6/29 宮澤喜一さんの死を悼む
宮澤喜一さんが亡くなった。宮澤氏の政治スタンスには共鳴するところが多い。もし私が社会党でなく自民党を選んでいれば、おそらくこの流派にシンパシーを感じていたのではないかと思う。見事なまでの吉田ドクトリンの体現者であり、戦後の高度経済成長は吉田茂から宮澤喜一に至る路線があったからこそだと思う。改憲だとかナショナリズムだとか、そういう無意味な保守を差し控え、敗戦の教訓と、国民の尊厳の基礎を支えることにもっとも価値をおいたのではないかと思う。
残念なことに、田中角栄氏と大平正芳氏に疎まれ、大平氏死亡後の派閥の継承に失敗してから、何においてもタイミングが合わずに、首相でも蔵相でもそれまでの人たちの後始末ばかりさせられたことがもったいなかったと思う。
宮澤さんのウィットは、静かで、軽妙で、現実主義的で良かった。
そんな大人物の死の翌日に、戦後レジームを終わらせると乱暴なことを言う首相が主導して、国会運営をめちゃくちゃにして参議院選挙に突入することになった。集団的自衛権でも、93年政変に起因する市民社会の進行で置いてけぼりになったようなアナクロな学者をかき集めて、冒険的な議論を展開している。将来に漠たる不安を感じている。
●NHKの「あの人にききたい」という、インタビュー映像記録をもとにすでに物故者となられた有名人の語った言葉を紹介する番組がある。とってもいい番組だと思う。物故者が生きていた時代、人の話を聴くということが大切にされていたんだと思う。
今日の放送は淡谷のり子さん。
贅沢は敵だという時代に、化粧はやめず、ぜったいにもんぺを履かず、軍歌を歌わなかったという自慢話。明治後半に生まれた人たちの中には、歴史の野蛮に対する冷ややかな視点がある人がいていい。
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