいコムスンなど大手の介護業者に公共サービスの担い手を明け渡してきた地域は、今後苦労していくことになるだろう。
コムスン:厚労省不許可…「介護難民」発生も
訪問介護の最大手の「コムスン」が、介護保険事業から撤退する公算が大きくなった。厚生労働省は6日、コムスンに介護施設の新規開設や更新を今後認めないことを決定。勤務実態の虚偽申請が、2万4000人に及ぶ従業員を抱える業界トップの「崩壊」につながった。介護関係者や全国利用者に衝撃と不安が広がった。
「利用者が多いので、影響は少なくないでしょう」。認知症のお年寄り家族を支える活動を20年以上続ける群馬県前橋市の竹田千恵子さん(82)は、不安の声を上げる。「本来介護は、企業が利潤を追求する対象になじまない。人手が足りないので民間が担うのはやむを得ないが『それぞれの家庭に密着して地道に支えるのが本質』という警鐘を鳴らしている気もします」と、厚生労働省の出した厳しい「決定」を解説してみせた。
介護保険法が施行され、社会福祉協議会が行ってきたヘルパーの仕事の民間化が一気に進められた。コムスンは地元の人を採用し、急成長してきた。「介護保険法に基づき、利益を追求できる枠は一定なのに、収益を無理に増やそうと、介護員の水増し請求を続けてきたのではないか」と竹田さんは話す。
「コムスンが行った不正は絶対に許されないが、このままコムスンが介護事業から撤退することになれば、介護の現場に与える影響が大きすぎる」と心配するのは、大谷強・関西学院大教授(社会保障)。「最も被害を受けるのは介護を受ける利用者。慣れたヘルパーの介護を受けられなくなる不安は大きいだろう。また、コムスンが多く抱えるケアマネージャーやヘルパーなども失業してしまうことになる」と話し、「不正については、厚労省や都道府県がきちんと監督して正していくことでも良かったのでは」と厚労省の決定を批判した。
また、介護保険利用者への情報提供を行っている「介護情報ネットワーク」(神戸市)の糟谷有彦代表理事は「(コムスンの対応は)悪質だったのである程度は予想できた結果だ」と述べたうえで、「コムスン以外の事業所が充実している地域なら影響は少ないが、コムスンに頼ってきた地方への影響は計り知れない。地方を中心に新たな『介護難民』が発生する可能性がある」と指摘した。
毎日新聞 2007年6月6日 12時33分
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