6/8 年金を政争の具にしたのはどちらか
読売の世論調査で、行方不明年金の処理について与党の対応が妥当という人が51%もいる。これまで続けてきたマスメディアへの威圧が功を奏して、与党の政策宣伝のオンパレードと、与党の「政争の具にするな」という批判だけがテレビ画面に流れる。
しかし、「政争の具」にすると宣言したのは、首相と与党である。今年の一月に首相は、参議院選挙の争点を憲法と公務員制度改革と社会保険庁改革を核とした年金問題にすると言明し、政争の具にすると高らかに宣言している。その下品さは、すぐに撤回したが、この問題の自民党のビラである。表面は政策的なことを述べているが、裏面は、①菅直人氏が厚生大臣だったときに年金番号の一本化が行なわれたから今回の問題は菅直人の責任だ、ということと、②社会保険庁の労働組合が年金をおかしくした、という、原因と結果を全く無視した下品な在野勢力批判でしかない。年金問題の本質は、①狂乱物価や制度改革の度にみなしで給付をふくらまして構造的な赤字体質にしたこと、②本来は賦課方式なので世代間人口バランスの調整のため(正確にいうともっと違う表現になるが)に限定的にしか存在してはならない運用金を膨らまし、それを公共事業などに流用することに群がった政治家やキャリア官僚がいたことにある。また行方不明の問題は年金番号一本化をやらなかったことにあり、一本化後つまり20代30代の年金行方不明はほとんど発生していない。
長期的には民主党が年金問題をしかけた側にあったと思うが、これは転職の多くなった今に年金空洞化が起こることを回避し、持続可能な年金制度を実現するために提案され続けていることで、具体的な政策は違うにしても与党の一部議員や経団連や連合、さまざまな社会団体が幅広く問題提起した論点に沿うものである。しかし年金運用金のうまみを手放したくないキャリア官僚や与党政治家が厚生年金と共済年金の一本化と高齢化を無視した強烈な財政調整制度の導入に矮小化し、政権や自民党もそれでよしとしてけりをつけたために政争になっている面もある。
健全な民主主義社会において野党は、与党ならびに政府の失策を批判し修正する立場にあり、この立場を放棄して仲良しこよしの議会クラブでいいのかという問題もある。もちろんスウェーデンのように保守・社民が話し合いを重ねて年金改革を成功させた事例もあるが、この場合は与党が政争の具にしない、野党の意見を聞き入れることを政治的敗北と位置づけないことが前提になるし、年金制度に変なイデオロギーを持ち込まないことが重要になる。
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