6/11 事務のトラブルシューティングがわかっていない安倍首相
年金の行方不明問題がいよいよ迷走し始めている。
公明党の太田代表が、迅速に対応できる体制整備といい始めたのは傑作発言だ。与党はこれまで年金改革法案で、社会保険庁の職員が多すぎると批判し、社会保険庁の職員集団を、国労解体をなぞるかたちで解体しようとしてきた。そのためにする主張だらけだったことの矛盾が出てきていることを自ら明らかにしたと思う。
安倍首相は、具体的な復元策も考えずに、1年以内に全件とか、社会保険庁の解体あるのみ、とか、過去にさかのぼって責任を追及するとか、的はずれな解決策を国民感情にまかせて答弁してきた失策が明らかになっているのではないかと思う。
今回の問題で行うべきは、ことほど預けたカネがどうなったんだということなのだから、期限を設けず正確に、原因を正確に探りあてて、原因別にデータの復元作業をしていくことだと思う。これは多くの事務仕事のトラブルシューティングに共通する対応だと思う。
それなのに1年以内に全件解明するとか、24時間電話で対応する、とか、政治運動的な念力主義的な解決ばかりを焦っては、混乱を深めるだはかりだということが、相談窓口のオーバーフローに現れていると思う。今は国民感情が社会保険庁バッシングに集まってるから、政権に直接向かってこないが、安倍首相の念力主義的な答弁による対応が、惨憺たる結果に終わることは容易に予想がつく。その前に参院選で敗北して、答弁の責任を取るまえに失脚するのだろうか。安倍晋三というのは、小泉訪朝以外のトラブルシューティングにことごとく弱い人間だと思う。
今週のAERAが5000万件の名寄せがどういうものか、金融庁の指導にのっとって不明口座の追跡を行った大手銀行からの証言を紹介していて、今の社会保険庁の2万人弱の職員では、全職員が名寄せにあたっても、1件1秒で判断しなければならないと、その大手銀行の証言者は証言している。24時間の電話対応や窓口に殺到する加入者の対応をしながら、5000万件の名寄せ、さらにまだあるマイクロフィルムの不明データの突き合わせを1年以内にできるなどということは物理的にありえない。
そうした状況のもと、公明党の太田代表は正しいことを言うと思う。前任の濡れ落ち葉の代表と違い、安倍政権にかなり厳しくものを言うと思う。公明党を支持するつもりはないが、ここは評価しておきたい。
一方で、安倍首相やその周辺は相変わらず、この問題を政治運動的に解決をはかれると勘違いしている。下村官房副長官や菅義偉総務相は、過去の責任追及に重きを置いている。責任追及が官邸におかれようが、総務省におかれようが、結局は政治的に都合の悪い人間だけがあぶり出すようなことはありえないだろう。年金財源を年金福祉事業団の融資事業経由で引っ張り出し、地元に公共事業や年金施設の建設を誘致した議員たちの不始末なんか完全に追及できるとは思えない。責任追及をやって、5000万件の帰属が明確になるとも思えない。社会保険庁職員の労組と、菅直人元厚生相への圧力、影から安倍政権の不祥事をマスコミにたれ込んでいる小泉前首相(元厚生相)周辺への圧力が主目的だろう。
いまやるべきは、5000万件の行方不明の帰属を明らかにすること、そのためにはなぜ行方不明になったのか事故原因を明らかにしていくことが最優先だろう。責任追及などは、その作業を冷静にやっていけばはっきりすることで、問題解決・原因究明を置き去りにした責任追及は、原因の隠蔽をもたらし、最悪の結果に結びつくのではないかと危惧している。
AERAで片山さつきが、今回の年金問題を菅直人になすりつけて批判したビラを作ったことを弁明をしている。党幹部には了承を取ったのになぜ批判されるかわからない、と。ダメな政治家だと思う。党幹部がいくら認めても、下品なビラをつくり国民に批判されているのだから、批判が的はずれなどという発言をしてはダメだろう。「上昇志向」の強い官僚だ。
また、不思議な風向きの人もいる。
与党の密使なのか野党の援軍なのかよくわからない岩瀬達哉というルポライターがいる。社会保険庁職員の厚遇ぶりをかき立てて、マスコミに流し、年金問題が社会保険庁職員の厚遇に原因があるような幻想を形成するのに一番力を貸したルポライターである。このムードが与党の社会保険庁解体法案のベースになっている。
このルポライターが、社民党の保坂代議士に質問原稿を作ったり、共著を出したりしてきたが、保坂代議士に今頃になって、年金問題は社会保険庁にあるのではない、厚生労働省年金局と年金福祉事業団にあると強調し始めている。どういう風の吹き回しだろうか。
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