« 5/23 選挙運動の規制は官憲支配の道 | トップページ | 5/25 国民合意の必要なことばかり選挙のネタにされる »

2007.05.25

5/25 読ませる美濃部達吉の選挙規制反対

咳が止まらず、苦しい。早退して、近所の病院に行く。ごはんの割合の多い日本食の摂取を勧められる。

●休み休み、「日本選挙制度史」を読む。読み進むたびに、いいことがいっぱい書いてある、選挙と民主主義、立憲主義を考えるための宝箱のような本だ。咳き込んでいてなかなか読み進まない。

1934年選挙法改正にあたっての審議会で、政治腐敗の状況を受けて、選挙規制の強化を推進するか、それは意味がないこととするのか、意見が激しく分かれた。

後者の立場に立つ、早稲田大学の高田早苗総長が、明治以来普通教育は普及したものの政治教育はネガティブに対応してきた、そのため立憲政治に対する国民理解がたちおくれている、政治教育を深めることが必要、と言っていたようだ。選挙運動規制でがんじがらめにして警察にびくびくしながら政治参加するより、立憲政治に対する知識を普及させる高田氏の意見は正しいと思う。残念なことに現実には選挙制度の規制強化に進む。
現代でもこうした考えは有効だ。民主党の教育改革案が、私学やその背後にある宗教団体の利権に結びついているのだろうか、宗教教育はもっとやれというようなことを書いてあって、一方で政治教育は今よりさらに禁止していくというような内容になっている。昭和初期より民主主義が後退したことを主張するものである。

話は戻る。
斉藤隆夫、美濃部達吉、尾崎道雄といった戦後ファシズムとたたかったとして有名になる人たちが、選挙運動規制や買収取締強化に対して猛烈に反対をしていて、その論拠が、政治的自由というものの考え方のいい学習素材になる。
美濃部達吉の選挙公営制導入の反対論はなかなかいい(私は選挙公営の意義を積極的に認めた上で、反対論が指摘している意味を十分にかみしめて政治的自由について考えないといけないと思う)。

 少なくとも現在の程度のような候補者個人の運動、個人的運動というものが土台になって居ります以上は、今、単に公営だけの運動で、そうして個人的、私の運動を禁止するとなると、此座にご臨席のような名声かくかくたる諸君は別問題でありますが、余り世の中に名声の高くない殊に新しく候補者に打って出ようという者でありますと、到底当選する機会は得られない、唯、選挙公報というパンフレットを一纏めにしたものを配布される、そうして当てがわれた演説会で演説する、そういうことで当選が得られるか、殆ど私は当選を望むことは不可能と思うのであります。随って候補者の大部分は私の運動を禁止せられましたならばその結果色々の潜行運動、非合法的の潜行運動を為す者が多くなる(中略)、本当の選挙運動、それを官公吏に斡旋させようというのでありますから選挙干渉の機会の多くなるということは争われない事実であると思うのであります。(日本選挙運動史p144)

美濃部氏の反対論は、個人情報保護法の弊害に苛立つ雰囲気によく似ている。
付言すると、この選挙規制の議論をする直前が最初の普通選挙で、中選挙区制が導入された最初の選挙でもある。そこでは、一般大衆が投票するため政党の台頭を恐れた官僚=内務省が野党、民政党など3党をそそのかして中選挙区制を導入し、同じ党で同士討ちをする選挙制度に変え、大政党の結束力を弱めることと、選挙を個人単位のものにしてしまったという前提がある。

あと、内務省が選挙情報を集めるのもこの頃始まったようで、当時はそれで与党にとって勝たせたくない候補に尾行をつけて運動をできないようにしてしたり(逆にいうと対立陣営は警察の目が行き届かなくなるのでやりたい放題になる)、時には手荒に摘発したりして、選挙結果に影響を及ぼしたようだ。1928年の最初の普通選挙での政党別の摘発件数は、与党政友会が63件なのに対して、民政党469件となっている。候補者1人あたり検挙人数では、政友会が0.16人、民政党が1.3人と露骨な差が出ている。比率では無産(非共産の社会主義)政党はさらに倍である。労農党の大物・大山郁夫陣営では官憲の弾圧で2人の自殺者を出したことまで紹介されている。
今も、選挙に弾圧は加えないが、警察の警備部(つまり公安)は自治体のを含めて選挙情勢の情報収集をしている。今は名簿を持っていない若手議員などがぱっと当選してしまったりして読めない要素もあるが、しがらみで選挙ができた時代はかなり正確な情報だったという話を聞いたことがある。

最近、検察や警察が公職選挙法の拡大解釈(というより、これまで基本的人権の政治的自由の制約や刑事訴訟法の犯罪の構成要件とのかねあいから、選挙規制を控えめに解釈してきたと言った方が正確かも知れない)して取り締まり強化に乗り出している昨今、この昭和初期の過ちにオーバーラップするものを感じるこどかないわけではない。

|

« 5/23 選挙運動の規制は官憲支配の道 | トップページ | 5/25 国民合意の必要なことばかり選挙のネタにされる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 5/23 選挙運動の規制は官憲支配の道 | トップページ | 5/25 国民合意の必要なことばかり選挙のネタにされる »