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2007.06.19

6/19 議事に懲罰委員会を使うのは民主主義の自滅行為

懲罰委員会を政治的対立に利用するようになると、議会制民主主義は死に向かって歩き始めているのではないかと思う。

年金時効特例法案の強行採決をめぐって、衆議院厚生労働委員会の桜田委員長を後ろから羽交い締めにしたとして民主党の内山晃代議士が除名の次に重い登院停止30日。懲罰委員会の委員長の民主党の横光克彦代議士が、この懲罰動議に後ろ向きだったために、与党は不信任決議まで出し、解任してしまおうとしている。

国民にとって大事な年金の話でありながら、政治家から見れば単なる政治ショーの価値しか道具でしかない法案を、審議をして議論も尽くさず強行採決することは、今の政権が議会に対する重みをどう考えているのかよくわかる。
たとえ物理的抵抗を試みた野党議員とはいえ、議事の一環でおきたことについて懲罰委員会で制裁を科していくというのは、多数党に反発する議員をいくらでも制裁できる、という先例を作ってしまったと言ってよい。

懲罰委員会について国民もよくわかっていないことを利用してこのようなことを与党がやることは民主主義にとって危険だ。
ロッキード事件をめぐって小室直樹は、政治家の汚職は院内で制裁すべきで、検察や警察などの行政権に政治家を渡すようなことをやっていれば民主主義は簡単に死ぬ、というようなことを書いている。
懲罰委員会は、汚職事件など、政治的問題に深く関わる犯罪などについて、検察や警察に代わって、政治家どうしの自治と自浄の仕組みのために存在している。ところが、今はもっぱら院内秩序の維持に使われており、それはほとんど与党が野党の気勢をそぐためにしか使われてない。まず多数党には懲罰が可決されないようになっているからである。これは多数党による少数党への威圧の機能しかない。

実は、戦前の国会も、軍部の圧力に屈して、岸信介も推進した「新体制運動」に背き反発する議員を右も左も次々に懲罰にかけて、特高警察などに売り渡してきた。結果として議会は戦争を止められなかったし、戦争の内容をチェックして早期に終戦に持ち込むこともできなかった。事実上軍部が推挙する首相の判断の追認機関でしかなくなってしまった。

今回、この懲罰については、どこかでいつか歴史の汚点を残すことになる先例となるのではないかと思う。そんなことをやすやすと認めてしまった衆議院議長というのもどういうことなのだろうか。また横光委員長解任については、本会議での解任を回避するために辞表提出を求めており、これは大問題だと思う。自主退学を斡旋する高校教師じゃないんだから。ここまで与党が民主主義をねじ曲げることをするなら、それを水面下に隠さず、与党が無理難題やっていることを記録に残すべきだろう。リベラリストで名を知られながらも、こういうことに毅然とできないということは、情けない。
また懲罰委員会の与党委員の面々を見て、首相と肩を並べるような人や長老のような人々がこんな判断をしたのかと思うと愕然とする。

衆議院懲罰委員会の面々 2007年6月15日現在
委員長
横光克彦(民主党)(2007年6月18日委員長不信任動議が可決された)
理事
自由民主党  石原伸晃、島村宜伸、村上誠一郎
民主党 平野博文
公明党 遠藤乙彦
委員
自由民主党  太田誠一、小泉純一郎、古賀誠、武部勤、谷垣禎一、額賀福志郎、堀内光雄、森喜朗
民主党  菅直人、渡部恒三
国民新党 綿貫民輔
無所属  平沼赳夫

民主・内山氏、30日間登院停止 除名に次ぐ重い処分2007年06月19日21時42分

 19日の衆院本会議で、民主党の内山晃氏に対する「登院停止30日」の懲罰が与党の賛成多数で決まった。民主、社民、国民新3党は採決を欠席し、共産党は反対した。内山氏は、衆院厚生労働委員会であった年金時効特例法案の採決で委員長を羽交い締めにしたとして、同懲罰委員会で処分が可決されていた。

 本会議での弁明で内山氏は「審議打ち切り、強行採決は、国民の年金制度を真剣に考えていない証拠だ。今回の行為は、国民の暮らしを守るという国会議員としてのもので、これが懲罰行為というなら、国民の負託に応える行動が封殺されてしまう、議会制民主主義の危機だ」と強調。本会議後に「参院選で国民が与党に懲罰を下す」「国会の外で年金の一連の問題を大いにPRして歩きたい」などと述べた。

 「登院停止」は議員の地位を失わせる「除名」に次いで重い処分。登院停止期間は衆院規則で「30日を超えることはできない」と規定されている。30日間の登院停止は、68年に当時の佐藤栄作首相に「売国者」と発言した社会党(当時)の穂積七郎氏以来。

 18日の懲罰委員会では横光克彦委員長(民主)への不信任動議も可決された。委員会で委員長の不信任動議が可決されたのは48年12月の予算委以来。常任委員長を実際に解任するには本会議の解任決議が必要になるが、19日の衆院本会議では議案にならなかった。

 だが、この問題をめぐり民主、社民、国民新3党の幹事長が19日、河野洋平衆院議長に本会議を開かないよう要請したのに対し、河野氏は野党側に「横光氏から委員長の辞表を出してもらえないか」と打診。野党側は反発し、同夜、河野議長の不信任決議案を提出した。

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